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ひとりごと

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ぽろりとこぼれ落ちた言葉たち
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#エッセイ

-10度のオスロの夜に

-10度のオスロの夜に

あのとき感じた匂いも、感情も、今となってはうまく思い出せなくて少し悲しい。

たしか2017年の10月頃。

恋人と別れ、イギリス暮らしにも心身ともに疲弊し、悲しみで声が枯れるということを初めて経験したときのことだった。

今にも命が消え失せてしまいそうなわたしに「せっかくヨーロッパにいるのだから、気分転換に心からワクワクする国へ行くといいよ」と姉が声をかけてくれた。

自分の英語力にも自信が無く

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この夏、Huluを契約してプレゼントしたら親孝行になった話

この夏、Huluを契約してプレゼントしたら親孝行になった話

今年の夏、すこし実家に帰る機会があったので久々に父と長く過ごした。

母が亡くなってから何年が経っただろう。たしかもう7年か、8年か。あるときから数えるのをやめた。家族のLINEでもその話題が出ることはなくなった。

悲しみに慣れるために必要だったのだと思う。

あっという間に60歳を超えてしまったよ、と父は笑った。

ひさびさに足を踏み入れた実家。ガランとしたリビングにはぽつんとロッキングチェア

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「センスがいい」とはどういうことか?

「センスがいい」とはどういうことか?

嬉しいことに、わたしは昔から「センスがいいね」と言われてきた。

これだけ書くと「なんだ自慢か」という風に受け止められかねないがちょっと待ってほしい。

「センスがいい」って何だろう?

まるで風船のようにふんわりとしているその言葉を強く抱きとめることができず、これまで投げられては空に放ってきた。自分の自信にはあまり繋がってきたとはいえない。

人は「私は○○のデザインができます」「私は○○の言語

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