鎌塚慎平

北海道で、コピーライターと演劇の人をしています。

鎌塚慎平

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マガジン

  • 演劇の感想

    ぼくが見た演劇の感想をまとめています。だれかのためになるレビューや評論の類ではありません。それでもよければご覧になってください。

  • 鎌塚慎平が書いた、舞台の脚本

    札幌の劇団「劇団・木製ボイジャー14号」をはじめ、ぼくがいろんな舞台に書き下ろした演劇脚本です。 無料公開してます。投げ銭制を採用していて、お金をもらえると嬉しいです。 どれも、面白いと思ってるから公開しています。 ご覧ください。

  • 短歌

記事一覧

(短文)古くなることと生きること。

noteのロゴが新しくなった。 古くなったものは、時代に合わせて、新しくなる。 人はどうだろう? 社会的な価値観の変化に遅れた演出家が、告発される。 そんなニュース…

鎌塚慎平
1年前
2

ポエムだって言われても書きたいなにかがある。

演劇のチラシに載せるあらすじを依頼された。 依頼されたと言っても、仕事の類ではなく、演出を依頼された作品のあらすじだ。だから、演出業務のなかにあらすじ執筆も含ま…

鎌塚慎平
1年前
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『路に転々』 脚本無料公開

2022年8月 ふたり芝居 劇団・木製ボイジャー14号 夏の文化祭〜シン・パトス〜 『路に転々』 作:鎌塚慎平 上演時間:たぶん20分くらい 出演者:2名 所属する劇団の2年…

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鎌塚慎平
1年前
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「私はあなたについて何も知らない」ことが愛かもしれない。

私とあなたは違うし、あなたと明日のあなたは違う。だからいつもあなたをきちんと見て、私の中に決まったあなたをつくらないように気をつける。私の中には、あなたの形では…

鎌塚慎平
1年前
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「音楽のように演劇をたのしむ」って理想が、昔よりわかった気がする。

突然ですが、音楽は好きですか? 「嫌い」って答える人は少ないんじゃないかな。 「好き」か、「ふつう」だと思う。こういうとき僕は「好き」って答えるようにしてる。 …

鎌塚慎平
2年前
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演劇の感想:project NG『短編演劇集』|ヒールアタック『トーキョーオールライト』|さまてまぴ『同じ穴の、同じ釜野飯男』

project NG『短編演劇集』 3月12日(土)14:00/札幌・BLOCH 『修学旅行』『日向のソナタ』『Re:prologue』 はじめて会ったときは大学生だった千智が、今は働いていて、…

鎌塚慎平
2年前
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演劇の感想:『VR 能 攻殻機動隊』|『さんかく小屋のフェイ』(明・飛世ver)|ポケット企画×あづき398『ゆうむすぶ星』

『VR 能 攻殻機動隊』 1月15日(土)16時/札幌・hitaru 大好きな攻殻機動隊と、今をときめくVRと、日本伝統の能。個人的に興味のある三つが融合している様を、ぜったい…

鎌塚慎平
2年前
3

演劇の感想:クラアク芸術堂『男亡者の泣きぬるところ』|劇団コヨーテ『ライカジャンクライカジミードッグアイウォンチュウ』|

クラアク芸術堂『男亡者の泣きぬるところ』 12月19日(日)15時/札幌・カタリナスタジオ また哲と伊達さんの芝居を見てしまった。うるさい。わかっていたけどうるさい。…

鎌塚慎平
2年前

演劇の感想:『北神楽』|劇団しろちゃん『大国映画村二〇二一』『曲がったハハハハの人々』|scherzo LIVE2021

北神楽 -大地の灯火トリエンナーレ- 9月18日(土)18時15分/由仁町・ゆにガーデン トリエンナーレだけど毎年やるらしい。まあいいんだ、その辺りのことは(笑)。 ゆ…

鎌塚慎平
2年前
1

自分の世界を変えていくことは大切だけど、意外と不可逆だったりする。

あたらしいことを知ると、じぶんの世界はどんどん変わっていく。 たとえば、一度イラストを書いてみると、世の中のゲームやアニメの見え方が変わる。 ちいさいころパーフ…

鎌塚慎平
2年前
3

演劇の稽古は好きなときに休んだり遅れたりしていいと思う。

演出として関わったクラアク芸術堂の舞台『あゆみ』が終わって1ヶ月ほど経つ。 『あゆみ』では、たのしく創作することを第一意義とした。 そのために、まずはじめに決め…

鎌塚慎平
2年前
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旗になる言葉を、別の立ち位置から、冷ややかに見る人がいるという事実。

言葉は、人をまとめ上げるための旗印になると同時に、その旗のもとにいない人には滑稽に見えることがある。 たとえば先日の衆議院選挙で、「選挙に行こう」というメッセー…

鎌塚慎平
2年前

森を見て樹を見ず。葉を見て幹を見ず。

根も幹もない樹は、きれいな葉をつけたとしても、かんたんに吹かれて飛んでいく。 そんな樹を見たことはないから、想像だけど、たぶんそうだ。 物語が、どれだけ感動的で…

鎌塚慎平
2年前
2

「論理的である」ということが間違いとされる(こともある)世界にいる。

(大声で言いたいことじゃないので、読みづらい書き方をしました。) ぼくは、数学が好きだ。 数学は、論理的な学問だ。 論理は、抽象的だ。だから、扱いがむずかしい。…

鎌塚慎平
2年前
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演劇の感想:noisieeeee⇄project『ウミをたゆたう』/コサト公園『夕立やんで蝉しぐれ』/クラアク芸術堂『エダニク』

noisieeeee⇄project『ウミをたゆたう』8月9日(月休)14時/札幌・&VOGUE 上演中はとても楽しかったのに、観劇後にいっさいの具体を覚えていない気がした。事実、いま思…

鎌塚慎平
2年前
1

あいまいな不安と向き合う勇気を持とうと、改めて思った。

未知のものと向き合うとき、人は「あいまいさ」の中に留まり続ける。 これはとても不安な状態だ。夜に手すりのない石段を登っているような気持ちになる。 はやくつかまる…

鎌塚慎平
2年前
2

(短文)古くなることと生きること。

noteのロゴが新しくなった。

古くなったものは、時代に合わせて、新しくなる。

人はどうだろう?

社会的な価値観の変化に遅れた演出家が、告発される。

そんなニュースが、年に1、2回は流れてくる。

僕の周りも、僕自身も、アップデートが最新だとは思えない。

それはさておき。

古いものが、すべて悪いものだとも思わない。

古くても、手をかけられたものは、錆びれない。

僕自身、錆びないよう

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ポエムだって言われても書きたいなにかがある。

ポエムだって言われても書きたいなにかがある。

演劇のチラシに載せるあらすじを依頼された。

依頼されたと言っても、仕事の類ではなく、演出を依頼された作品のあらすじだ。だから、演出業務のなかにあらすじ執筆も含まれていた、というニュアンスが正しい。

コピーライターという立場上の肌感覚でもあるけど、「文章力」がスキルとして求められる時代だ。おそらく、演劇のあらすじにも文章力が求められていて、だから僕に発注されているんだと思う。

演劇のあらすじと

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『路に転々』 脚本無料公開

2022年8月 ふたり芝居
劇団・木製ボイジャー14号 夏の文化祭〜シン・パトス〜
『路に転々』 作:鎌塚慎平

上演時間:たぶん20分くらい
出演者:2名

所属する劇団の2年ぶりの公演でつくった短編劇です。劇団員の気のいい人と、同い年の気のいい人と。

「過去は変えられない」って本当でしょうか?その割にはけっこういろんな昔のことが、都合よく解釈されて、つらかったことが良いことだったみたいに語ら

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「私はあなたについて何も知らない」ことが愛かもしれない。

「私はあなたについて何も知らない」ことが愛かもしれない。

私とあなたは違うし、あなたと明日のあなたは違う。だからいつもあなたをきちんと見て、私の中に決まったあなたをつくらないように気をつける。私の中には、あなたの形ではなくて、あなたという存在そのもの、僕はこれを魂のようなものだと思っているんだけど、それを置いておく。

時折まちがえることがある。私はあなたのことが好きだから、あなたとたくさんの時間を共有してきたから、あなたのことはなんでも知っている。そし

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「音楽のように演劇をたのしむ」って理想が、昔よりわかった気がする。

「音楽のように演劇をたのしむ」って理想が、昔よりわかった気がする。

突然ですが、音楽は好きですか?

「嫌い」って答える人は少ないんじゃないかな。

「好き」か、「ふつう」だと思う。こういうとき僕は「好き」って答えるようにしてる。

音楽については、僕はけっこう好きな方だと思っていて、楽器もすこしは演奏できるし、AppleMusicにも登録している。

そして音楽好きが高じて(?)、いつしか演劇について、こう思うようになった。

音楽みたいに、演劇をたのしんでもら

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演劇の感想:project NG『短編演劇集』|ヒールアタック『トーキョーオールライト』|さまてまぴ『同じ穴の、同じ釜野飯男』

演劇の感想:project NG『短編演劇集』|ヒールアタック『トーキョーオールライト』|さまてまぴ『同じ穴の、同じ釜野飯男』

project NG『短編演劇集』

3月12日(土)14:00/札幌・BLOCH
『修学旅行』『日向のソナタ』『Re:prologue』

はじめて会ったときは大学生だった千智が、今は働いていて、自分のなかまたちと演劇をつくっている。劇団しろちゃんの後輩たちよりも、親心のようなものを感じていて、自分でびっくりした。たぶんはじめ彼女がBLOCHにいたころによく会っていて、その後はひんぱんに会うよう

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演劇の感想:『VR 能 攻殻機動隊』|『さんかく小屋のフェイ』(明・飛世ver)|ポケット企画×あづき398『ゆうむすぶ星』

演劇の感想:『VR 能 攻殻機動隊』|『さんかく小屋のフェイ』(明・飛世ver)|ポケット企画×あづき398『ゆうむすぶ星』

『VR 能 攻殻機動隊』

1月15日(土)16時/札幌・hitaru

大好きな攻殻機動隊と、今をときめくVRと、日本伝統の能。個人的に興味のある三つが融合している様を、ぜったいに見ておきたいと思った。そして、見てよかった。

攻殻機動隊シリーズで一番有名(ぼくもそこから入った)なのは、アニメシリーズの『SAC』だと思う。特徴としてはSF的要素を前面に出していること。『ARISE』や『2045』

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演劇の感想:クラアク芸術堂『男亡者の泣きぬるところ』|劇団コヨーテ『ライカジャンクライカジミードッグアイウォンチュウ』|

演劇の感想:クラアク芸術堂『男亡者の泣きぬるところ』|劇団コヨーテ『ライカジャンクライカジミードッグアイウォンチュウ』|

クラアク芸術堂『男亡者の泣きぬるところ』

12月19日(日)15時/札幌・カタリナスタジオ

また哲と伊達さんの芝居を見てしまった。うるさい。わかっていたけどうるさい。どうでもいいけど、お客さんが舞台に向かって喋る瞬間がけっこう好きだ。衝動だ。ぼくが見た回ではそれが起きた。気持ちいい。

ふたりともずっと大きい声でしゃべっている。『エダニク』のときほどではないが、代わりに体もうるさい。プロレスを

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演劇の感想:『北神楽』|劇団しろちゃん『大国映画村二〇二一』『曲がったハハハハの人々』|scherzo LIVE2021

演劇の感想:『北神楽』|劇団しろちゃん『大国映画村二〇二一』『曲がったハハハハの人々』|scherzo LIVE2021

北神楽 -大地の灯火トリエンナーレ-

9月18日(土)18時15分/由仁町・ゆにガーデン

トリエンナーレだけど毎年やるらしい。まあいいんだ、その辺りのことは(笑)。

ゆにガーデンは、カラフルな花が咲く英国風庭園(らしい)。ぼくが着いたときには既に日が落ちていた。入場ゲートをくぐると、遠くに明るい空間があって、そのまわりに人がちらほら座っている。ステージ然としたものはなく、ただ広い公園。環境そ

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自分の世界を変えていくことは大切だけど、意外と不可逆だったりする。

自分の世界を変えていくことは大切だけど、意外と不可逆だったりする。

あたらしいことを知ると、じぶんの世界はどんどん変わっていく。

たとえば、一度イラストを書いてみると、世の中のゲームやアニメの見え方が変わる。

ちいさいころパーフェクトヒューマンだと思っていた先生も、ただの不惑のおじさんだったと気づく。

「演劇的」なことを知ると、ただの飲み会でも演劇を探してしまう。

世界は、自分が解釈可能な姿でしか現れないし、自分の視野を広げて世界を更新していくことは、とて

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演劇の稽古は好きなときに休んだり遅れたりしていいと思う。

演劇の稽古は好きなときに休んだり遅れたりしていいと思う。

演出として関わったクラアク芸術堂の舞台『あゆみ』が終わって1ヶ月ほど経つ。

『あゆみ』では、たのしく創作することを第一意義とした。

そのために、まずはじめに決めたのが「休んでいい」というルール。

稽古はいつでも、理由なく、休んでいい。

理由がないと休みを申告しづらいから、そもそも誰も欠席理由を言ってはいけない。

みんなには「なんか今日気分じゃないな」と思ったら、休んでいい、休んだ方がいい

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旗になる言葉を、別の立ち位置から、冷ややかに見る人がいるという事実。

旗になる言葉を、別の立ち位置から、冷ややかに見る人がいるという事実。

言葉は、人をまとめ上げるための旗印になると同時に、その旗のもとにいない人には滑稽に見えることがある。

たとえば先日の衆議院選挙で、「選挙に行こう」というメッセージを掲げた有名人がたくさんいる。

選挙に行くこと、選挙に行こうと呼びかけることは、(それで本当に政治が変わるのかは置いておいて)良いことだと思う。

でもどこかに、今更そんなこと、と冷ややかに受け取って、メッセージを見ても行かなかった人

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森を見て樹を見ず。葉を見て幹を見ず。

森を見て樹を見ず。葉を見て幹を見ず。

根も幹もない樹は、きれいな葉をつけたとしても、かんたんに吹かれて飛んでいく。

そんな樹を見たことはないから、想像だけど、たぶんそうだ。

物語が、どれだけ感動的で、劇的で、衝撃的だったとしても、幹のない表現が記憶に残ることはない。

人間が考えて、生み出すものには、幹があったほうがいい。それをぼくは、コンセプトとか、そういう言葉で言い表している。

今つくっている舞台『あゆみ』のコンセプトは、「

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「論理的である」ということが間違いとされる(こともある)世界にいる。

「論理的である」ということが間違いとされる(こともある)世界にいる。

(大声で言いたいことじゃないので、読みづらい書き方をしました。)

ぼくは、数学が好きだ。

数学は、論理的な学問だ。

論理は、抽象的だ。だから、扱いがむずかしい。

論理的に説明できるということは、再現可能であり、互換可能であるということだ。

ぼくら演劇人は、ひとりで制作することはほとんどない。ごくまれにひとりで本を書き、出演するひともいるが、それでも客がいる。

チームで制作する以上、それ

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演劇の感想:noisieeeee⇄project『ウミをたゆたう』/コサト公園『夕立やんで蝉しぐれ』/クラアク芸術堂『エダニク』

演劇の感想:noisieeeee⇄project『ウミをたゆたう』/コサト公園『夕立やんで蝉しぐれ』/クラアク芸術堂『エダニク』

noisieeeee⇄project『ウミをたゆたう』8月9日(月休)14時/札幌・&VOGUE

上演中はとても楽しかったのに、観劇後にいっさいの具体を覚えていない気がした。事実、いま思い出そうとしても、主軸のふたりの名前すら思い出せない。それでも、雨の日の昼下がりに、すこし暗い室内で心地よい時間を過ごしたことは覚えている。

どうやらギリシア神話をモチーフにした作品らしい。こういうとき「ぼくも

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あいまいな不安と向き合う勇気を持とうと、改めて思った。

未知のものと向き合うとき、人は「あいまいさ」の中に留まり続ける。

これはとても不安な状態だ。夜に手すりのない石段を登っているような気持ちになる。

はやくつかまるなにかを見つけようと、判断を急ぎ、分かったつもりでことをすすめてしまう。

この不安に打ち勝ち、まだ知らないものをより高い解像度で知るために、あいまいさに留まる「勇気」が必要だと思う。

ぼくが今取り組んでいる舞台『あゆみ』の稽古では、

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