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【日本保守党15】池内恵VS飯山陽 どっちの本が売れている?(調べてみました)

(タイトル画像は「飯山陽のいかりちゃんねる」より。敬称略。これまでの経緯は下の参考記事を参照ください)

池内の目的は飯山パージ


日本保守党界隈で勃発した、池内恵・東大教授VS飯山陽・麗澤大客員教授のたたかい。

私はどちらかというと、飯山を応援したい。

というのも、「池内軍」のほうが、世間的な地位や権力が上ですからね。

無視していれば、池内が勝つんです。東大教授とか論壇・マスコミでの地位は、ゆるぎないのだから。


それなのに、なぜ池内が飯山を執拗に攻撃するのか。よくわからなかったのですが、これはどうも、飯山をパージするのが目的ではないか、と。

飯山がいくら池内を攻撃しても池内は消えないけど、池内は、飯山を社会の表面から消す力を持っています。

飯山の信用をなくさせ、出版社やマスコミが飯山を使いにくくさせる。それが目的なんでしょうね。百田尚樹が主流マスコミでパージされたように。


飯山の最新のYouTubeライブ、12月21日の動画でも、

「いかりちゃんはメインストリームメディアから呼ばれない。東京大学のI(アイ)教授なんかが、あいつは切れ、とか言ったりするから」

と言っていました。


【祝ハマス発売!】「弱者は正義」戦略と秘密結社JKISWAHNI?!


いかりちゃん、かわいそう。と、色ボケネトウヨ老人の私としては、思うわけです。

こういうことは、東大教授のような権力者がしてはいけないと思いますね。言論弾圧になる。

だから、「弱者」の飯山を応援してます。


私は飯山の本も読んでるしね。飯山の本はでたらめだという人がいるけど、面白かったですよ。

私は以前、若いイスラム教徒のテロをあつかったドキュメンタリーや映画をいくつかレビューしたけど、そのとき参考にしたのが飯山の『イスラム2.0』でした。飯山の本くらいしか参考になる本がなかった。


池田信夫、長谷川幸洋らの参戦


私がこの「戦争」に注目しているのは、元出版人から見て、「売れっ子」と思われる有名著者が、たくさん参加しているからでもあります。

飯山は、自分の敵を、名前の頭文字をつなげて「JKISWAHNI」と呼んでいます。


池内恵と反「日本保守党」軍(JKISWAHNI)

・上念司 ・KAZUYA ・池内恵(東大) ・篠田英朗(東外大) ・和田政宗(自民党) 有馬哲夫(早稲田大)・細谷雄一(慶応大) ・秋山信将(一橋大) ・池田信夫


いっぽう、飯山の援軍に、最近、長谷川幸洋がくわわりました。たぶん、高橋洋一も入れていいと思います。

長谷川は21日、池内らを外務省の「御用学者」と批判する動画をアップしました。


【外務省の補助金と思惑】『御用学者の役割と忖度』(長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル 12月21日)


飯山陽と親「日本保守党」軍

・飯山陽 ・百田尚樹 ・有本香 ・島田洋一 ・長谷川幸洋 ・高橋洋一


まあ、結局は日本保守党界隈ですが・・・。


需要があるのはどっち?


さて、博士号を持っている飯山のほうが偉い、いや、学会で学術論文を書いている池内のほうが偉い、みたいな議論もあったわけですが、出版の見地からは、どうでもいい話です。

学位をもたなくても、学会で学術論文を書かなくても、売れる本を書ける学者はたくさんいる。

要は、売れるかどうか。

このあたりの私の感覚は、テレビ界が長い百田尚樹と同じだと思います。

売れた人が社会に影響を与え、人びとの記憶に残り、歴史にも残るんです。

スピノザだって、ヒュームだって、ルソーだって、マルクスだって、みんなそうです。彼らの学位とか、論文の数とか、関係ありません。

小谷野敦が最近ポストしていたとおり。


宮崎パヤオの番組見るたびに、この世は売れたもん勝ちだなあと思う。

フーコーだって頭木弘樹だって要は売れたわけだからね


だから、どっちの本が売れているか、それで勝負を予想すればどうでしょう。

長期的には、売れている本を出している方が勝つ。

池内も飯山も、それぞれ、「自分の本は売れてる」自慢をしています。


(池内)
私の本は『現代アラブの社会思想』が2002年に5万部売れて今も20刷以上で売れ続けているし、『イスラーム国の衝撃』は10万部売れてこれも今も売れている。しかし世の中の大部分の本は全く売れていない。そこで際物に手を出す出版社が出てくる。


(飯山)
飯山陽『ハマス・パレスチナ・イスラエル』は発売前にアマゾン総合1位になり、なおかつ、発売前に重版決定されたがな。けっ。



市場での実売部数を知ることは、退職者の私には難しい。(日販や紀伊国屋が提供する売り上げ調査の有料サービスがあり、プロはそういうもので調べます)

そこで、地元の図書館で、どちらの本が多く借り出されているかを調べました。いまはオンラインで簡単に調べられます。

人気があり、需要がある本が、図書館でもよく借り出されているはずです。

最近の図書館は、その本を図書館が何冊所蔵していて、そのうちのどのくらい借り出されているか(貸出数)、どのくらいの人がその本を待っているか(予約数)を教えてくれます。

みなさんも、最寄りの図書館で、調べてみればどうでしょう。

私は、私の住んでいる川崎市の市立図書館で調べました(12月21日調べ)。


で、結果は以下のとおり。

結論から言うと、飯山の圧勝です。

現在、川崎市立図書館が所蔵する飯山の本は、すべて借り出されて、多くの人が待っている状態でした。

しかし、池内の本は、ほとんど借り出されていません。


池内恵の本 *ほとんど読まれていない

『ウクライナ戦争のゆくえ』 東京大学出版会 2022.8 共著、池内恵、小泉悠ほか
所蔵2 貸出0 予約0

『新しい地政学』 東洋経済新報社 2020.3 共著、北岡伸一、細谷雄一編
所蔵5 貸出1 予約0

『シーア派とスンニー派』 新潮選書 2018.5
所蔵3 貸出0 予約0

『イスラーム世界の論じ方』 中央公論新社 2016.5
所蔵2 貸出0 予約0

『サイクス=ピコ協定百年の呪縛』 新潮選書 2016.5
所蔵5 貸出2 予約0

『イスラーム国の衝撃』 文春新書 2015.1
所蔵11 貸出1 予約0

『現代アラブの社会思想』 講談社 2002.1
所蔵1 貸出0 予約0


飯山陽の本 *すべて貸出中

『愚か者! あっち系の懲りない面々』 ワック 2023.6
所蔵1 貸出1 予約30

『騙されないための中東入門』 高山正之と共著 ビジネス社 2023.2
所蔵1 貸出1 予約13

『中東問題再考』 扶桑社新書 2022.5
所蔵1 貸出1 予約28

『エジプトの空の下 わたしが見た「ふたつの革命」』 晶文社 2021.11
所蔵2 貸出2 予約1

『イスラム教再考』 扶桑社新書 2021.3
所蔵3 貸出3 予約3

『イスラームの論理と倫理』 中田孝と共著 晶文社 2020。10
所蔵2 貸出2 予約3

『イスラム2.0 SNSが変えた1400年の宗教観』 河出新書 2019.11
所蔵2 貸出2 予約0

『イスラム教の論理』 新潮選書 2018.2 
所蔵2 貸出2 予約3



池内はそもそも、最近単著を出していない、という不利がありました。

それにしても、シンクタンクの仲間と東大出版会から昨年出した『ウクライナ戦争のゆくえ』が、あまり読まれてなさそうなのは、まずいでしょう。

池内の8年前の本、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)を図書館が11冊も所蔵しているということは、池内が「10万部売れた」と言うとおり、当時爆発的に需要があったということだと思います。

でも、いまは、飯山のほうに需要があります。『エジプトの空の下』のような、時局的でない本も読まれているのは、飯山に個人的なファンがついていることを示しています。

市場でも、いまは飯山の本のほうが、池内の本より売れているのは間違いありません。


人びとの直接の需要や人気を表すのは、メインストリームメディアでの登場回数はなく、身銭を切る出版での本の売れ行きです。

新聞の世論調査より、実際の選挙結果のほうに庶民の本音が出るように、読書という能動的行為は、テレビなどで受動的に消費するより、著者への積極的需要を示します。

メインストリームメディアに出演する人を選ぶのは一般の人びとではありませんが、本を買ったり借りたりするのは、まさに大衆、庶民です。

大学の人事や、既成メディアの出演者は、権力者が差配できますが、「自由市場」である本の売れ行きや、図書館の貸し出しはコントロールできません。だから、そこに「真実」が現れます。

テレビやSNSで人気があっても、本が売れない、という人がいます。それは、知的な意味では信用されていない、ということです。

本が売れている人は、庶民から信用されている人、すなわち影響力ある人です。


出版文化との関係


ついでに、軍団のほかのメンバーの本の状況も、ざっと調べました。(基本、所蔵本の最新のものから3点選んで調査)


池内軍の人びと


<池内軍>有馬哲夫の本 *あまり読まれていない

『NHK受信料の研究』 新潮新書 2023。2
所蔵2 貸出1 予約0

『日米開戦1941 最後の裏面史』 八幡和郎、飯倉章と共著 宝島社 2021。11
所蔵1 貸出0 予約0

『「慰安婦」はみな合意契約をしていた』 ワック 2021.8
所蔵1 貸出0 予約0


<池内軍>篠田英朗の本 *人気がある

『戦争の地政学』 講談社現代新書 2023.3
所蔵2 貸出2 予約39

『集団的自衛権で日本は守られる』 PHP研究所 2022.12
所蔵1 貸出0 予約0

『紛争解決ってなんだろう』 ちくまプリマ―新書 2021。1
所蔵1 貸出0 予約0


<池内軍>上念司の本 *ちょっと読まれている

『何をしなくても勝手に復活する日本経済』 ビジネス社 2023.3
所蔵1 貸出1 予約3

『論破力より伝達力』 扶桑社 2022.11
所蔵1 貸出1 予約0

『日本分断計画2』 ビジネス社 2022.10
所蔵1 貸出0 予約0


<池内軍>KAZUYAの本 *読まれていない

『日常は情報戦』 扶桑社新書 2022.9
所蔵1 貸出0 予約0


<池内軍>和田政宗の本 *読まれていない

『こんなメディアや政党はもういらない』 ワック 2018.10 高山正之と共著
所蔵1 貸出0 予約0

『「嘘の新聞」と「煽るテレビ」』 育鵬社 2018.8
所蔵1 貸出0 予約0

『日本国憲法「改定」』 すばる舎 2018.3
所蔵1 貸出0 予約0


<池内軍>細谷雄一の本 *読まれている

『ウクライナ戦争と米中対立』 峯村健司らと共著 幻冬舎 2022.9
所蔵4 貸出2 予約1

『世界史としての「大東亜戦争」』 PHP研究所 2022.7
所蔵2 貸出2 予約4

『ハンドブックヨーロッパ外交史』 編著 ミネルヴァ書房 2022.4
所蔵1 貸出1 予約0


<池内軍>秋山信将

単著の所蔵なし


<池内軍>池田信夫の本 *読まれていない

『長い江戸時代のおわり-「まぐれあたりの平和」を失う日本の未来』 与那覇潤と共著 ビジネス社 2022. 8
所蔵1 貸出0 予約0

『丸山真男と戦後の国体』 白水社 2018.7
所蔵2 貸出0 予約0

『失敗の法則-日本人はなぜ同じ間違いを繰り返すのか』 KADOKAWA 2017.7
所蔵3 貸出0 予約0



飯山軍の人びと


<飯山軍>百田尚樹の本 *大人気 

『大常識』 新潮社 2023.11
所蔵1 貸出1 予約42

『橋下徹の研究』 飛鳥新社 2022.12
所蔵5 貸出5 予約39

『人間の業』 新潮選書 2022.8
所蔵3 貸出3 予約1


<飯山軍>島田洋一の本 *人気がある

『腹黒い世界の常識』 飛鳥新社 2023.7
所蔵1 貸出1 予約27

『アメリカ解体 自衛隊が単独で尖閣防衛をする日』 ビジネス社 2021.9
所蔵1 貸出1 予約0

『3年後に世界が中国を破滅させる』 ビジネス社 2020。9
所蔵2 貸出2 予約0


<飯山軍>長谷川幸洋の本 *読まれていない

『明日の日本を予測する技術』 講談社 2018.12
所蔵1 貸出0 予約0

『ケント&幸洋の大放言!』 ケント・ギルバートと共著 ビジネス社 2017.7
所蔵2 貸出0 予約0

『ジャーナリズムの現場から』 講談社現代新書 2014.8
所蔵3 貸出0 予約0


<飯山軍>高橋洋一の本 *人気がある

『中国経済崩壊宣言!』 石平と共著 ビジネス社 2023.8
所蔵2 貸出2 予約17

『円安好況を止めるな!』 扶桑社 2023.5
所蔵2 貸出2 予約15

『国民をとことん貧しくする日銀と財務省の大罪』
所蔵2 貸出2 予約18



全体として、池内軍の人は、本が売れている人が少なく、飯山軍は、売れている人が多い。やはり飯山軍が有利と思えます。

池内は、市場で飯山軍に圧倒されている状況をわかっているからこそ、激しく飯山軍を叩くのかもしれません。

ただし、池内のシンクタンクのメンバーである、若手の小泉悠などは売れています。

小泉悠の本 *読まれている

『終わらない戦争-ウクライナから見える世界の未来』 文春新書 2023.9
所蔵1 貸出1 予約10

『ウクライナ戦争』 ちくま新書 2022.12
所蔵8 貸出8 予約2

『ウクライナ戦争の200日』 文春新書 2022.9
所蔵3 貸出2 予約0


池内には、シンクタンク業務にばかりかまけてないで、売れる本を出してほしい。

そして、小泉のような、パワーのある若手の力を生かせれば、池内軍にも勝機があるでしょう。



百田尚樹は、12月20日の「月刊HANADA」YouTubeライブで、花田編集長らと、「いかに本が売れていないか」を語り合っていました。


全盛期、40万部くらいあった文芸誌が、いまでは3、4万部だとか。

日本の本の落ち込みは、諸外国とくらべても激しいです。

それは、実際に需要がある人がメインストリームメディアに登場しない、メインストリームメディアに登場する人は実際は需要がない、という「ねじれ」も一因だと思います。

だから、出版界とともに、テレビや新聞といったメインストリームも落ち込んでいる。

百田尚樹は、いくら売れる小説を書いてもメディアで評価されないから、小説を書くこと自体をやめてしまった。そういうことでは、活字の本の売り上げがふえるはずがありません(才能は有限な資源です)。

日本のメインストリームメディアは、よく「出版文化を守れ」と言うけれど、自分たちの偏向により、自分たちが出版文化の首を絞めていることに気づいていません。

池内VS飯山戦争は、そういうこともわからせてくれます。



<参考 これまでの経緯>


<日本保守党 参考>


<出版 参考>


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