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#212 「PDCA」は万能ではない(むしろ今は…)

先日PDCAについて「えっそうなんだ!」と思う機会がありました。そこから日本でこれだけ普及しているPDCA、実は今の時代に向いていないのかも、と思ったのでメモ。


1、「PDCAって何?」

外資系に勤めているので、たまーに経営陣(日本に住み始めて数年ぐらいの方ばかり)に説明などする機会があるのですが、先日、「PDCAって何?」と質問され、ちょっと驚きました。

勝手にアメリカが本家だ、と思っていたので…

そこで、PDCAサイクルについて調べると、

Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の頭文字を取ったもので、1950年代、品質管理の父といわれるW・エドワーズ・デミングが提唱したフレームワークです。

と、出てきます。

ただ、よく調べると、1950年にデミングさんが日本に紹介したプロセスは、①設計、②製造、③販売、④調査・サービスというものでした。

日本でデミングさんが講演した際の発言を以下引用します。

(設計、製造、販売、調査・サービスという)「車輪の四つの段階はつぎつぎと連なって初めもなく終わりもないということが、最も大切なことであります。これが私が円をえがいた理由です。製品の設計とか、その試験を中止してはなりません。あなた方は、あなた方の製品が実際に市場に出て、それが人々にどういう風に役立ち、また購買者はその製品について、どう思っているかということを究明した後、再設計をします。品質管理は、永久に終りがありません。」

1950年当時は、作ったら検品して、合格したものを出荷(販売)する、というところまでで完結していました。いかに歩留まりを上げるか、はあったかもしれませんがそのレベルです。

デミングさんはそこに、販売後の調査・サービスを入れ、そこで把握した問題を設計にフィードバックする、というサイクルを提唱したのです。当時としては画期的だったことが分かります。

画期的、ではありましたが、今日本に定着しているPDCAとは全く異なるものだったのです。

つまりPDCAは日本オリジナルのもなのです。

欧米出身の経営陣が「PDCAって何?」と質問したのは当然だったのです。


2、PDCAが向いているもの、向いていないもの

PDCAは、工場での製造工程のように、プロセスが明確で、前提条件の変化が少ないものに向いています。

もちろん、工場だけでなく、例えば、顧客からの書類を受付、処理していく、というような事務作業や、営業でも顧客面談から、提案、契約といった工程や手順がはっきり定まっているものには向いていると言えるでしょう。

逆に言えば、プロセスが明確でないものや、前提条件が常に変化するようなものに対しては向いていません。

ところが、今日本での使われ方をみると、何でもかんでも「PDCA」です。

昨年8月の日経新聞でも以下のように紹介されています。

「PDCAを徹底して業績目標を必ず達成する」。最近の企業の四半期決算発表で経営者の口からこんな言葉を何度か聞いた。

また、以下のように省庁でも広く使われています。


一方で、PDCAって言うけど、計画作っておしまいだなぁ、たまに報告求められてなんか数字出すけど…というケースも多くなっているのが現状です。

その多くは、PDCAが向いていない業務で起こっていることです

しかも、状況の変化が激しくなっていて、「Plan」を作って、「Do」に移行するときにはもう前提が変わっている、というようなことも珍しくありません。
(特にPlanに時間をかけるのが日本の特徴であることもありますが…)

それでもPDCAをやり続ける…

先程ご紹介した日経新聞の記事、以下のように続いています。

日本では90年代までの成功体験もあり、「PDCAを徹底する会社=良い会社」の図式で考える企業が今なお多い。

つまり、今、日本で行われているPDCAは、「PDCAというツールそのものが有効であるかどか」という根本的な部分についてのPDCAがなされていないのです。


3、まとめ

いかがでしたでしょうか?

PDCAって日本だけのものなんだぁ、という気付きから、改めて、PDCAって向き不向きがある、ということ、そして、本来不向きなものにPDCAを使い続けていることの弊害が出ているのではないか?という気付きに至りました。

確かにPDCAはその対象を継続的に改善していくには有効な手法だと思います。
一方で、改善の対象そのものを変えるような仕組みは内包されていません

VUCAの時代。急に市場の定義が変わったり、一夜にして競争環境が変わることが起こります。

そういう時にもPDCAは与えられた対象の改善をし続けるのです。もうそこを5%改善しても全く勝負にならない環境なのに、です。

そこは、経営レベルの決断が必要な領域でしょう。

それにも関わらず、決算で経営陣が「PDCAを徹底して業績目標を必ず達成する」というのでは、業績目標の達成は難しいかもしれません。


最後までお読み頂きありがとうございました。

何か参考になるところがあれば嬉しいです。

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