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言葉のテリーヌ

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色とりどりの言葉を僕の好みで集めてみました。
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2020年9月の記事一覧

青春とわたしの舞台裏

青春とわたしの舞台裏

「これは盛ってるわー」

そう思うことが、人生には幾度となくある。

テレビも、YouTubeも、隣の席のあの人の話も、きっと現実よりはいくらか色を付けてわたしのもとにやってくるのだろうなぁと。

かくいうわたしが書くエッセイなんかも、もう9割がた盛ってるのでは?と我ながら思うことがある。いつの間にか脚色が真実だと思っている、なんてことも。

だけどそれは別に悪いことではなくて、常に感受性を全開に

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夜明け

夜明け

白み始める空を一人睨みながら、それでもその色と光に焦がれている。

翼が濡れている。このままじゃ飛べない。諦めに支配されながら、それでも飛び立てる日を夢見ている。雛鳥ほどか弱くもないくせに、できない理由を見つけることだけは誰よりもうまかった。

夜鷹は醜いと疎外された。誰も夜鷹を救わなかった。そんな世界の無慈悲さに憤りながらも、私もその世界の一部であることに気付いていた。

救えなかった数を数える

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この景色が消えないように

この景色が消えないように

二十数年も同じ街で暮らしていると、あちらこちらが変わってゆく。

映画館やジムが入ったショッピングセンター、駅前のロータリー、ガラス張りのバスターミナル。こどもの頃には無かった小綺麗な施設に、街の景色はいつの間にか上書きされている。この街には似合わないと思っていたショッピングセンターは今やなくてはならないものになって、ここでなければどこで買い物をしていたのか、もう思い出すことができない。生まれたと

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老いるということ

実家の母が首の骨を折ったと言う。

てっきり入院したかと思ったら骨折というのは自然と骨がくっつくまでじっとしているしか方法がないということで家で過している。

妹たちがいるのでそれほど心配はないものの妹たちは日中働いているため母は少し動くのだと思う。

せめて休日は側にいて動かない様にしてあげたいと実家に行った。
妹たちが用事で外出した後は年老いた両親が各々の部屋で過しているのだが80代になるとT

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