出雲 幽

風花雪月と平家物語とトマス・ハーディが好き。 気分は世捨て人。 学生時代はオーケストラ…

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風花雪月と平家物語とトマス・ハーディが好き。 気分は世捨て人。 学生時代はオーケストラで楽器演奏したりもしていた。 イラストの勉強中。とりあえずハーディの詩100編翻訳する。

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英詩:トマス・ハーディ 『鼓手ホッジ』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 作. トマス・ハーディ 訳. 出雲 幽 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 鼓手ホッジ 鼓手のホッジを放り込む、棺もなしに 横にする—彼を見つけた時のまま。 彼のお墓の目印は小さな丘の頂きで それは平ら草っぱ突き上がり。 異国の星座は西にゆく 彼の盛り土飛び越え幾夜にも。 若き鼓打ちホッジは知らなんだ— ふるさとウェセックスから直行してきたもんで— ででっ広いカルーっ

    • 英詩: トマス・ハーディ 『偶然』

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 偶然 もし復讐の神が天から私に声をかけて 嘲笑うことあるとするならこうだ、「汝、惨めなもの、 お前の悲痛が私の愉悦であると知れ、 お前の悲恋は私の憎悪の報償であると!」 それなら私はそれを受けとめて歯を食いしばり死んでいこう、 報われることのない憤怒の感触を励みにして。 私を罰することに決め、私を涙に暮れさせてきたのは 私よりも強大な存在であったことに私はいくらかの安らぎを覚えよう。 けれどそうではな

      • 英詩: クラーク・アシュトン・スミス 『蜻蛉』

        作. クラーク・アシュトン・スミス 訳. 出雲 幽 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 蜻蛉(とんぼ) 翠色に透き通った川辺の、 早秋のある午後、 真紅の翅の蜻蛉が降り立ったのは 愛する人の白い脚の上。 そしてそれが飛び去って以来、 私がより十全に理解したのは、麗しさと 日々の儚さについて。 愛と美は己の内で輝く、 積み重なった血潮と琥珀色の枝葉が 秋の終わりに燃えさかるごとく。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

        • 英詩:クラーク・アシュトン・スミス『インディアン・サマー』

          作. クラーク・アシュトン・スミス 訳. 出雲 幽 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ インディアン・サマー 定めしこの静粛な日々は追懐せし日々にともないしもの、 この魔道による太陽は我々がかつてその下を歩いた 太陽の呼び起こされしもの、 斯くは私が彼方の紅蓮の桃の木を 見しとき、其処には 大気の藍色が其れらへとたれ込める、 私が今日、思い知るこの愛により 如何なわけか過ぎ去りし光輝と陰影は蘇える、 消失せし伝えることのできぬ情感と 儚く

        英詩:トマス・ハーディ 『鼓手ホッジ』

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          英詩: トマス・ハーディ『声』 原文と拙訳と所感

          作. トマス・ハーディ 翻訳. 出雲 幽 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 声 私が深く悼む女性、君はいかなるわけか、私に呼びかける 君が言うには今君は死に際して変わってしまった姿ではなく、 ——私にはその姿が脳裏に刻まれたすべてであったが—— わたしたちの人生が美しかったあの出会いの頃の姿でいるという。 私が聞いているのは本当に君の声なのか?それなら私に君の姿を見させてくれ、 君はよく突っ立っていたっけ、私が町に近づいていくと そ

          英詩: トマス・ハーディ『声』 原文と拙訳と所感

          英詩: トマス・ハーディ 『遺伝』 原文と拙訳と所感

          作. トマス・ハーディ 翻訳. 出雲 幽 遺伝 私こそが家族の顔つきなのですよ、 肉体が朽ち果てても、私は生き続けます、 特質と見取り図を伝えるのですよ、 時から時へと、 そして空間も飛び越えて 忘却なんて私めにかかれば。 年数を経ても相続される見目形 それは曲線に声音に瞳に宿っている、 けれど人間の一生に 幽閉されている、それが私なのです。 人間のなかの永遠なるもの、 死に拝礼することもなし。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Heredity I am t

          英詩: トマス・ハーディ 『遺伝』 原文と拙訳と所感

          イヴァン・ブーニン 『芸術家(チェーホフ)』

          イヴァン・ブーニン (1870-1953) 芸術家(チェーホフ) 灰色の小石がざくざくと鳴る。彼は庭園の隅まで そうして歩いてきた。彼の視線がさっと 池の水面をかすめる。彼は長椅子に腰をおろした。 邸宅の上方にある樹木のない峰はすぐ間近にあるようで不気味。 元気もなく気怠げに、彼のペットのツルは 暑さに気が滅入って木の茂みへと避難していく、 その足は棒きれのよう、「鳥…」彼は呟く、 「私たちもヴォルガの北のヤロスラブリにでも行こうか。」 彼は自分の棺が太陽と澄んだ青い

          イヴァン・ブーニン 『芸術家(チェーホフ)』

          ジナイーダ・ギッピウスより2編の詩

          ジナイーダ・ギッピウス (1869-1945) 悪魔の子供 私は悪魔の子供に出会った 体は人間の子供くらい。 痩せていて骨ばっているさまはまるで蚊、 彼の顔は鋭利で、内気で、老いている。 彼は雨の中で体を震わせていた、 彼の体毛は暗く逆立っていた。 それは痛ましい光景だった、私は不安になった この悪魔の子が死ぬのではないのかと。 「愛して!愛して!」私の周囲一帯に声が響きわたる。 けれど声の主は私からは見えないところに行ってしまった。 だが時たま私を憐れみにとらわれる

          ジナイーダ・ギッピウスより2編の詩

          アンネンスキーより5編の詩

          インノケンティ・アンネンスキー (1855-1909) 卓越した技巧と研ぎ澄まされた内省が特徴。20世紀のロシアのモダニスト詩の潮流(象徴派、アクメイスト、未来派)に大きな影響を与えた。 蝿は黒い思念のよう 蝿は黒い思念のよう、私に日がな一日つきまとう... A.N. アプーチン (1840-1893) 不眠症と妄想によって私は疲れきっていた。 ほつれた髪は私の視界を覆っている、 私は、韻文の毒によって とどめることのできない思索に耽りたいのだ。 私はそれらのもつれ

          アンネンスキーより5編の詩