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2021

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#自然

小さな森のX‘mas

小さな森のX‘mas

もみの若木に

松ぼっくりと小さな赤い実

森の枯れ葉の絨毯の上

まるで互いに寄り添うように

静かに奏でる聖夜曲

たとえ小さくても

どんなにささやかでも

大地に根ざしたその声は

きっとあなたを暖める

どうか ひととき

穏やかに 健やかに

暖かい時を過ごせますように

田舎の片隅の小さな森から

心を込めて

メリー・メリー・クリスマス

晴天好日。

晴天好日。

畑周りもすっかり片付けて

落ち葉集めも一段落したし

さして忙しくもないくせに

忙しい気分になっていて可笑しい

庭先で冷たい風に当たりながら

ふと空を見上げたら

すっかり葉を落とした木々の間に

冬の高い青空が思いのほか広い

ふうっと深呼吸しながら

いい一年を過ごせたなあと独言つ

森と畑と鳥と土と緑と赤と春夏秋冬を思い

来年もまたいい一年にと願うひととき

師走もここまで来れば

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残り色

残り色

西に傾いた弱い日差しの逆光に

散り残った紅葉を透かしてみると

それはステンドグラスのように

鮮やかな色彩のハーモニーを奏でた

雪虫がちらちらと飛び交い

ひよどりの甲高い声が響く

森を満たす冷たく乾いた空気

記憶の片隅を暖かい紅が染めて

色のない季節が深くなっていく 

晩秋の森にて -11月の星々-

晩秋の森にて -11月の星々-

書いておこうと思った。

たとえば、敷き詰められた落ち葉のほんのりとした暖かさを

たとえば、木々の年輪にくっきりと刻まれる厳しい寒さを

たとえば、冬枯れの枝に始まる新しい芽吹きを

たとえば、沈黙した森に響く陽射しが降り注ぐ音を

せめて、言葉を超えたものがあるということを

明日も覚えておくために

枝豆とビール

枝豆とビール

憂き世のうさは色々あるし 

蔓延る病も心配だけど

まあまあそんなしけた顔せずに 

さあさ、一杯やりんしゃい

獲れたて茹でたてあつあつ枝豆 

さっとひとふり粗塩振って

プチッと弾けりゃ 口中が 

濃ゆい甘味に満たされる

難しいことはわからんけれど 

手間暇かけてちゃんと世話すりゃ

畑の野菜は実ってくれる 

そんな暮らしもよかろうて

枝豆に蟷螂

枝豆に蟷螂

収穫直近の枝豆の葉の上 颯爽と構える小さな蟷螂

葉陰に隠れた獲物を見据え 鋭い鎌を中段に 

気配を消して忍び寄る

果てしなく続く除虫戦 頼もしい援軍の登場に

しばし作業の手を止めて 最敬礼でエールを送る

がんばれ カマキリ

がんばれ わたし

美味しいビールが待っている

土と光と花と蜂

土と光と花と蜂

適期を迎えたズッキーニ 毎朝黄色い花を咲かす

雄花と雌花を交わらせ 受粉できればそのあとは

ほんの数日待つだけで ボンッと大きく実が育つ

仲人役は マルハナバチ 心優しき働きもの

花弁の奥に潜り込み 花粉まみれになりながら

雄花と雌花を 行ったりきたり

人手をかけずに 受粉が完了

畑は森の延長線 自然と人の境界地

土のちから 虫のちから 太陽のちから

いろんなちからを借りながら 

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スズメの喧嘩

スズメの喧嘩

森の入り口の小鳥の食堂 常連組の野良スズメ

警戒心が意外に強く しばらくは一羽、二羽

遠慮がちに来ていたが 三羽、四羽と増えていき

ついには十羽を超える日も

密になれば喧嘩も増える 人も鳥もおんなじ道理

餌場のポジション争って ピーチクパーチク騒がしい

両翼を目一杯に広げて 尾翼をぐいっともちあげて

一人前の威嚇姿勢で 歯向かう相手にくちばしを向ける

小さく空を舞いながら 上から一

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手のひらいっぱいのくわの実

手のひらいっぱいのくわの実

遅れてやってきた梅雨の入口 畑畑にはしげる夏野菜の葉陰 

間を縫う畔道の土手沿いの木 たわわにみのる紫黒の桑

太陽をいっぱいに浴びた 野趣あふれる小さなふさ粒は 

摘めよ食べよと言いたげに 弾けんばかりの胸を張る 

よおく熟した子たちを選って

つぶさぬように そうっとそっと 手のひらいっぱい 

ふと思い浮かぶのは幼い日のふるさと

手も口も紫に染めて 夢中で食べた小学校の帰り道

都会

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森の賢者たち

森の賢者たち

木漏れびが遊ぶ森を見下ろすカフェテラス

朝食を終えた二人の賢者がしばし語らう

とつとつ語るのはこのところの異常気象か

それとも巷に蔓延り続ける流行病のことか

はたまたこのほしの未来への憂鬱か

まぁ、いずれにせよワシらには

どうにもしようのないことじゃがの

せめて、この空と緑と水と風の流れが

次の世にも引き継がれてくれればの

それ以上の望みはないわいな

さわさわと涼風がわたり

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走り梅雨

走り梅雨

あまりにも早い走り梅雨に降り込められて家の中

気になるのは畑の様子 やりかけのあれやこれや

植え付けたばかりの苗 適期を迎えた青菜たち

窓を叩く横殴りの雨 轟々と鳴る森の樹々

強い風を受け流して太い幹までもが右に左に大きくしなる

耐えかねたのか枝葉がひとかたまりドサリと落ちてくる

恵みの雨も晴耕雨読も程度の問題

まだまだ五月だ梅雨には早い

今少し皐月の澄んだ青空を

我がはらからに

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言葉の在処ー5月の星々ー

言葉の在処ー5月の星々ー

彼は本を借りに来なくなった。

気むずかしそうな顔をして

詩集や哲学や宗教の分厚い本ばかり

毎週借りに来てたのに。

ある日、森に向かう道でばったり。

来なくなった理由を尋ねたら、彼は答えた。

「探していた言葉は、本の中じゃなく、森の中にあったんです」

一本の木の苗を大切そうに抱え、満面の笑みで。

くじら雲

くじら雲

新しいクルマのCMソングの軽快なリズム

「連れてって どこまでも」とリフレイン

強い風が木々をひらりと大きく揺らして

緑の葉陰に世界がさらりと見え隠れする

わずかな隙間がさあっと広がった瞬間

突然現れたくじら雲 ふわりと浮かんで

五月の澄み渡った空を悠然と泳いでいく

流れる曲が風のように心地よく響いてる

どこにいたの どこにいくの

連れてって どこまでも

森の黒子・クロジ

森の黒子・クロジ

森の入り口に開店した小鳥のレストランは

連日たくさんの小鳥たちが訪れて

品切れ続出の人気ぶり

この度新しいお客さまが仲間入りされました

スズメ目スズメ亜目ホオジロ科ホオジロ属の

クロジくん(多分オス)です

グーグル先生によれば

警戒心が大変強く、薄暗い場所にお住まいで

なかなか出会うことのない鳥のようです

マナーのなってないスズメたちが食い散らかして

餌台の周りに落ちている雑穀

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