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コシダカウニのうんち。能登の海③【生き物からのラブレター#40】

いつもと違う海へ行くと、いつもと違う生き物と出会える。
これが旅行の最大の楽しみではないだろうか?

私は茨城県在住である。したがってメインフィールドはひたちなかの海。太平洋だ。今回行った石川県の能登は反対側の日本海。どんな珍しい生き物に会えるだろうとゲヘゲヘ鼻息荒くシュノーケリングで採集を始めた。

すると、一緒に採集していた夫が「こんなの採れたよー!」と1匹のウニを見せてくれた。

こ、こ、これは!コシダカウニじゃないかー!!!!

コシダカウニは特段珍しいウニではない。私も何度も出会ったことがある。しかし、ひたちなかの海にはいないのだ!そして実は私が最も好きなウニである。

久々の推しとの再会に私のテンションは上がりっぱなし。あ〜かわいい。

コシダカウニはなんといっても可愛い!サイズは小ぶりのひとくち饅頭くらい。そしてコシダカ(腰高)の名のとおり、他のウニよりも殻の高さがあるので、よりまん丸に近い形なのだ。コロンとしたボディがたまらない。

そして配色。渋いオレンジ色の棘にオリーブ色のライン。秋って感じのこの組み合わせがオシャレなんだよな〜。ちなみに死んで棘がとれて殻だけになってもこの配色は残るので、殻も大変美しい。

あとは管足!ウニの仲間は管足と呼ばれるニョロニョロとした透明な足を体中から出す。コシダカウニはこの管足がとっても長いのも特徴だ。体の2倍はありそうな管足を羽を広げるように四方にゆらゆら伸ばす姿はなんともうちゅくちい。

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さてさて、ではなぜマイフィールドひたちなかの海にはコシダカウニがいないかというと、南方系の種だからだ。ちなみに太平洋側だと房総半島より南に分布する。

え?でも石川って茨城より北じゃない?しかも日本海側って寒いイメージ・・・。と思う人も多いだろう。でもこれが海の面白いところ。

太平洋沿岸は南から暖かい黒潮という海流が、北から親潮という冷たい海流が流れ込む。この2つの海流がちょうどぶつかるのが茨城県のあたり。そのため暖流系と寒流系の生き物が入り混じる。ひたちなかの海は若干寒流系の生き物が多い印象だ。これはこれで大変興味深い。

一方日本海沿岸はというと、実は黒潮から枝分かれした対馬海流という暖流しか流れこまない。そのため暖かい海流は押し戻されることなくどこまでも北上する。そうすると、暖流系の生き物がけっこう北のほうまで分布するのだ。

実際私は新潟でもコシダカウニを採集したことがあるし、青森あたりでも採れるらしい。海流の影響ってすごいのね〜。

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そして採集しただけでは飽き足らず、私はコシダカウニを飼うことにした。

石川からの長旅を耐えてくれたコシダカさん。お疲れ様、酸素たっぷりのキレイな海水だよ〜♡と水槽に移した直後、白いモヤモヤを出し始めた!あ〜これは放精だわー。

海水が急に変わったのが刺激になったようだ。夏でちょうど繁殖期だったのね、キミはオスだったのね、なんて思いながら観察していたら放精はおさまった。

しかしホッとしたのも束の間、今度はなんとウンコをしはじめたのだ。ウニの肛門は殻のてっぺん、頭頂にある。それくらいは知っている。でも、実際にうんちをしているところを見るのは初めてだった。

予想外の超コロコロうんこ(笑)極小のうさぎの糞という感じ。頭のてっぺんからポロポロと黒い砂つぶのようなうんちがこぼれ落ちてゆく。

はえ〜これがウニのうんちか〜と感動する一方、放精にウンコってどんだけやりたい放題だよ!とツッコミも止まらない。つまり可愛い。

こうして私はコシダカウニのうんこを見分けられるようになった。水槽の底には順調にうんこが溜まっている。つまり、ちゃんと食べられているようだ。(コシダカウニは海藻を食べます)

どうやら夜行性のようで、夜になると菅足をゆらゆらさせながら活発に水槽の壁を登っている。時にはちぎった海藻を頭にのっけて。つまり可愛い。

飼ってみないと分からないことがあるな〜と常々感じているが、今回のコシダカウニも大発見の連続なのであった。長生きしてね!


☆生き物との出会いや体験を綴るエッセイ連載中☆

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