ことばのたび社 ことたび

外国語×物語から生まれるちいさな贅沢をあなたに。 (翻訳文学同人雑誌「翻訳文学紀行」編…

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外国語×物語から生まれるちいさな贅沢をあなたに。 (翻訳文学同人雑誌「翻訳文学紀行」編集/演劇ユニット「移動祝祭日」作家/その他ドイツ語・チェコ語の翻訳・語学講師も。 お問い合わせはkotobanotabisha@gmail.comまで!

マガジン

  • 【翻訳】エゴン・エルヴィン・キッシュ『中国 秘められた国』

    20世紀を代表するジャーナリスト、エゴン・エルヴィン・キッシュによるルポルタージュ集『中国 秘められた国』に収録された作品を、翻訳・紹介していきます。

  • 「翻訳文学紀行」編集長の感想文

    「翻訳文学紀行」編集長による『翻訳文学紀行』掲載作品に関する感想文です。

最近の記事

『ぼくがエイリアンだったころ』訳者あとがき(二宮 大輔)

 イタリアのポストモダン作家トンマーゾ・ピンチョの『ぼくがエイリアンだったころ』刊行にあたって、同書末尾に収録されている二宮大輔氏の「訳者あとがき」を公開します。作品の読みどころはもちろん、作中で重要な役割を果たすニルヴァーナのカート・コバーンや、日本ではまだほとんど知られていないトンマーゾ・ピンチョという作家についてよく分かるテクストとなっています。どんな作品なのか気になっておられる方は、ぜひこちらをご一読くださいませ。 訳者あとがき  この作品はTommaso Pin

    • 『ぼくがエイリアンだったころ』情報公開&予約受付開始

      ことばのたび社初の商業出版『ぼくがエイリアンだったころ』(トンマーゾ・ピンチョ 著/二宮大輔 訳)に関する情報が公開されました。詳細はこちらをご覧ください。 『ぼくがエイリアンだったころ』は9月8日(日)刊行予定で、9月16日(月)ごろ、本書を事前にご予約くださった書店の店頭に並ぶ予定です。 なお、刊行予定日である9月8日には、大阪OMMビルで開催される文学フリマ大阪12にて本書を先行販売いたします。ご都合のつく方はぜひ足をお運びください。 文学フリマ大阪12に足を運ぶ

      • 朗読とワークショップでめぐるチェコ・中国・タンザニア2日間の旅ー『翻訳文学紀行』Ⅳ&Ⅴ刊行記念イベント 1/27, 28@滴塾/いしばしコモンズ(大阪)

         『翻訳文学紀行Ⅳ』と『翻訳文学紀行Ⅴ』の刊行を記念して、来る2024年1月27日(土)、28日(日)に、大阪池田市のコミュニティスペース「滴塾/いしばしコモンズ」にて、朗読イベントを開催します。  朗読される作品は、Ⅳ掲載のチェコ語文学「浴室、身体、そしてエレガンス」、Ⅴ掲載のチェコ語文学「ベター・ライフ」(27日)、Ⅴ掲載のスワヒリ語文学「バレンズィ」、中国語文学「文天祥詩選」(28日)。いずれも朗読者による朗読をお楽しみいただいた後、翻訳に関するトークや作品に親しむワー

        • 『翻訳文学紀行Ⅴ』刊行!(9/10)コンテンツおよび販売情報など

           来る2023年9月10日に大阪OMMビルにて開催される文学フリマ大阪にて、『翻訳文学紀行Ⅴ』が刊行されます。今回は、タンザニア、中国、イタリア、ポーランド、チェコからえりすぐりの作品が寄せられました。当日お時間のおありの方は、ぜひお立ち寄りくださいませ。 表紙・目次  表紙は引き続き有園菜希子によるデザイン。今年のテーマカラーは黒。持ち味の幻想的な雰囲気を活かしつつ、黒い馬と石畳をモチーフにしたシックなデザインとなっています。  イラストレーター有園菜希子の仕事につい

        『ぼくがエイリアンだったころ』訳者あとがき(二宮 大輔)

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        • 【翻訳】エゴン・エルヴィン・キッシュ『中国 秘められた国』
          2本
        • 「翻訳文学紀行」編集長の感想文
          2本

        記事

          【プラハのドイツ語文学 読書ノート】マックス・ブロート『実験』

          マックス・ブロート『実験』  フランツ・カフカが好きな人ならば、マックス・ブロートの名は一度は聞いたことがあるだろう。カフカの親友だった彼は、肺病を患っていたカフカから手書き原稿を預かっていた。カフカの死後、ボヘミアがナチスによって占領されると、ブロートはカフカの原稿を携えてイスラエルへ亡命し、「原稿は死後焼却処分するように」というカフカの遺言にもかかわらず、カフカの遺稿を次々に刊行してゆく。  以上のような話は、熱心なカフカ文学の読者の間では広く知られている。しかしブロー

          【プラハのドイツ語文学 読書ノート】マックス・ブロート『実験』

          【書評】ミレナからイェセンスカーに[半田幸子『戦間期チェコのモード記者ミレナ・イェセンスカーの仕事 〈個〉が衣装を作る』]

          『翻訳文学紀行Ⅳ』でミレナ・イェセンスカーの「浴室、身体、そしてエレガンス」他二編を翻訳された、イェセンスカー研究者の半田幸子さんが、この3月に、これまでの研究をまとめた『戦間期チェコのモード記者ミレナ・イェセンスカーの仕事 〈個〉が衣装を作る(以下『イェセンスカーの仕事』)』を発表されました。  ミレナ・イェセンスカーといえば、日本では(というか世界中で)『変身』等の作品で知られるプラハ出身のドイツ語作家フランツ・カフカの恋人の一人として知られています。あるいは、もう少し

          【書評】ミレナからイェセンスカーに[半田幸子『戦間期チェコのモード記者ミレナ・イェセンスカーの仕事 〈個〉が衣装を作る』]

          【プラハのドイツ語文学 読書ノート】ヘルマン・ウンガー『切断された者たち』

          ヘルマン・ウンガーHermann Unger『切断された者たち』  前回の投稿からしばらく時間がたってしまったが、今回も続いてヘルマン・ウンガーの中編小説『切断された者たち』を紹介しようと思う。ウンガーの経歴については前回の記事を参照されたい。 『切断された者たちDie Verstümmelten』(1922) あらすじ  フランツ・ポルツァーは、20歳で銀行員になってから決まった時間に家と職場を往復するだけの単調な生活を送っていた。  彼は幼くして母を亡くし、商人の父

          【プラハのドイツ語文学 読書ノート】ヘルマン・ウンガー『切断された者たち』

          【プラハのドイツ語文学 読書ノート】ヘルマン・ウンガー『少年と殺人犯』

          ヘルマン・ウンガー『少年と殺人犯』  今回紹介するヘルマン・ウンガーは、オスカー・バウムと同じくクオリティが高く、日本に紹介されてしかるべき作品だ。カフカやブロートが参加していたプラハ・サークルという文芸集団とも関係があった、モラヴィア出身のドイツ語作家である。『少年と殺人犯』はふたつの短編小説からなる短篇集だが、いずれの作品でも、やや異常な人物の内面が一人称の視点で語られっている。読者を強くひきつける生々しい心理描写が魅力的で、かのトーマス・マンにも高く評価されていたよう

          【プラハのドイツ語文学 読書ノート】ヘルマン・ウンガー『少年と殺人犯』

          【プラハのB級ドイツ語文学 読書ノート】ブルーノ・ブレーム『笑う神』

          ブルーノ・ブレーム『笑う神』  今回紹介するブルーノ・ブレーム Bruno Brehm『笑う神 Der lachende Gott』は、ハプスブルク帝国時代のボヘミアの田舎町で起こった一週間の騒動を描いた長編小説である。タイトルとなっている「笑う神」とは、ギリシア神話に登場するプリアーポスの像を指しており、物語はこの像をめぐって展開してゆく。デュオニッソス(一説にはゼウス)とアフロディーテの息子として生まれたプリアーポス、実はとんでもない外見をしている。 そう、ペニスが異

          【プラハのB級ドイツ語文学 読書ノート】ブルーノ・ブレーム『笑う神』

          【プラハのB級ドイツ語文学 読書ノート】アロイス・フィーツ『死せる大地 あるドイツ人村の交差点』

          アロイス・フィーツ『死せる大地 あるドイツ人村の交差点』  今回紹介するアロイス・フィーツ Alois Fietzの『死せる大地 あるドイツ人村の交差点Tote Scholle Eines deutschen Dorfes Kreuzweg』は、いわゆる「郷土小説 Heimatroman」に分類されるタイプの小説だ。「郷土小説」とは主に田舎を舞台にした小説で、都市や工業化に対して田舎を理想化し、土地と人々(民族、血統)の有機的な結びつきを強調する傾向にある。1930年代には

          【プラハのB級ドイツ語文学 読書ノート】アロイス・フィーツ『死せる大地 あるドイツ人村の交差点』

          【プラハのドイツ語文学 読書ノート】オスカー・バウム『三人の女とわたし』

          オスカー・バウムの『三人の女とわたし』  今回紹介するオスカー・バウムOskar Baum (1883-1941) の『三人の女とわたし Drei Frauen und ich』(1928) は、これまで紹介してきた「B級作品」とは一線を画する。民族対立を二項対立的に表現するプロパガンダじみた作品とは違い、ひとりの芸術家の成長と苦悩を比較掘り下げた、非常に内省的で味わい深い作品だ。バウムはカフカやブロートが属していた「プラハサークル Prager Kreise」のメンバーで

          【プラハのドイツ語文学 読書ノート】オスカー・バウム『三人の女とわたし』

          【プラハのB級ドイツ語文学 読書ノート】エルヴィン・ハイネ『ヴラスタと彼女の男子学生』

          エルヴィン・ハイネの『ヴラスタと彼女の男子学生』  今回紹介するのはエルヴィン・ハイネErwin Heine(1899-1948)の『ヴラスタと彼女の男子学生 Vlasta und ihr Student』(1924)。エルヴィン・ハイネも、日本では(というか現在のドイツでもチェコでも)ほとんど知られていない作家なので、まずは例によって作家の経歴を紹介する。 作者エルヴィン・ハイネErwin Heineについて  エルヴィン・ハイネは、現在のチェコ共和国にあるイフラヴァ

          【プラハのB級ドイツ語文学 読書ノート】エルヴィン・ハイネ『ヴラスタと彼女の男子学生』

          【プラハのドイツ語B級文学 読書ノート】ハンス・ヴァツリク『おぉボヘミア!』

          ハンス・ヴァツリク『おぉボヘミア!』  今回紹介するのはハンス・ヴァツリクHans Watzlik (1879-1948)の『おぉボヘミア O Böhmen』(1917)。まずは日本ではほぼ知られていない作家ハンス・ヴァツリークについて簡単に紹介する。 ハンス・ヴァツリク  ヴァツリクは1879年にシュマヴァの森(ボヘミアの森)南東部にあるドルニー・ドヴォジシュチェDolní Dvořistěに生まれる。チェスケー・ブヂェヨヴィツェČeské Budějoviceとプラ

          【プラハのドイツ語B級文学 読書ノート】ハンス・ヴァツリク『おぉボヘミア!』

          【終了!】『翻訳文学紀行Ⅳ』刊行記念企画③ 朗読イベント「僕の妻の小説」(@滴塾)

           翻訳文学アンソロジー『翻訳文学紀行Ⅳ』の刊行を記念して、アカ・モルチラゼ著のジョージア語文学「僕の妻の小説」の朗読イベントを開催いたします。  本イベントでは、「僕の妻の小説」の物語の一部を、竹國佑麻さんによる朗読を通してお楽しみいただけます。  続いて、同作品の翻訳を手掛けた児島康宏さんに、作者アカ・モルチラゼや、日本ではまだまだ十分に知られていないジョージアという地域についてお話を伺い、より深く作品を味わおうと思います。  対面でもオンライン(後日動画配信)でもお楽し

          【終了!】『翻訳文学紀行Ⅳ』刊行記念企画③ 朗読イベント「僕の妻の小説」(@滴塾)

          【終了!】『翻訳文学紀行Ⅳ』刊行記念企画② 朗読イベント「南遊印象記」(@滴塾)

           翻訳文学アンソロジー『翻訳文学紀行Ⅳ』の刊行を記念して、張我軍 著の台湾華語文学「南遊印象記」の朗読イベントを開催いたします。  本イベントでは、「南遊印象記」の物語の一部を、ヒトミ☆クバーナさんによる朗読を通してお楽しみいただけます。  続いて、同作品の翻訳を手掛けた余玟欣(ユウ・ウェンシン)さんに、作者 張我軍や作中で描かれている街についてお話を伺いながら、日本統治下の台湾が実際にどんなものだったのか、理解を深めていこうと思います。  対面でもオンライン(後日動画配信

          【終了!】『翻訳文学紀行Ⅳ』刊行記念企画② 朗読イベント「南遊印象記」(@滴塾)

          【プラハのドイツ語B級文学 読書ノート】ユリウス・クラウス『プラハ 民族対立と人間闘争の小説』

          ユリウス・クラウス『プラハ 民族対立と人間闘争の小説』 今回紹介するのは、前回、前々回に紹介したシュトローブルよりさらにマイナーな作家ユリウス・クラウスJulius Kraus (1870-1917)の『プラハ 民族対立と人間闘争の小説』(以下『プラハ』)だ(シュトローブルについては以下を参照)。  作者ユリウス・クラウスについては非常に情報が乏しい。1892年に北ボヘミアのリベレツLiberec にあるフリードラントFrýdlant に市立博物館を開き、市長を務めた人物の

          【プラハのドイツ語B級文学 読書ノート】ユリウス・クラウス『プラハ 民族対立と人間闘争の小説』