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わたしの句

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趣味の句作(俳句・短歌)をまとめました
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#秋

飼い猫の小鈴ひびくや日短か

飼い猫の小鈴ひびくや日短か

猫を飼うようになったのは3年前、2016年の秋。夜の道路に突然飛び出してきて、車のライトに驚いたのか、道の真ん中にすくんでしまったのを、慌てて拾い上げたのがきっかけです。最初はもらい手を探すつもりだったのですが。

当初からあまり鳴かない、甘えない猫でした。娘の洋服掛けの下に置いてある穴あきのキティちゃん座布団の上が定位置で、お腹が空くとすーっと出てきて、食べ終わるとまたすーっと戻って寝てしまう…

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「去りし空いつまでも見ゆ秋燕」

「去りし空いつまでも見ゆ秋燕」

「去りし空いつまでも見ゆ秋燕」

子供が県外の短大に進学することが決まりました。ようやく手を離れる安堵と、ほんとに一人で大丈夫かいな…という心配と。

私はとにかく窮屈な家を出たい一心で、一人暮らしなんてウキウキでしたが、一人っ子の娘は期待と不安が行ったり来たり。まぁ黙って見守るのみですね。

「秋燕」は「燕帰る」の傍題で、空虚な巣の寂しさを表すのだとか。「秋燕」は燕に焦点が移るため、ただ寂

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こんなところにも草の芽秋暑し

こんなところにも草の芽秋暑し

近所に、地元の中国系奥様方がやっている、小さなB&Bがある。わかりにくいのかこの宿目当ての外国人旅行客が、しばしば道を聞きに来る。

こんな日本の端っこの街に、なんの用事で来るのかな、と思うのだが、屋久島へ行く通り道にしている人が多いようだ。

今日の午後、場所を教えた背の高いオーストラリア人の男性は、律儀に夜、うちの店に食事に来た。ラグビーのワールドカップのついでに来たのかな、と聞いてみたら、い

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話すことは山ほどあるはず落ち葉散る

話すことは山ほどあるはず落ち葉散る

時々見ている松山市が運営するサイト「俳句ポスト365」。現在募集中の兼題は“落ち葉”。

落ち葉と聞けば、大滝さんの「木の葉のスケッチ」と言う曲が思い浮かび、今回の句はそこからの本歌取り(と、言っていいのか^^;)。

ラッシュの駅のホームで、別れた恋人と再会する偶然の一瞬をさらりと歌ったこの曲は、クラリネットが印象的な大人のムード。ありありと映像が浮かぶ松本さんの言葉遣いは、やはり非凡だなぁ。

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幸福の密度増す焼きりんごの香

幸福の密度増す焼きりんごの香

加熱して断然美味しいと想うのは、りんごです。かなり昔、どこかのヨーグルト会社が、焼きりんご味のヨーグルトを初めて出したとき、本当に感激してしばらくそればっかり食べてたなぁ。アップルパイやタルトタタンは、熱々にバニラアイスクリーム。ベタだけど、最高。

さらに思い出すのは学生時代。たしか友達の陽子ちゃんからおしえてもらった、「ウィリアムテル」。りんごが丸ごと1こ入ったリンゴパイ。見た目かなりボリュー

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あとはご飯作るだけの日常が今日も暮れ

あとはご飯作るだけの日常が今日も暮れ

6時に起き、娘のお弁当を作るところから始まって、洗濯、掃除、お店の営業準備、片付け、買い出し、皿洗い…あとは晩ご飯作って1日の終わり。

代わり映えのない1日に辟易して、虚しい気持ちでこの句を思うこともあれば、
「ああ、1日無事に終わった、良かった良かった、がんばった」と充実した気持ちでこの句を想うこともある。

その日その日の過ごし方って、大事よね。

時々、スマホの青空文庫で種田山頭火の日記を

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米のみにあらずや芋の新酒かな

米のみにあらずや芋の新酒かな

鹿児島で酒といえば、九分九厘「焼酎」。11月が近づくと、県内のいろんな蔵元さんの新酒祭り情報を目にします。

実は鹿児島に来た当初、焼酎はあまり好きではありませんでした。しかし行きつけの酒屋さんで、マリオネットという焼酎を紹介され飲んでみたところ、樫樽で仕込んだ、焼酎というよりウイスキーのような芳醇な香りにびっくり。そこから木樽仕込みの焼酎をいろいろ試すうち、自然と普通の焼酎も好きになっていました

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あの時のレモンは未だあざやかに

あの時のレモンは未だあざやかに

2013年の11月。箱いっぱいのレモンが届いた。お礼だった。いま思い出しても、レモンの色彩はあざやかによみがえる。たとえ目の前にレモンそのものがなくても。

深夜のNHK。AIで蘇る美空ひばりを見た。見終わって、無性に大滝さんの曲が聴きたくなった。何曲か大滝さんの声を聞いたあとに思ったのは、思い出はもっと違った形で残すべきだ、ということだ。

AIの技術自体は否定しない。たった1回の“奇跡”という

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首伸ばし爪先立ちしの揚花火

首伸ばし爪先立ちしの揚花火

先週末は、温泉の恵みに感謝する温泉祭りでした。ステージイベントのゲストが、今人気のりんごちゃんだったため、4万人人口のこの街に2万人の人出があったとか。りんごちゃん、すげぇ。

一応うちは、洋食(フレンチ)のお店なんですが、お弁当類の伸びがここ2、3年著しい。新築祝いや法事など、集まりがあるとお弁当を取るという習慣は、鹿児島ならではなんでしょうか(私の出身地愛媛では、あんまりなかったなぁ)。数年前

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案山子さえ半袖のまま秋暑し

案山子さえ半袖のまま秋暑し

鹿児島の稲刈りは、場所にもよりますが早い。お盆が過ぎたらもう収穫です。

鹿児島に帰ってきてすぐ、3年ほど米作りに挑戦したことがあります。お店で使う(私たちは夫婦で小さなレストランをやっているのです)お米を自分たちで作ってみよう、と。もともと夫の実家が農家で、夫以外の家族は農業に従事していたので、田んぼはあると。もう使ってないけど。

長年放置されていた田んぼの草を刈り、耕運機をかけ、沢から水を引

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人生の夢まだ知らず青蜜柑

人生の夢まだ知らず青蜜柑

娘、高三。今日、クラスメートの一人が就職試験に落ちたとしょんぼりして帰ってきました。ひとクラス20人弱の小さな地方の高校ですが、クラス内の仲がとても良いらしく、みんな自分のことのように悲しんだとか。

うーむ、先はまだまだ長い!くじけず頑張って欲しいなぁ。
#俳句 #エッセイ #暮らし #写真 #秋 #青みかん #就活 #高校生

誰の訪れ告げるや野分が揺らすドアベル

誰の訪れ告げるや野分が揺らすドアベル

昨日の台風。雨はさほど降らない風台風でした。扉につけたドアベルが、強い風が吹くたびにチリンチリンと、かすかに鳴ります。その度に誰か来たかとはっとするのですが、「ああ、風だったか」と座りなおす。そんなことを繰り返した1日でした。
#俳句 #エッセイ #暮らし #写真 #秋 #台風 #ドアベル