森を見て樹を見ず。葉を見て幹を見ず。
根も幹もない樹は、きれいな葉をつけたとしても、かんたんに吹かれて飛んでいく。
そんな樹を見たことはないから、想像だけど、たぶんそうだ。
物語が、どれだけ感動的で、劇的で、衝撃的だったとしても、幹のない表現が記憶に残ることはない。
人間が考えて、生み出すものには、幹があったほうがいい。それをぼくは、コンセプトとか、そういう言葉で言い表している。
今つくっている舞台『あゆみ』のコンセプトは、「十人十色」だ。
はじめましての人がたくさんいる舞台で、10人それぞれの個性を活かしていきたい。
いちおう付け加えておくと、ここでいう個性は見た目とか、得意なことだけじゃなくて、考え方。その人の人生そのもの。
見に来てくれるお客さんに、この俳優と友だちになってみたいと思わせたい。そんな気持ちもある。
「十人十色」を幹にしたときに、どんな葉をつけるのか。そのすべては。まだ僕にも分からないけど。
そのためにぼくは、俳優の全員に、「考えること」をいつもお願いしている。
なぜ? どうして? そもそもなに? これってどこ?
だれかが与えたものよりも、自分で考えて、見つけたもののほうが、強い幹になると思う。
そうしてそれぞれがつくった幹に、どんな葉がつくのか。それを見ながら、演劇をつくっていく。
みんなの葉よりも、幹をたいせつにしたい。
きれいな葉をつけることを、つまり、見え方をたいせつにしようという気持ちも、分からないではないけど。
ていうか、ぼく自信、過去にはそうだったし、いまでも油断すると、葉っぱばかり見てしまいそうになる。
でも演劇が自己表現だと考えるなら、やっぱり幹を大切に考えるべきだと思う。
赤い葉をつけろと言われても、樹は急に色を変えないよね。
葉をコントロールしたいなら、ていねいに根っこから見守るべきだ。
そうして未来に、きれいな赤い葉をつけてくれることを、信じたらいいし、もしも紫色の葉をつけたとしても、それはそれできれいだと思う。
どうして紫色の葉がつくんだろう?それを考えると、その人の人となりとか、生い立ちが見えてくる。
その人の幹が、とてもきれいだということに、気がつく。
その瞬間がたのしいとも、思っている。
幹を愛していれば、どんな葉をつけたって、たまらなく美しく見えるものだ。
逆に言うと、これはちょっと批判的になるけどね、
幹を見てくれない人とは、いつか終わりがくるものだと思うよ。
ぼくは、そうならないように。自戒。
最後まで読んでくれて、ありがとう!
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▽▽▽つくっている舞台▽▽▽
全編歩き続ける、10人1役の舞台演劇
クラアク芸術堂『あゆみ』
作:柴幸男 演出:鎌塚慎平(劇団・木製ボイジャー14号)
出演:木村歩未(劇団fireworks)、順毛美羽、滝ヶ平愛美、谷川夢乃、ともか、松里瑠夏、三宅亜矢、山下朱音(キャスティングオフィスエッグ)、山下愛生、吉田茜(Po-che)
2021年10月4日(月)→10日(日)全8ステージ
カタリナスタジオ(札幌市北区北10西2)
一般2,000円/学生1,000円(完全予約制)
ご予約:https://www.quartet-online.net/ticket/ayumi21
詳細:https://www.clark-artcompany.com/ayumi
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