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オレンジに溺れたふたり【第1章 第1話 再会】

オレンジに溺れたふたり【第1章 第1話 再会】

第1章 第1話 再会

10年ぶりに中学の同窓会が開かれた。最後に集まったのは高校を卒業して以来だ。私たちはあと2年で30歳になる。時の流れは早いものだ。

目の前の飲み物がソフトドリンクからお酒に変わっても、状況や見た目が大人になったくらいで相変わらずあの頃のままの懐かしい空間が漂う。

「才子ちゃーん久しぶり!相変わらず綺麗だよねぇ。彼氏いるの?」
中学時代クラスの中心的なグループにいた末永美

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〔ショートストーリー〕雨女の憂鬱

〔ショートストーリー〕雨女の憂鬱

大学の講義を終えて帰ろうとすると、待ち構えていたように雨が降り出した。雨女なんて言葉、大嫌いだ。そんな言葉があるせいで、私はこれまで勝手に責任を感じてきた気がする。

小学校の修学旅行。1日目は何とか小雨で済んだが、2日目は大雨。制服がびしょびしょになった私たちは、全員で体操服に着替えなければならなかった。6年生最後のイベントのお別れ遠足は土砂降りで、体育館で歌を歌ってお弁当を食べた。何故か大事な

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四字熟語のおみくじ

四字熟語のおみくじ

 私の住む町の神社にはちょっと変わったおみくじがあった。
 それは神主さんの手作りのおみくじで四字熟語が書いてある。たいていは「病気平癒」や「七転八起」などの当たり障りのないものだったが、時折「麻婆豆腐」やら「春眠眠眠」だのおかしなものが混ざっている。絶妙なゆるさが人気だった。
 子供は一回50円。皆でおみくじを引きあって、誰が一番笑えるくじを引けるかを競いあって遊んでいた。
 時折それは驚くほど

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白猫になった魔女 / 連作短編小説 -1-

白猫になった魔女 / 連作短編小説 -1-

 ――吾輩は猫である。
 ――名前など、とうに捨てた……。

「もぉ。白猫さんったら、またいけずなこと言わはって」

 ひょい、と白猫は少女に持ち上げられる。少女の手首にミサンガで結ばれた小さな鈴が、チリンと可愛らしい音を転がす。

 ――小娘、いい加減にしてくれぬか。
 ――このような道の往来で、吾輩を赤子のように抱きかかえるなど。

「だって白猫さん、ずっと早足やし。こーんな短い足やのにねぇ」

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