樽見弘紀 / Hiro Tarumi

1959年、福岡出身。元テレビの台本作家。現在、大学教員、会社役員など。ここでは40代…

樽見弘紀 / Hiro Tarumi

1959年、福岡出身。元テレビの台本作家。現在、大学教員、会社役員など。ここでは40代で発覚した緑内障に起因する「まぶしさ」や「見えにくさ」と折り合う日々の生活の面白さ、大変さを綴る。

記事一覧

路傍の夏みかん

朝の時間や夕食後、テレビを点けない、がすっかり定着した我が家では、ちょっとしたことを訊こうにも意識して大きく、はっきりとした発声でないと妻は知らんぷり。いえいえ…

ハミルトンホールに集うコロンビア大生はいまもジョニ・ミッチェルを歌うのだろうか(なら、ユーミンは誰が?)

先月30日、ニューヨーク・コロンビア大学のハミルトンホールに警察隊が突入。イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への武力攻撃に抗議する学生およそ300人が逮捕され…

毎日ちゃんとお店を開けるということ

先週水曜日は札幌・円山公園駅近くのスペイン料理屋で名物のフィデウア(パスタ版のパエリア)に舌鼓を打ちつつ、赤ワインを(僕にしては)痛飲した。旨かった。 スペイン…

ヒトは些少は詐称する(または、小池百合子さんはどう生きるか)

新学期の初日、前期・隔週で授業を持っている北大に来ている。ついこないだまでは雪に埋もれたその広大なキャンパスも根雪は9割方消えているが、今朝はまた、急に冷え込ん…

シニア割られるのは嬉しくはあるけれど

スタジオジブリの「君たちはどう生きるか」を観てきた。入場料はシニア割で1300円。一般料金の2000円からすると35%引きということになる。これは、ステータスを得て間もな…

鈴木健二さん亡くなる

元NHKアナウンサーの鈴木健二さんが3月29日、福岡市内の病院で老衰のため亡くなった。享年95歳(2024/4/3 JIJI.COM他)。 鈴木健二さんは、20代の頃、台本作家の末席に加…

薪ストーブ・マジックにご用心

北海道美唄(びばい)市の美術館「安田侃彫刻美術館アルテピアッツァ美唄」に来ている(3/25)。午後からの、今年度最後の理事会に出席するためだ。 札幌市内なら道路は凍…

小倉久寛さんにやっと会えた話

先の日曜日、南青山のバルームで音楽・朗読劇「星の王子さま」を観てきました。 「王子」は俳優の小倉久寛さん、「飛行士」は元宝塚の水夏希さん。ピアノの演奏に合わせ、…

ポルシェ乗りかインデックス乗りか

土曜日のお昼、北海学園大学で10数年前に受け持ったゼミ生のウオッチャン(旧姓ウオツさん)が夫のケンタさんと1歳半になる長男のキイチくんを連れて三鷹の我が家に遊びに…

くずきりは有り難く、くず湯は忘れ難い

熱海駅から歩いてすぐの中村屋でくずきりをいただく。中村屋さんの客となるのはこれが3回目。もちろんくずきりの本場感というか、正統性は関西(奈良や京都)にあるとは思…

パックンの「節約筋を鍛えよ」に激しく共感

ReHacQ(YouTube)で後藤達也さんとパックン(パトリック・ハーランさん)の対談を観た。新NISAスタートの時節柄、基本、インデックスファンド投資の話であって、これはこ…

3人目の和子さんが株ジョだった話

こないだ妻とふと「そういえば……」と盛り上がったのだが、僕の人生、大事な局面局面でなぜか「和子さん」という名の女性が必ずや現れる。そんな救世主のような和子さんは…

お隣りさんのライオンを襲ったチン事

札幌は円山動物園の真裏に住んでいる。動物園と我が家を隔てるものはひとむらの林しかない。ここに住まいを構えたばかりの6、7年前の夏のある夜、なんとは知れぬ獣の遠吠え…

痩せはするけど強くお勧めはしないダイエット法3選

いまそこにある危機 緑内障を悪くしてからビミョーに困っていることは少なくない。なかでも、とんと体重計に乗らなくなったのは考えものだ。もちろん、乗ろうと思えば乗れ…

お下がりのシャンデリア

三鷹市役所で確定申告に必要な証明書を貰い受けたその足で、小金井の妻の実家に立ち寄る。「実家」には両親亡きあと妻の妹が一人で暮らしてきたが、つい先日、遅い結婚を果…

ふいのユーミン祭りにご用心

そのカフェはうちのマンションからバス停ひとつ分。ドアtoドアで徒歩5分というアクセス至便の立地にある。店名の末尾に「—吉祥寺店」とあるが、いうところの「湘南・軽井…

路傍の夏みかん

路傍の夏みかん

朝の時間や夕食後、テレビを点けない、がすっかり定着した我が家では、ちょっとしたことを訊こうにも意識して大きく、はっきりとした発声でないと妻は知らんぷり。いえいえ、お互いまだ耳が遠くなるには早すぎる。大概は、妻は妻で、僕は僕で、それぞれのiPhoneとイヤホンでお気に入りのYouTubeを視聴しているせいだ。

で、けっこうな頻度で妻は眼科のお医者さんのチャンネルを観ているらしい。有り難いことに僕の

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ハミルトンホールに集うコロンビア大生はいまもジョニ・ミッチェルを歌うのだろうか(なら、ユーミンは誰が?)

ハミルトンホールに集うコロンビア大生はいまもジョニ・ミッチェルを歌うのだろうか(なら、ユーミンは誰が?)

先月30日、ニューヨーク・コロンビア大学のハミルトンホールに警察隊が突入。イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への武力攻撃に抗議する学生およそ300人が逮捕された、とテレビ報道等。

期せずして、この日「4月30日」は、1968年、コロンビア大学当局の要請によって出動した州兵や警官らによって、ベトナム戦争に激しく抗う学生らが排除されたのと同じ日。学生たちが立てこもったのも、同じハミルトンホール

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毎日ちゃんとお店を開けるということ

毎日ちゃんとお店を開けるということ

先週水曜日は札幌・円山公園駅近くのスペイン料理屋で名物のフィデウア(パスタ版のパエリア)に舌鼓を打ちつつ、赤ワインを(僕にしては)痛飲した。旨かった。

スペイン人の画家のお父さんは疾うの昔に亡くなられているが、店内に南欧の雰囲気が満ち満ちているのは、他でもない、壁を埋め尽くす「お父さん」の油絵の数々……に描かれた飄々としたラテンな人物たちのせい。

残念ながら、いまはもう改修されてフツーな感じに

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ヒトは些少は詐称する(または、小池百合子さんはどう生きるか)

ヒトは些少は詐称する(または、小池百合子さんはどう生きるか)

新学期の初日、前期・隔週で授業を持っている北大に来ている。ついこないだまでは雪に埋もれたその広大なキャンパスも根雪は9割方消えているが、今朝はまた、急に冷え込んだ。東京から着て来た,見た目重視のチェスターコートでは、まだちょっと早過ぎた感は否めない。

さて、ホッカイロ大卒……じゃなくて、「カイロ大卒」の東京都知事が「おい、小池!」とまた叩かれている。月刊文藝春秋が、小池さんの学歴詐称疑惑を暴くべ

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シニア割られるのは嬉しくはあるけれど

シニア割られるのは嬉しくはあるけれど

スタジオジブリの「君たちはどう生きるか」を観てきた。入場料はシニア割で1300円。一般料金の2000円からすると35%引きということになる。これは、ステータスを得て間もないJRの長距離料金の3割引き制度(「ジパング倶楽部」)と似たり寄ったりの割引率。いずれも子ども料金のように半額とはいかないが、さりとて1割、2割では魅力や訴求力に欠ける、ということか。

でも、そもそもなぜシニアにはシニア料金が適

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鈴木健二さん亡くなる

鈴木健二さん亡くなる

元NHKアナウンサーの鈴木健二さんが3月29日、福岡市内の病院で老衰のため亡くなった。享年95歳(2024/4/3 JIJI.COM他)。

鈴木健二さんは、20代の頃、台本作家の末席に加えていただいたNHK「クイズ面白ゼミナール」の「主任教授」(司会)であり、1988年に僕らが結婚した際は、いまはなき乃木坂のフレンチレストラン「シェ・ピエール」での結婚パーティでのメイン・スピーカーとして駆けつけ

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薪ストーブ・マジックにご用心

薪ストーブ・マジックにご用心

北海道美唄(びばい)市の美術館「安田侃彫刻美術館アルテピアッツァ美唄」に来ている(3/25)。午後からの、今年度最後の理事会に出席するためだ。

札幌市内なら道路は凍結もだいぶ緩んできていて、黒々としたアスファルトを覗かせているが、この辺りが溶け切るにはいま少し時間がかかりそう。それでも、ブロンズの「妙夢(みょうむ)」が遠くからも望めるくらいには積雪も浅くはなっている。春はすぐそこ。

この時期、

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小倉久寛さんにやっと会えた話

小倉久寛さんにやっと会えた話

先の日曜日、南青山のバルームで音楽・朗読劇「星の王子さま」を観てきました。

「王子」は俳優の小倉久寛さん、「飛行士」は元宝塚の水夏希さん。ピアノの演奏に合わせ、お二人で歌った20数曲のうちの何曲かを、いまもふと思い出しては口ずさんだりしています。あ、もちろん、歌詞もメロディーもなんちゃってですけれど。

小倉さんとは、僕がまだテレビの台本作家だった40年近くも前からの知り合いです。その頃、代々木

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ポルシェ乗りかインデックス乗りか

ポルシェ乗りかインデックス乗りか

土曜日のお昼、北海学園大学で10数年前に受け持ったゼミ生のウオッチャン(旧姓ウオツさん)が夫のケンタさんと1歳半になる長男のキイチくんを連れて三鷹の我が家に遊びに来た。

これは、どうでもいいことなのだが、「ケンタ」と「キイチ」の語感がどうにも親子逆のような気がしてならない。僕も妻もついついご主人に「キイチさん」、長男に「ケンタくん」と呼びかけてしまいそうになる……というか、実際、何度か呼びかけた

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くずきりは有り難く、くず湯は忘れ難い

くずきりは有り難く、くず湯は忘れ難い

熱海駅から歩いてすぐの中村屋でくずきりをいただく。中村屋さんの客となるのはこれが3回目。もちろんくずきりの本場感というか、正統性は関西(奈良や京都)にあるとは思うが、ここのも京都の鍵善さんのに負けないくらい旨い。

これまでの人生、くずきりそのものがテーマの旅や店巡りはただの一度もしたことはないが、旅先や住まいの近くでぶらり入った店のお品書きに「くずきり」とあれば、注文するに躊躇はない。それほどに

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パックンの「節約筋を鍛えよ」に激しく共感

パックンの「節約筋を鍛えよ」に激しく共感

ReHacQ(YouTube)で後藤達也さんとパックン(パトリック・ハーランさん)の対談を観た。新NISAスタートの時節柄、基本、インデックスファンド投資の話であって、これはこれでとても勉強になったが、なんといっても、パックンの「節約筋を鍛えよ」にはツボったし、大いに腑に落ちた。

なるほど、そもそも筋トレ全般に興味も習慣もなかったが、ましてや節約筋は一切ケアを怠って来たし、存在そのものもまるで意

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3人目の和子さんが株ジョだった話

3人目の和子さんが株ジョだった話

こないだ妻とふと「そういえば……」と盛り上がったのだが、僕の人生、大事な局面局面でなぜか「和子さん」という名の女性が必ずや現れる。そんな救世主のような和子さんは、いまのところ3人。最初に出現した和子さんは、他ならぬ自身の母なので、ここでは別格扱いとして、いずれ、またの機会にそのbig mamaぶりについてnoteしたい。

さて、いっとう最近、僕の前に現れた和子さんは、僕を株式投資の世界にいざなっ

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お隣りさんのライオンを襲ったチン事

お隣りさんのライオンを襲ったチン事

札幌は円山動物園の真裏に住んでいる。動物園と我が家を隔てるものはひとむらの林しかない。ここに住まいを構えたばかりの6、7年前の夏のある夜、なんとは知れぬ獣の遠吠えがひとつ大きく聴こえたかと思うと、これをあたかも犬笛にして、種々さまざまな動物が一斉に哭き出したのには驚いた。襲ってくるはずもないのだが、網戸一枚ではマズいとばかり、慌てて窓という窓をピシャリと閉めたのだった。

さて、お隣りの動物園の昨

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痩せはするけど強くお勧めはしないダイエット法3選

痩せはするけど強くお勧めはしないダイエット法3選

いまそこにある危機

緑内障を悪くしてからビミョーに困っていることは少なくない。なかでも、とんと体重計に乗らなくなったのは考えものだ。もちろん、乗ろうと思えば乗れる。ただ、体重計の上で直立し、目線だけ下にくれてもデジタル表示の計測値がよく読めないのである。いっそ膝小僧を抱えてヤンキー座りすれば見えるだろうが、その格好だけは——とりわけ、風呂上がりのパンイチ姿は——家人のみならず、鏡に映った自分にも

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お下がりのシャンデリア

お下がりのシャンデリア

三鷹市役所で確定申告に必要な証明書を貰い受けたその足で、小金井の妻の実家に立ち寄る。「実家」には両親亡きあと妻の妹が一人で暮らしてきたが、つい先日、遅い結婚を果たしたお相手と二人してこの土地にこの先も住み続けることを決意。いささか旧くなったうわものを完全に取り壊し、一度更地にしてから、新しいのを建てることにしたのだった。

「新しいの」はいま流行りの平屋で、窓を開放すればリビングと一続きになる広い

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ふいのユーミン祭りにご用心

ふいのユーミン祭りにご用心

そのカフェはうちのマンションからバス停ひとつ分。ドアtoドアで徒歩5分というアクセス至便の立地にある。店名の末尾に「—吉祥寺店」とあるが、いうところの「湘南・軽井沢・吉祥寺」問題。正確さに多少は気をつけないと、「おまいう」と総ツッコミを入れられそうである。いわば、僕もそのお店もグレーター吉祥寺に所在地を持つのであって、「最寄駅は吉祥寺です」は許されても、「我が家は吉祥寺です」とか「うちの店は吉祥寺

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