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生き物からのラブレター

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私と海のほねなし(海産無脊椎動物)たちとの出会いや体験を振り返るエッセイ。
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#エッセイ

【生き物からのラブレター#0】ラブレター解読のためにエッセイを書いてみることにした

私はヒトデや海の生き物から膨大な数のラブレターを貰っているらしい。

郵便受けがもうパンパンだから、読んであげて!とある人に先日言われて驚いた。

え?どうゆうこと?

そりゃ私は海の生き物大好きだし、生き物と接することで学んだことはたくさんあるけれど・・・ラブレターはちょっとよく分からない・・・

と思っていたのだが、ピコーンと今閃いた。

私が出会ってきた海のほねなしたちのことを書いてみよう!

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コシダカウニのうんち。能登の海③【生き物からのラブレター#40】

コシダカウニのうんち。能登の海③【生き物からのラブレター#40】

いつもと違う海へ行くと、いつもと違う生き物と出会える。
これが旅行の最大の楽しみではないだろうか?

私は茨城県在住である。したがってメインフィールドはひたちなかの海。太平洋だ。今回行った石川県の能登は反対側の日本海。どんな珍しい生き物に会えるだろうとゲヘゲヘ鼻息荒くシュノーケリングで採集を始めた。

すると、一緒に採集していた夫が「こんなの採れたよー!」と1匹のウニを見せてくれた。

こ、こ、こ

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キミのともだち、アオウミウシ。能登の海②【生き物からのラブレター#39】

キミのともだち、アオウミウシ。能登の海②【生き物からのラブレター#39】

うちの息子はぬいぐるみが大好き。

我が家には大小さまざまな動物のぬいぐるみがたくさんある。その中でも一軍に属するものたちは、息子との添い寝を許され、時には共にお出かけすることもある。

一軍の地位を確固たるものにしているものの一つが、アオウミウシの大きなぬいぐるみだ。実際のアオウミウシは5cm程度の小さな生き物だが、このぬいぐるみは60cmほどはある。“うみ”と名付けられたそのぬいぐるみは、元々

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イソスジエビのなぐさめ。能登の海①【生き物からのラブレター#38】

イソスジエビのなぐさめ。能登の海①【生き物からのラブレター#38】

友人が目の前に海がある能登の別荘を貸してくれることになった。

子供達も夏休み!小学生の子供2人がいる姉夫婦も誘って、5泊6日でそのログハウスで過ごすことになった。

穏やかで澄み切った日本海でのシュノーケリング、夜はバーベキューに花火。まさに海!夏!といった感じの充実した日々。

朝早く目覚めた5日目の朝、私はひとり海を見に家を出た。

その日はいつになく海が凪いでいて、水面は鏡のよう。薄明かり

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厳島神社は名カニスポット【生き物からのラブレター#36】

厳島神社は名カニスポット【生き物からのラブレター#36】

研究をやっていて楽しいことの一つに学会への参加がある。最新の研究内容を聴ける貴重な機会・・・という真面目な理由もある。けれど楽しい理由はもうひとつ。学会は毎年違う場所で開催されるので、プチ旅行も兼ねているのだ!

2015年の動物分類学会は広島県で開催された。せっかく広島へ来たのだから!と立ち寄ったのは、厳島神社。海の上に建つ幻想的な神社には誰もが憧れるのではないだろうか。

訪れるのは中学校の修

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イルカを見て、クジラを食う【生き物からのラブレター#33】

イルカを見て、クジラを食う【生き物からのラブレター#33】

イルカは遊び好き。これは本当だ。

私が初めて野生のイルカを見たのは、熊本県天草の海だった。

色々な海を見たい。色々な生き物を見たい。そう思っていた大学生のとき、熊本大学での公開臨海実習に参加した。

臨海実習といっても大学や先生などによってどんな実習になるかは特色が出る。熊本大学では生き物の行動生態学を専門にしている先生が多く、実習内容も生き物の行動を観察するものが多かった。

そういうわけで

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最高のカニ?【生ラブ#28】

最高のカニ?【生ラブ#28】

あなたが今まで食べたものの中で一番美味しかったものはなんですか?
私は迷うことなく、ハナサキガニ!と答えます。未だ不動のナンバーワンです。

ハナサキガニは北海道の根室周辺でしか獲れないカニで、漁獲地である根室の「花咲」という地名に由来して花咲蟹と呼ばれています。

大変おいしいカニで人気があるので稀に流通もしていますが、もちろん私が食べたのは北海道!北海道へ調査に行った際に食べさせてもらいました

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つくばのサワガニ【生ラブ#27】

つくばのサワガニ【生ラブ#27】

先日,旧筑波山郵便局へ行ってきた。今は使われていない昭和14年に建てられた古い木造の局舎だ。年に2回,友人が公開日を決めて中を見学できるようにしてくれている。

この郵便局の面白いところの1つは車では行けないところだ。つくば道と呼ばれる筑波山神社の参道に面しており、道の途中で石段になってしまう。そのため私はいつも一の鳥居まで車で来て、そこから30分ほどのプチ登山をすることにしている。

一応石段の

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小笠原でヒトデ釣り【生ラブ#26】

小笠原でヒトデ釣り【生ラブ#26】

秋も深まってきた。これからの季節は潮が大きく引くのは夜になるし、肌寒い。春夏のように海で磯遊び!とはいかないだろう。そこで釣りなんかどうだろうか?魚以外にも意外なものが釣れるかもしれない。

かくいう私は初めての海釣りでヒトデを釣った。

調査のため小笠原諸島の父島へ行った時のこと。夜は特にやることがないので、釣りでもしよう!と港へくりだした。先輩に釣り竿を借り、見よう見まねで糸をたらす。

ボニ

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ニハイチュウのこどもたち【生ラブ#25】

ニハイチュウのこどもたち【生ラブ#25】

海の生き物の実習として定番のイカの解剖.もちろん私も臨海実習でやったことがある.
イカの解剖は中学校でもやるところがあるみたいだし,私も昨年自身の勉強会で題材に取り上げた.イカは手頃な大きさで手に入りやすく,解剖にはもってこいの材料だからだ.

では似ているタコはというと,食用に流通しているミズダコ・マダコなどはとてもじゃないが大きすぎる.そして高い.学生の解剖実験に使おうというには高級すぎるのだ

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旅するアサギマダラ【生ラブ#24】

旅するアサギマダラ【生ラブ#24】

鬼滅の刃の胡蝶しのぶさんのモデルはアサギマダラらしい。特徴的な羽織の色模様。その生き様。言われてみると、妙に納得してしまった。

アサギマダラは日本全土に生息する蝶々で、チョウの中では珍しく"渡り"をすることが知られている。春には南から北へ。秋には北から南へ。山形から台湾のほうまで、約2500kmも旅した記録もあるそうだ。

先日、筑波山に登ったときにそのアサギマダラに出会うことができた。ちょうど

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ハクチョウのいる街【生ラブ#23】

ハクチョウのいる街【生ラブ#23】

菅生沼に今年もハクチョウが来たそうだ.

私が今住んでいる茨城県は日本で2番目に大きな霞ヶ浦をはじめ,前述の菅生沼など多数の沼や湖がある.ハクチョウなどの水鳥の渡来は冬の訪れを知らせてくれる嬉しいニュースだ.

しかし元々私は栃木県,それも中心地の宇都宮の出身だ.お隣の県といえども栃木県は日光の中禅寺湖など山奥に行かないと湖がない.そのため水鳥などとはあまり縁がなかった.

そんな私だが大学は新潟

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それでいいのか、シオマネキ!俺の嫁は発泡スチロール【生ラブ#22】

それでいいのか、シオマネキ!俺の嫁は発泡スチロール【生ラブ#22】

ハクセンシオマネキという生き物を知っているだろうか?
かんたんに説明すると、干潟にいる片方のハサミだけが大きいカニだ。

シオマネキという名前は、この大きなハサミを“潮を招く“ように振る行動に由来する。
また、ハクセンは“白扇“。繁殖期になるとこのカニは色が白くなる。白いハサミを扇に見立ててハクセンシオマネキというわけだ。

見た目も名前も実にシャレている。私のお気に入りの生き物の一つだ。

私が

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【生き物からのラブレター#21】ウミシダは植物じゃねぇ

【生き物からのラブレター#21】ウミシダは植物じゃねぇ

佐渡の海で初めて出会った生き物は数あれど、その中でもお気に入りなものの一つがウミシダだ.

もう名前にシダと入ってしまっているので、植物(海藻)に間違われるのも無理はない.そして見た目も名前に恥じず、本当にシダ植物の葉っぱにそっくりなのだ.葉っぱの広がり方までそっくり.植物(海藻)に間違われるのも無理はない.

それでも私は言いたい.
ウミシダは植物じゃねぇ!動物だ!
そしてウミシダの魅力を知らな

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