ヒトシ

ヒトシです。 百姓詩人です。森の古家に住み、畑を耕し、小鳥と戯れながら、田舎暮らしや自…

ヒトシ

ヒトシです。 百姓詩人です。森の古家に住み、畑を耕し、小鳥と戯れながら、田舎暮らしや自然や小さな生命の様子などをとつとつと綴っています。

マガジン

  • 2024

    2024年の作品たちです。

  • ありがとうございます

    ありがたくもわたくしのことを取り上げていただいたアーティクルを集めました。

  • 季節の星々

    140文字小説コンテスト「季節の星々」への応募作品です。

  • 2023

    2023年に投稿したものたちです。

  • 月々の星々 -Season2-

    2021年11月に再スタートした140文字小説コンテスト「月々の星々」への応募作品たちです。

最近の記事

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瑣末なものとして

心の中で自分が問う。 わたしは何者かと。 もう一人の自分が答える。 『全ては定義の問題だ』。 宇宙に対峙させるか、 社会に対峙させるか、 家族に対峙させるのか、 あるいは己らしさに対峙させるのか。 己らしさはその問い自体が自己矛盾し、 家族は個の尊重の名の下で説得力を失い、 社会は今や時代の歯車にしか興味がない。 そして宇宙の前ではほんの光の粒である。 さほど瑣末なものならば、 このひとときを尊び、 このいとなみを慈しもう。 春の陽だまりを 夏の慈雨を 秋の実りを

    • 夏草原に秋の雲

      南に開けたなだらかな丘の上 耕し手がいなくなった畠跡に 野の草が我がもの顔で跋扈する 白昼の日差しは衰えを知らず 生き物たちは息を潜めて ひたすらに宵の涼風を待つ さはさりながら、 空に広がるは秋の雲 耳に聞こえるは秋の虫 そして今宵は中秋の名月 気配はすれど 姿を見せぬ不思議の秋 さて、古人なら この違和を何と詠むだろう

      • 秋よ、こい。 早く、こい。

        酷暑さに負けて、悄気ている夏の子たちを えいやあと、勢いをつけて片付けて 心機一転、秋冬の子の支度に掛かる。 空には、未だもくもくと立ち昇る入道雲 それでも、赤とんぼの群れが掠め飛び 吾畠の片隅には、秋告花が揺れる。 秋よ、こい。 早く、こい。 誰に遠慮がいるものか。 堂々と、颯爽と、夏を追い越して。 秋よ、こい。 早く、こい。

        • さあ、新たな季節へ

          迷走台風が降らせた長雨のせいで 4日ぶりとなった朝野良の吾畠は 盛りを過ぎた夏野菜たちを尻目に 野の草が我が世の夏を謳歌して 畦と畠の間を軽々と越えてくる 圧倒的な自然の逞しさを前にして 人が作る秩序はなんと儚いことよと 苦笑いしながらただ黙々と草を刈る 道具小屋の前に溜めた雨水桶から 這い出たばかりの雨蛙が一人 まだ幼生の名残を引き摺って 分厚く重たい雲を見上げて居る きみの生命とともに吾畠も やがて秋冬野菜の季節が始まる どんな試練が待っていよ

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        瑣末なものとして

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        • 2022
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        記事

          Water melons

          ほぼ一月も続いた猛暑 夏野菜には過酷な日々も この子達には好都合 自由奔放に蔓を伸ばし 次から次へと実を結ぶ 夏バテ気味の吾畠で ひとり気を吐く元気者 粋でいなせな縞模様 今年の夏は君で決まりさ

          Water melons

          小麦粉を挽く

          猛暑の太陽をいっぱいに浴びせ 小麦がしっかり乾燥できたので 新しくあつらえた電動粉挽機を動かして 初めての小麦粉を挽く スイッチを入れ麦粒を上皿に注ぐと 上下一対の溝切石が回転し ガリガリと大きな音を立てながら 白い粉を吐き出していく 電動でこそあるけれど 粉を挽く原理はまんま昔の石臼  そんな道具の不思議さに 幼子のように心を奪われていると  みるみるうちにサラサラと 降り積もっていく滑らかな粉 麦粒を播いて、発芽を喜んで、麦踏みをして、 追肥を施して、草丈

          小麦粉を挽く

          梅漬けの土用干し

          秋が立つ日を迎えてもなお 衰えを知らない猛烈な陽射し その太陽を味方につけて 梅漬けの土用干し 琥珀に染まった漬け酢の瓶から くしゅくしゅになった梅の実を 竹笊の上にきちきちと並べ 三日と三晩 陽と風に晒す 梅雨空の下でも 暑さの盛りにも  その折々に 折々の“季節の力” を ちゃんと活かして蓄えていく 古人の知恵の深さ ありがたし ありがたし

          梅漬けの土用干し

          サツマイモの花

          昨日も猛暑、今日も猛暑、明日も猛暑 梅雨明けから途切れない猛烈な夏に うんざりとする大暑の候 連日続く水遣りと 夏草、夏虫との攻防戦に 吾も吾畠も夏負け気味 サツマイモが咲かせた見慣れない紅花は どうやら凶作の兆らしいし きゅうりもなすもピーマンも茎葉が焦げて縮こまり いつもの半分も実らずに枯れていく 順調だったトマトもカメムシの群に吸われて穴が空き 灼熱の下で実ったまま茹だる たかが三年の薄っぺらな経験値では この酷暑を乗り切る術もないが 今朝も

          サツマイモの花

          助太刀の大鎌

          梅雨明け三日が十日に伸びて 容赦なく照る灼熱の太陽の下 庭先の木陰で進める精麦作業 千歯扱にかけた麦穂を広げ 殻塵屑を吹いて飛ばして 裸麦へと仕上げていく 手を貸しに来てくれたのは 若い緑が美しいオオカマキリ 屑麦の山に颯爽と降り立って ご馳走を喰らおうと忍び寄る 不埒な小さな虫たちを 自慢の大鎌で捕まえてくれる 頼もしき若武者の勇姿に しばし手を止め頬を緩める 汗まみれの午下り

          助太刀の大鎌

          太陽の恋人

          黄色い大きな花を咲かせるズッキーニも 白い可憐な花で花蜂に人気のインゲンも ホクホク 子だくさんのジャガイモも 瑞々しさが自慢のきゅうりも  紫色が美しい茄子も ピリッと辛い唐辛子も  辛くないピーマンも 甘い甘いスイートコーンでさえ 吾畠の野菜たちはみんな思ってる トマトは夏の太陽に 一番愛された野菜だと だから一緒にお料理すると みんなトマトに染められて おいしくおいしくなるらしいよ

          太陽の恋人

          小麦色

          梅雨の晴れ間に狙いを定め 刈り干した麦の穂を脱穀す 山畠の仲間の手を借りて 昔ながらの千歯扱をまわし 粗く解した穂のかたまりを 叩いて吹いて篩にかけて やっとの思いのひと掬い 掌に乗せた小さな粒々は 正真正銘の小麦色

          梅しごとの日

          譲り受けた青梅たちを 涼風の入る窓辺に並べ 目隠しをして眠らせて しばし熟れる時を待つ やがて黄色く色付いて 強張りが少し解け始め 甘い香りがしてきたら ここ数日が仕込みごろ   梅しごとは時間の魔法 たっぷりの手間をかけ 一粒ひと粒愛でたれば 隙間を埋めた瓶の中で もう一つの時の流れが 緩やかに息をし始める いくつもの季節を重ね 折々の想いも積み重ね やがて芳醇な琥珀へと ゆっくりまろんでゆく

          梅しごとの日

          大豆、芽吹く。

          黄金に実った麦の穂を 刈り取った畝に播いた 大豆の双葉が顔を出す 小鳥に啄まれないよう 敷き詰めた枯草布団を ぐいと強く押し上げて 小さな生命の始まりに こころの底から希がう これから君に降り注ぐ 強い雨にも日照りにも 怯まず葉茎を茂らせて 花を咲かせて実を結び 大収穫の秋の日を迎え 天寿を全うせんことを

          大豆、芽吹く。

          梅雨待ちのきみ

          久しぶりの雨に潤ったインゲンの葉の上に 鮮やかな緑を纏った雨蛙 ふっくらとした躰をくるりとまるめて 彼方の空に目を送る いつになく遅い雨の季節の訪れを 念じて乞うているように 彼方の空に目を送り 静かにじっとそこに居る 入梅を過ぎ二十四節気はやがて夏に至れり

          梅雨待ちのきみ

          蟷螂生ず

          夜明けごと大輪を咲かすズッキーニの花びらの上 一丁前に身構えるのは指先ほどの小さな蟷螂 生まれたての小さな鎌ですぐ狩れるほど 世の中はそう甘くはないが 大きな蜜壺の入り口を狩場に選んだ勘の良さは 潜在能力の片鱗かもな、と 小さな生命の勇姿に笑みながら 心からのエールを送る朝野良の吾畠 七十二候は今、蟷螂生

          蟷螂生ず

          麦のとき

          気まぐれな空模様を窺いながら ようよう決めた麦刈りの日 朝からの陽光にひとまず安堵 吾畠に立って眺める黄金の穂波 緩やかな初夏の風に首を揺らす 逞しく太った株元に刈鎌を当てながら 膨よかに熟れた麦穂にほくそ笑む だんだんに積み上がってゆく麦束から 立ち登ってくるお天道様の温かな匂い 七十二候はまさに麦秋至 心を満たす収穫の喜び ああ なんと豊かなときであることよ ありがたし ありがたし

          麦のとき