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演劇の稽古は好きなときに休んだり遅れたりしていいと思う。

演出として関わったクラアク芸術堂の舞台『あゆみ』が終わって1ヶ月ほど経つ。

『あゆみ』では、たのしく創作することを第一意義とした。

そのために、まずはじめに決めたのが「休んでいい」というルール。

稽古はいつでも、理由なく、休んでいい。

理由がないと休みを申告しづらいから、そもそも誰も欠席理由を言ってはいけない。

みんなには「なんか今日気分じゃないな」と思ったら、休んでいい、休んだ方がいい、と言った。

※創作期間に相応の対価が発生している場合は、この限りじゃないよ。

とにかく目指したのは、たのしい稽古場だ。

時間をけずり、ストレスを溜めた状態での稽古は、とうてい良いものにならないと、ぼくは思う。

体力と精神力を犠牲にすると、モチベーションが下がるし、いい発想は出てこないし、コミュニケーションを阻害する。

おなじ場所で創作をする仲間には、心身ともに万全の状態でいてほしい。

だから、まずは稽古に出る出ないを自由にした。

データがあるわけじゃないけどぼくは、このルールで稽古効率は上がったと感じているし、結果として欠席や遅刻は少なくなったのではとさえ思っている。


稽古を休んでいいと言ったもうひとつの理由は、たくさんの経験をしてほしいから。

長い期間おなじメンバーといっしょにいると、みんな似てくる。

結婚すると似てくるとか、ペットが飼い主に似るとか、そういう感覚。

一体感が生まれることはいいのだけど、あまりにも似すぎると、思考回路までそっくりになってくる。

すると、ひとつの事象に対して、全員が似たような思考で似たような反応をかえすようになる。

それは、ちょっとつまらない。

稽古を休んでキャンプに行ったり、ライブに行ったり、友だちとご飯を食べたり、家でぼーっと考え事をしたり。

そういう人それぞれの経験が、人それぞれの思考をつくっていく。

ひとつの事象に対して、それぞれの反応が生まれる。

稽古に、驚きと発見が生まれる。

作品が、いろんな顔を見せ始める。

おもしろい。

演劇にルールブックはないから、考え方や表現のバリエーションは多い方がいい。

だから、稽古は休んでいい。

その分、いろんなことを感じて、考えてほしい。


稽古を休んでいいとしたのは、俳優たちにやさしい顔を見せたいわけじゃなくて、それで、稽古場と作品の質に還ってくると信じての取り組み。

ただひとつ弊害があって、休んだ人のバックアップをすべて友だちの新田かえるに任せたら、彼女のキャパが限界を迎えた。

『あゆみ』の稽古には一切支障をきたさず、やり遂げてくれたのだけど、たぶん彼女個人の活動とか、日常生活に支障をきたしまくったと思う。

この点の改善を考えても、なかなかいい案が思いつかない。

シンプルに作業を分担すればいいわけではないし、演出補的なポジションの人を増やすのも予算効率的に現実的じゃない。

なにかいい案はないものかと考えながら、とりあえず皆にはぼくの友だちすごいんだぜ、稽古のバックアップもできて、歌がうまくて、歌詞がエグいんだ、聞いてくれよと言いたい記事なのです。

どうか、みんな今日の稽古を休んで、シンガーソングライター新田かえるの音楽を聞いてくれ。

そしてリーダーは、それを認めてあげてくれ。


新田かえる『釣り人』

新田かえる『ひとりたちは手を繋ぐ』

新田かえる『おばあちゃんのビデオレター』

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