記事一覧
朗読とワークショップでめぐるチェコ・中国・タンザニア2日間の旅ー『翻訳文学紀行』Ⅳ&Ⅴ刊行記念イベント 1/27, 28@滴塾/いしばしコモンズ(大阪)
『翻訳文学紀行Ⅳ』と『翻訳文学紀行Ⅴ』の刊行を記念して、来る2024年1月27日(土)、28日(日)に、大阪池田市のコミュニティスペース「滴塾/いしばしコモンズ」にて、朗読イベントを開催します。
朗読される作品は、Ⅳ掲載のチェコ語文学「浴室、身体、そしてエレガンス」、Ⅴ掲載のチェコ語文学「ベター・ライフ」(27日)、Ⅴ掲載のスワヒリ語文学「バレンズィ」、中国語文学「文天祥詩選」(28日)。いず
『翻訳文学紀行Ⅴ』刊行!(9/10)コンテンツおよび販売情報など
来る2023年9月10日に大阪OMMビルにて開催される文学フリマ大阪にて、『翻訳文学紀行Ⅴ』が刊行されます。今回は、タンザニア、中国、イタリア、ポーランド、チェコからえりすぐりの作品が寄せられました。当日お時間のおありの方は、ぜひお立ち寄りくださいませ。
表紙・目次
表紙は引き続き有園菜希子によるデザイン。今年のテーマカラーは黒。持ち味の幻想的な雰囲気を活かしつつ、黒い馬と石畳をモチーフに
【プラハのドイツ語文学 読書ノート】マックス・ブロート『実験』
マックス・ブロート『実験』
フランツ・カフカが好きな人ならば、マックス・ブロートの名は一度は聞いたことがあるだろう。カフカの親友だった彼は、肺病を患っていたカフカから手書き原稿を預かっていた。カフカの死後、ボヘミアがナチスによって占領されると、ブロートはカフカの原稿を携えてイスラエルへ亡命し、「原稿は死後焼却処分するように」というカフカの遺言にもかかわらず、カフカの遺稿を次々に刊行してゆく。
【書評】ミレナからイェセンスカーに[半田幸子『戦間期チェコのモード記者ミレナ・イェセンスカーの仕事 〈個〉が衣装を作る』]
『翻訳文学紀行Ⅳ』でミレナ・イェセンスカーの「浴室、身体、そしてエレガンス」他二編を翻訳された、イェセンスカー研究者の半田幸子さんが、この3月に、これまでの研究をまとめた『戦間期チェコのモード記者ミレナ・イェセンスカーの仕事 〈個〉が衣装を作る(以下『イェセンスカーの仕事』)』を発表されました。
ミレナ・イェセンスカーといえば、日本では(というか世界中で)『変身』等の作品で知られるプラハ出身の
【プラハのドイツ語文学 読書ノート】ヘルマン・ウンガー『切断された者たち』
ヘルマン・ウンガーHermann Unger『切断された者たち』
前回の投稿からしばらく時間がたってしまったが、今回も続いてヘルマン・ウンガーの中編小説『切断された者たち』を紹介しようと思う。ウンガーの経歴については前回の記事を参照されたい。
『切断された者たちDie Verstümmelten』(1922) あらすじ
フランツ・ポルツァーは、20歳で銀行員になってから決まった時間に家と
【プラハのドイツ語文学 読書ノート】ヘルマン・ウンガー『少年と殺人犯』
ヘルマン・ウンガー『少年と殺人犯』
今回紹介するヘルマン・ウンガーは、オスカー・バウムと同じくクオリティが高く、日本に紹介されてしかるべき作品だ。カフカやブロートが参加していたプラハ・サークルという文芸集団とも関係があった、モラヴィア出身のドイツ語作家である。『少年と殺人犯』はふたつの短編小説からなる短篇集だが、いずれの作品でも、やや異常な人物の内面が一人称の視点で語られっている。読者を強くひ
【プラハのB級ドイツ語文学 読書ノート】ブルーノ・ブレーム『笑う神』
ブルーノ・ブレーム『笑う神』
今回紹介するブルーノ・ブレーム Bruno Brehm『笑う神 Der lachende Gott』は、ハプスブルク帝国時代のボヘミアの田舎町で起こった一週間の騒動を描いた長編小説である。タイトルとなっている「笑う神」とは、ギリシア神話に登場するプリアーポスの像を指しており、物語はこの像をめぐって展開してゆく。デュオニッソス(一説にはゼウス)とアフロディーテの息子
【プラハのB級ドイツ語文学 読書ノート】アロイス・フィーツ『死せる大地 あるドイツ人村の交差点』
アロイス・フィーツ『死せる大地 あるドイツ人村の交差点』
今回紹介するアロイス・フィーツ Alois Fietzの『死せる大地 あるドイツ人村の交差点Tote Scholle Eines deutschen Dorfes Kreuzweg』は、いわゆる「郷土小説 Heimatroman」に分類されるタイプの小説だ。「郷土小説」とは主に田舎を舞台にした小説で、都市や工業化に対して田舎を理想化し、
【プラハのドイツ語文学 読書ノート】オスカー・バウム『三人の女とわたし』
オスカー・バウムの『三人の女とわたし』
今回紹介するオスカー・バウムOskar Baum (1883-1941) の『三人の女とわたし Drei Frauen und ich』(1928) は、これまで紹介してきた「B級作品」とは一線を画する。民族対立を二項対立的に表現するプロパガンダじみた作品とは違い、ひとりの芸術家の成長と苦悩を比較掘り下げた、非常に内省的で味わい深い作品だ。バウムはカフカ
【プラハのB級ドイツ語文学 読書ノート】エルヴィン・ハイネ『ヴラスタと彼女の男子学生』
エルヴィン・ハイネの『ヴラスタと彼女の男子学生』
今回紹介するのはエルヴィン・ハイネErwin Heine(1899-1948)の『ヴラスタと彼女の男子学生 Vlasta und ihr Student』(1924)。エルヴィン・ハイネも、日本では(というか現在のドイツでもチェコでも)ほとんど知られていない作家なので、まずは例によって作家の経歴を紹介する。
作者エルヴィン・ハイネErwin
【プラハのドイツ語B級文学 読書ノート】ハンス・ヴァツリク『おぉボヘミア!』
ハンス・ヴァツリク『おぉボヘミア!』
今回紹介するのはハンス・ヴァツリクHans Watzlik (1879-1948)の『おぉボヘミア O Böhmen』(1917)。まずは日本ではほぼ知られていない作家ハンス・ヴァツリークについて簡単に紹介する。
ハンス・ヴァツリク
ヴァツリクは1879年にシュマヴァの森(ボヘミアの森)南東部にあるドルニー・ドヴォジシュチェDolní Dvořist
【プラハのドイツ語B級文学 読書ノート】ユリウス・クラウス『プラハ 民族対立と人間闘争の小説』
ユリウス・クラウス『プラハ 民族対立と人間闘争の小説』 今回紹介するのは、前回、前々回に紹介したシュトローブルよりさらにマイナーな作家ユリウス・クラウスJulius Kraus (1870-1917)の『プラハ 民族対立と人間闘争の小説』(以下『プラハ』)だ(シュトローブルについては以下を参照)。
作者ユリウス・クラウスについては非常に情報が乏しい。1892年に北ボヘミアのリベレツLibere
【終了】『翻訳文学紀行Ⅳ』刊行記念企画① 朗読ワークショップ&トークイベント「二人のロノ」(@おもちゃひろば~Toys' Campus~)
翻訳文学アンソロジー『翻訳文学紀行Ⅳ』の刊行を記念して、ジャン・シャルロ著のハワイ語文学「二人のロノ」の朗読ワークショップ&トークイベントを開催いたします。
本イベントは二部制です。
第一部は、参加者全員で戯曲「二人のロノ」をセリフごとに声に出して回し読みするワークショップです。
朗読初心者の方でも気兼ねなくご参加いただけます。見るだけのご参加も大歓迎です。ふりがなをつけたテキストをご用
【プラハのドイツ語B級文学 読書メモ②】カール・ハンス・シュトローブル『ヴァーツラフ亭』
前回に引き続き、プラハのドイツ語作家カール・ハンス・シュトローブルの小説のあらすじを紹介する。「シュトローブルとは?」という方は以下の記事を参照されたい。
今回扱うのは1902年、シュトローブル25歳の時に発表された小説だ。どうやらこの小説は、シュトローブルの学生時代の経験に基づく自伝的な作品らしい。わたしが目を通した文献は初版発行から14年後(1918年)再版されたものがさらに版を重ねたも