あいまいな不安と向き合う勇気を持とうと、改めて思った。

未知のものと向き合うとき、人は「あいまいさ」の中に留まり続ける。

これはとても不安な状態だ。夜に手すりのない石段を登っているような気持ちになる。

はやくつかまるなにかを見つけようと、判断を急ぎ、分かったつもりでことをすすめてしまう。

この不安に打ち勝ち、まだ知らないものをより高い解像度で知るために、あいまいさに留まる「勇気」が必要だと思う。

ぼくが今取り組んでいる舞台『あゆみ』の稽古では、未知のことに積極的に挑戦するようにしている。俳優たちがこれまで培ってきた知見や技術だけでは辿りつけない、あたらしい刺激を求めての取り組みだ。

具体的にはハグをしたり、デートをしたり、100円玉で遊んでみたり、同じ言葉を延々くり返してみたり。いまのところ、演劇の稽古らしからぬことばかりしている。

目的は「未知のことにふれる」なのだが、それが実際にどう演劇に活きるのかは分からない。稽古としては非常にあいまいなことをしている。

このあいまいさと付き合っていった先に、発見や気づきがあれば、それはその人の視野を変えうるものになると信じている。

だから俳優たちにはぜひ「勇気」をもって、あいまいさと付き合っていって欲しいと願っているのだけど、実は今いちばん「あいまいさ」におびえているのは、ぼく自身なのかもしれない。

ぼくはこれまで演劇の勉強を続けてきたわけではなく、ただ自分の趣味の延長線上でいまの舞台活動をしている。

だから、これまでに書いたような私見が、どれだけ演劇的に効果があるのかよく分かっていない。

これはぼくにとっても「あいまいさ」がつきまとう取り組みで、しかもそれを他者=俳優に強制している。演出として、作品のクオリティも最低限担保しなければという責任感も、少ないなりに持っている。

だから毎日の稽古で、あいまいさの先に「なにかを見つけなければ」と必死になっている。あるときふと、自分のその状態に気づいた。

「あいまいさ」の先に必ずなにかが見つかるのなら、その取り組みはもう未知のことじゃなく、発見のための手段にすぎない。

そこに「あいまいさ」はなく、「気づきを得る」から、「既存の気づきを当てはめる」ことに近づいてしまう。

発見ではなく、発見のふりをした確認作業になる。

俳優たちは「あいまい」なぼくの取り組みを受け入れて、ていねいに理解と表現を続けてくれているのに、ぼくが「あいまいさ」の暗闇に立つことを恐れていた。これは失礼だ。

彼女たちにぼくの思考を押し付けて実践してもらうだけじゃなく、ぼくも同じ「あいまいさ」の中で暗中模索する。これからは初心にもどって稽古に向き合っていこうと思った。

俳優たちや作品への責任感は、今日明日達成するのではなく、もっと未来で、たとえば作品ができた後とか、1年後10年後とか、そういう長い目で、「あの稽古(作品)よかったな」って思えたらいいや、くらいの気持ちで。Take it easy.


最後まで読んでくれて、ありがとう!
「言葉」と「演劇」について、気ままに書いています。興味を持ってくれたら、ぜひフォローお願いします。マガジンでは僕の舞台脚本や、短歌を集めています。短いものから、ぜひご覧ください。

▽▽▽つくっている舞台▽▽▽

全編歩き続ける、10人1役の舞台演劇
クラアク芸術堂『あゆみ』

作:柴幸男 演出:鎌塚慎平(劇団・木製ボイジャー14号)
出演:木村歩未(劇団fireworks)、順毛美羽、滝ヶ平愛美、谷川夢乃、ともか、松里瑠夏、三宅亜矢、山下朱音(キャスティングオフィスエッグ)、山下愛生、吉田茜(Po-che)

2021年10月4日(月)→10日(日)全8ステージ
カタリナスタジオ(札幌市北区北10西2)
一般2,000円/学生1,000円(完全予約制)
ご予約:https://www.quartet-online.net/ticket/ayumi21
詳細:https://www.clark-artcompany.com/ayumi

画像1


購入&サポート、いつもありがとうございます!すごく励みになります。 サポートいただいた分で、楽しいことをつくったり、他の人のよかった記事をサポートしたりしていきます!