出雲 幽

風花雪月と平家物語とトマス・ハーディが好き。 気分は世捨て人。 学生時代はオーケストラ…

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風花雪月と平家物語とトマス・ハーディが好き。 気分は世捨て人。 学生時代はオーケストラで楽器演奏したりもしていた。 イラストの勉強中。とりあえずハーディの詩100編翻訳する。

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記事一覧

英詩:トマス・ハーディ 『鼓手ホッジ』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 作. トマス・ハーディ 訳. 出雲 幽 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…

出雲 幽
4週間前
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英詩: トマス・ハーディ 『偶然』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 偶然 もし復讐の神が天から私に声をかけて 嘲笑うことあるとするならこうだ、「汝、惨めなもの、…

出雲 幽
1か月前
2

英詩: クラーク・アシュトン・スミス 『蜻蛉』

作. クラーク・アシュトン・スミス 訳. 出雲 幽 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 蜻蛉(とんぼ) 翠色に透き通った川辺の、 早秋…

出雲 幽
1か月前
2

英詩:クラーク・アシュトン・スミス『インディアン・サマー』

作. クラーク・アシュトン・スミス 訳. 出雲 幽 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ インディアン・サマー 定めしこの静粛な日々は…

出雲 幽
1か月前
1

英詩: トマス・ハーディ『声』 原文と拙訳と所感

作. トマス・ハーディ 翻訳. 出雲 幽 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 声 私が深く悼む女性、君はいかなるわけか、私に呼びかけ…

出雲 幽
1か月前
1

英詩: トマス・ハーディ 『遺伝』 原文と拙訳と所感

作. トマス・ハーディ 翻訳. 出雲 幽 遺伝 私こそが家族の顔つきなのですよ、 肉体が朽ち果てても、私は生き続けます、 特質と見取り図を伝えるのですよ、 時から時へと…

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1か月前
3

イヴァン・ブーニン 『芸術家(チェーホフ)』

イヴァン・ブーニン (1870-1953) 芸術家(チェーホフ) 灰色の小石がざくざくと鳴る。彼は庭園の隅まで そうして歩いてきた。彼の視線がさっと 池の水面をかすめる。彼は…

出雲 幽
1か月前
5

ジナイーダ・ギッピウスより2編の詩

ジナイーダ・ギッピウス (1869-1945) 悪魔の子供 私は悪魔の子供に出会った 体は人間の子供くらい。 痩せていて骨ばっているさまはまるで蚊、 彼の顔は鋭利で、内気で、…

出雲 幽
1か月前
6

アンネンスキーより5編の詩

インノケンティ・アンネンスキー (1855-1909) 卓越した技巧と研ぎ澄まされた内省が特徴。20世紀のロシアのモダニスト詩の潮流(象徴派、アクメイスト、未来派)に大きな影…

出雲 幽
1か月前
4
英詩:トマス・ハーディ 『鼓手ホッジ』

英詩:トマス・ハーディ 『鼓手ホッジ』

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作. トマス・ハーディ
訳. 出雲 幽
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鼓手ホッジ

鼓手のホッジを放り込む、棺もなしに
横にする—彼を見つけた時のまま。
彼のお墓の目印は小さな丘の頂きで
それは平ら草っぱ突き上がり。
異国の星座は西にゆく
彼の盛り土飛び越え幾夜にも。

若き鼓打ちホッジ

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英詩: トマス・ハーディ 『偶然』

英詩: トマス・ハーディ 『偶然』

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偶然

もし復讐の神が天から私に声をかけて
嘲笑うことあるとするならこうだ、「汝、惨めなもの、
お前の悲痛が私の愉悦であると知れ、
お前の悲恋は私の憎悪の報償であると!」

それなら私はそれを受けとめて歯を食いしばり死んでいこう、
報われることのない憤怒の感触を励みにして。
私を罰することに決め、私を涙に暮れさせてきたのは
私よ

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英詩: クラーク・アシュトン・スミス 『蜻蛉』

英詩: クラーク・アシュトン・スミス 『蜻蛉』

作. クラーク・アシュトン・スミス
訳. 出雲 幽

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蜻蛉(とんぼ)

翠色に透き通った川辺の、
早秋のある午後、
真紅の翅の蜻蛉が降り立ったのは
愛する人の白い脚の上。
そしてそれが飛び去って以来、
私がより十全に理解したのは、麗しさと
日々の儚さについて。
愛と美は己の内で輝く、
積み重なった血潮と琥珀色の枝葉が
秋の終わ

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英詩:クラーク・アシュトン・スミス『インディアン・サマー』

英詩:クラーク・アシュトン・スミス『インディアン・サマー』

作. クラーク・アシュトン・スミス
訳. 出雲 幽
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インディアン・サマー

定めしこの静粛な日々は追懐せし日々にともないしもの、
この魔道による太陽は我々がかつてその下を歩いた
太陽の呼び起こされしもの、
斯くは私が彼方の紅蓮の桃の木を
見しとき、其処には
大気の藍色が其れらへとたれ込める、
私が今日、思い知るこの愛により

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英詩: トマス・ハーディ『声』  原文と拙訳と所感

英詩: トマス・ハーディ『声』 原文と拙訳と所感

作. トマス・ハーディ
翻訳. 出雲 幽

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私が深く悼む女性、君はいかなるわけか、私に呼びかける
君が言うには今君は死に際して変わってしまった姿ではなく、
——私にはその姿が脳裏に刻まれたすべてであったが——
わたしたちの人生が美しかったあの出会いの頃の姿でいるという。

私が聞いているのは本当に君の声なのか?それなら私

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英詩: トマス・ハーディ 『遺伝』  原文と拙訳と所感

英詩: トマス・ハーディ 『遺伝』 原文と拙訳と所感

作. トマス・ハーディ
翻訳. 出雲 幽

遺伝

私こそが家族の顔つきなのですよ、
肉体が朽ち果てても、私は生き続けます、
特質と見取り図を伝えるのですよ、
時から時へと、
そして空間も飛び越えて
忘却なんて私めにかかれば。

年数を経ても相続される見目形
それは曲線に声音に瞳に宿っている、
けれど人間の一生に
幽閉されている、それが私なのです。
人間のなかの永遠なるもの、
死に拝礼することもな

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イヴァン・ブーニン 『芸術家(チェーホフ)』

イヴァン・ブーニン 『芸術家(チェーホフ)』

イヴァン・ブーニン (1870-1953)

芸術家(チェーホフ)

灰色の小石がざくざくと鳴る。彼は庭園の隅まで
そうして歩いてきた。彼の視線がさっと
池の水面をかすめる。彼は長椅子に腰をおろした。
邸宅の上方にある樹木のない峰はすぐ間近にあるようで不気味。

元気もなく気怠げに、彼のペットのツルは
暑さに気が滅入って木の茂みへと避難していく、
その足は棒きれのよう、「鳥…」彼は呟く、
「私たち

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ジナイーダ・ギッピウスより2編の詩

ジナイーダ・ギッピウスより2編の詩

ジナイーダ・ギッピウス (1869-1945)

悪魔の子供

私は悪魔の子供に出会った
体は人間の子供くらい。
痩せていて骨ばっているさまはまるで蚊、
彼の顔は鋭利で、内気で、老いている。

彼は雨の中で体を震わせていた、
彼の体毛は暗く逆立っていた。
それは痛ましい光景だった、私は不安になった
この悪魔の子が死ぬのではないのかと。

「愛して!愛して!」私の周囲一帯に声が響きわたる。
けれど声

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アンネンスキーより5編の詩

アンネンスキーより5編の詩

インノケンティ・アンネンスキー (1855-1909)

卓越した技巧と研ぎ澄まされた内省が特徴。20世紀のロシアのモダニスト詩の潮流(象徴派、アクメイスト、未来派)に大きな影響を与えた。

蝿は黒い思念のよう

蝿は黒い思念のよう、私に日がな一日つきまとう...
A.N. アプーチン (1840-1893)

不眠症と妄想によって私は疲れきっていた。
ほつれた髪は私の視界を覆っている、
私は、韻

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