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#259 「全員がリーダー」「全員が執行役」の成立要件を考える。

昨日、サイボウズが立候補した17人の社員全員を執行役としたことのニュースを取り上げました。「全員がリーダー」を標榜するアマゾンと合わせて、思ったことをメモ。


1、「全員がリーダー」「全員が執行役」って?

そもそも、昨日の投稿(以下)で触れた、「全員がリーダー/執行役」というのはどういう状態なのでしょうか?

大東亜戦争時の日本軍の組織を分析した「失敗の本質」でも「空気の支配」によって合理的な判断ができなくなる当時の日本軍の意思決定について触れられています。

そんな大きな例を出さなくとも、「全員が」といった途端に「赤信号、みんなで渡れば」的な、自分で判断せず、場の空気で決まり、後で問題が起こると、誰も責任を取らない。というか、誰も自分のせいだとは思わない、そういったリスクが「全員がリーダー/執行役」という状態にはあるように思います。

成功したら「私のおかげ」、失敗したら「みんなのせい」、という訳です。

企業としてはかなり危険な気がします(書いていて思いましたが、今そうだ、という組織もあるような気もしますが…)。

それを両社(アマゾンとサイボウズ)はどうクリアしようとしているのでしょうか?


2、両社のメッセージから「全員リーダー/執行役」の成立要件を探る。

ポイントは、それぞれの企業のメッセージにありました。

まず、アマゾンの「全員がリーダー」のメッセージから。

Have Backbone; Disagree and Commit
リーダーは同意できない場合には、敬意をもって異議を唱えなければなりません。たとえそうすることが面倒で労力を要することであっても、例外はありません。リーダーは、信念を持ち、容易にあきらめません。安易に妥協して馴れ合うことはしません。しかし、いざ決定がなされたら、全面的にコミットして取り組みます。


次に、サイボウズの株主総会資料から。

当社は役職員の「誰もが取締役の役割を担う」と考えております。(中略)
一人ひとり自立心を持って質問責任を果たし、意思決定者がオープンな場で説明責任を果たす。(中略)
「取締役」の地位にあって、上記の意思決定及びガバナンスが機能しているかを見守る「理想の番人」としての役割に徹する、強い心が求められます。


いかがでしょう?

厳しい言葉が並んでいるのがわかります。

共通点として以下の3つに括ってみました。

<空気に流されず異論を述べる>
☑️ 同意できない場合は異議を唱えなければならない
☑️ 自立心を持って質問責任を果たす

<妥協せず主張をし続ける>
☑️ 信念を持ち容易に諦めない
☑️ 強い心が求められる

<仲が良いからといってなぁなぁにしない>
☑️ 安易に妥協して馴れ合うことはしない

☑️「理想の番人」としての役割に徹する

「全員がリーダー」「全員が取締役」が本当の意味で成り立つためには、こういった「厳しさ」が必須の成立要件なのでしょう。


3、まとめ(所感)

いかがでしたでしょうか?

「全員がリーダー」「全員が取締役」

やりようによっては責任が曖昧になる危険は高いものです。
(取締役は、会社法上は株主から監視される立場なのでちょっと違うかもしれませんが…)

特に、うまくいっているときはいいですが、厳しい環境になった途端に責任回避責任転嫁当事者意識の欠如など、さまざまな問題が噴き出しそうです。

そのためには、以下のような、「厳しさ」が必要なのです。

☑️ 空気に流されず異論を述べる
☑️ 
妥協せず主張をし続ける
☑️ 
仲が良いからといってなぁなぁにしない

これを、「全員に」意識させる、というのはかなり難しいことのように思います。でも、両社はその仕組みを作れた、という自信があるのでしょう。

ビジネスモデルの強さ、というのもあるでしょうが、こうした「心理的安全性」と「厳しさ」を両立させる組織がある、ということ自体が、VUCAの時代では競争力の源泉に思えます。

なぜなら、ビジネスモデルは真似することも可能かもしれません。でも、そういったものを生み出していく組織文化は、すぐには真似できないものだからです。

「全員リーダー/取締役」の成立要件は、実は企業の強さそのもの、と言えるものでした。


最後までお読みいただきありがとうございました。

なにか参考になるところがあれば嬉しいです。

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