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演劇の感想:『北神楽』|劇団しろちゃん『大国映画村二〇二一』『曲がったハハハハの人々』|scherzo LIVE2021

北神楽 -大地の灯火トリエンナーレ-

9月18日(土)18時15分/由仁町・ゆにガーデン

トリエンナーレだけど毎年やるらしい。まあいいんだ、その辺りのことは(笑)。

ゆにガーデンは、カラフルな花が咲く英国風庭園(らしい)。ぼくが着いたときには既に日が落ちていた。入場ゲートをくぐると、遠くに明るい空間があって、そのまわりに人がちらほら座っている。ステージ然としたものはなく、ただ広い公園。環境そのままの劇場。いいなあ。

アイヌの神(カムイ)と、日本の神と、海外の神も。人間から神になった存在も出てきて、好き放題。それらが争う様を歌と踊りで表現していく。情緒に欠ける言い方だけど「神々のスパロボ」って感じ。めっちゃあがった。

マイクの音声がときおり切れていたのが残念。効果的にどうこうではなく、音がふっと消えてまた入るという現実が、神々のスパロボに浸かった心を引き戻す。やっぱり野外でやるって、技術的に大変なんだろうな。屋外はそれだけで楽しいから、自分でやるときはアンプラグドでやってみたい。屋外でちいさく集まったりしてさ。

屋外の、パブリックなスペースを劇場にする。その魅力を3つにまとめてみた。ひとつは「せまくるしくない」こと。開放感があるということなんだけど、普段の小劇場はせまくるしいため、あえてこの言葉で。せまくるしくないと、余白が生まれる。受け取ったり、考える自由が生まれる。

ふたつめは「現実世界との連続性」。ぼくは札幌の自宅から車で由仁に向かい、道中おいしいごはんを食べ、道の駅によって、その流れでゆにガーデンに入場した。劇場に入っていく非日常感も嫌いじゃないが、最近のぼくの興味は日常のなかに演劇を置くことにある。ただの休みの日に設置された北神楽はおもしろい体験だった。

最後に「一体感」。これはもうフェス。それ以外に言いようがない。同調圧力的な一体感ではなく、自由な一体感。いま目をそらしている人、別のことを考えている人も含めて、同じ時間と空間をシェアしている一体感。ちなみに、クリエイティブスタジオで見た藤田貴大さんの親子向け演劇にも、似たような一体感があった気がする。必要なのは客席の自由なのかもしれない。

最後にひとつ。個人的に、野外のだめなとこ。蛾がでかい。こわい。


劇団しろちゃん『大国映画村二〇二一』

10月16日(土)11時/札幌・BLOCH

休憩含めて2時間近くあったはずだが、もっと短く感じた。時を忘れるほどおもしろかったという印象ではない。かといって、中身がなく退屈だったという印象でもない。不思議。めっちゃ長い文章なのに、するする読めちゃうみたいな。

一応書いておくと、ぼくはしろOBとしてこの公演の途中経過を通し稽古を見ていて、そのうえでの感想。

客離れの進む映画村のステージ俳優たちがメイン。どうしようもない男が主人公で、こいつのどうしようもなさが憎めない。いい人ぶられると憎たらしく感じるのに、ちょっとヤなやつは憎めない。共感できちゃう。これはきっと何かのバイアスなんだろうな。

ラストで映画村は廃止になるんだけど、きっかけのひとつがコロナだ。いま現代芝居をやるなら、避けては通れないから、そこに挑戦しているのが好きだった。環境を描くことは人間を描くこと。安易にコロナをファクターにするとご都合すら感じちゃうから、その辺りは難しかったんだろうな。

コロナつながりでもうひとつ。劇中映像で、オンライン飲み会の様子が流れる。けっこう長い。ぼくが見た作品で、コロナ禍の飲み会を出してきたのは初めてだった。オンライン会議などになれていれば、違和感なく見られる。そうじゃない人にどう見えるのか気になる。けっこういるよね、オンライン〇〇ほとんどやったことないって人。

劇中劇もあって、それも好き。映像も劇中劇も、とりわけ目新しい表現方法ではないけど、挑戦していく姿勢がよい。やってみる、組み合わせてみることで、おもしろくなるし。

役者がいい。個性があふれている印象。エネルギーを貯めていたんだね。学生演劇は若い人が多いから、これからそのエネルギーと個性をどう尖らせていくのか。めちゃくちゃ楽しみだ。余談だけど、ぼくの頃と変わっていなければ、しろちゃんは役者希望が多いので、毎回舞台に立てるわけじゃない。限られたチャンスで存在感を発揮する人が増えてきたら。ワクワクする。

コロナ禍で学生演劇の力が継承されないと危惧されていたけど、そんなことはないと感じた。「公演を実行する」力は(少なくとも劇団しろちゃんでは)ちゃんとある。「公演をおもしろくする」力はわからないけど、でもそれを伸ばすっていうのは、コロナ禍だからの課題ではないよね。

ラスト、手裏剣投げるシーンが好き。深くにもうるっときてしまった。


劇団しろちゃん対校祭『曲がったハハハハの人々』

11月20日(土)14時/札幌・サンピアザ劇場

フーダニットのループものって感じなんだけど、たぶんこれはミステリではない気がする。わかんないけど。しかしミステリじゃないとすると、これはいったい何だったのか。楽しめたんだけど、あと一歩踏み込んだ部分で感じたかった。これは作り手のせいじゃなく、自分の問題だと思う。何かを見落とすか、決めつけながら見ていたような気がしている。

役者が良かった。ひとつ前の「大国映画村」でも書いたが、個性とエネルギー。原石って感じ。それでもコチラのほうが磨かれていた印象。経験の多い役者とか演出家が多いんだろうな。背の高い男性俳優がよかった。彼と一緒に舞台をつくってみたいな。

セリフが特徴的で流れるように言葉を紡ぐ。最近流行りの(とぼくが勝手に思っている)手数口数多い系のお芝居。こういうときはミザンスありきの型ハメ演技になるイメージ。この作品も。もったいないような気もするし、いや演技なんてぜんぶそうだろって気もする。

演出家のイメージが強い作品では共通して、世界揺らがねえなみたいな印象をもつことがある。ひとりのアイデアが突出していて、不確定なことが少ない。カオスが生まれないというか。俳優や演出以外のつくり手のアイデアをどんどん足して、ぐらぐらさせながらシュッとまとめる、みたいなことがしてみたい。

全体としてテンポがよくて、次が気になる物語だったので、すごく楽しめた。最優秀賞取るかなぁとも思ったけど残念。対校祭は毎年レベルがぜんぜん違うのもおもしろいところ。


scherzo LIVE 2021 for the ねぐせきょうだい!

11月21日(日)14時30分/美唄・アルテピアッツァ美唄 アートスペース

たのしかった。スケルツォ化した。笑っちゃって、え、いまの笑うとこじゃないの、とかもあって好き。家でずっと見ていたい。

世界を見る視点を変えて、世界そのものを変えていくしかけ。冒頭、1秒を無限に分割する視点ですでに大好きになっていた。佐藤雅彦さん(ピタゴラスイッチの人)が好きな人は、一回見てみてほしい。

見たら分かると思うし、見ないと分からないと思うので、次の機会があったらみんな見て。


清水企画『だれば箱づめの亡者』

12月11日(土)15時/札幌・シアターZOO

めっちゃ面白かったのにもうよく覚えてない。(2022年2月時点)ごめんなさい。今度から見たらすぐ感想書きます。田中雪葉さんという俳優がすてきでした。

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