マガジンのカバー画像

高井宏章 雑文帳

314
徒然なるままに。案外、ええ事書いてます
運営しているクリエイター

#新潮社

「おうちにいよう」は「マンガを読もう」だ! 今こそ読みたい傑作20選

「おうちにいよう」は「マンガを読もう」だ! 今こそ読みたい傑作20選

本稿は新潮社のニュースサイト「Foresight」に掲載されたコラムを再構成したものです。編集部のご厚意で転載しています。

新型コロナウイルスの影響で、学校は長期休校、大人も在宅勤務と、誰もが自宅で過ごす時間が激増しています。生活のリズムが狂い、日々のニュースを見れば気持ちも沈む。
「コロナ疲れ」は深刻です。

でも、今、我々にとって「おうちにいよう」は、文字通り、日本と世界を救うための使命です

もっとみる
天職をみつけた「紛争地の看護師」が挑む究極の「対症療法」 白川優子氏インタビュー

天職をみつけた「紛争地の看護師」が挑む究極の「対症療法」 白川優子氏インタビュー

本稿は9月4日に新潮社フォーサイトに掲載されたインタビューです。無料全文公開をご快諾いただいた編集部のご厚意に感謝いたします。フォーサイトには連載「大人の必読マンガ案内」のほか、不定期で様々なテーマで寄稿しています。詳しくは最後のリンクをご参照ください。

「国境なき医師団(MSF)」の看護師としてシリア、イエメン、イラクなど内戦による人道危機の現場に何度も足を踏み入れた白川優子氏(45)。自身の

もっとみる
多様性がぶつかる最前線のリポート『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

多様性がぶつかる最前線のリポート『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

本稿は光文社のサイト「本がすき。」に8月21日に寄稿したレビューです。編集部のご厚意でnoteにも転載しています。

いきなり私事で恐縮だが、私は2016年から2年間、家族そろってロンドンで暮らし、娘たちはそれぞれ地元校に通った。三姉妹の次女が入ったのが、成績や素行に問題を抱える生徒が多い、「地区の底辺校」のハイスクールだった。それほど大きな事件はなかったが、生徒間の窃盗などのトラブルは日常茶飯事

もっとみる
ユーモアに殉じたリベラリスト 左翼こそ「へうげもの」に学べ!

ユーモアに殉じたリベラリスト 左翼こそ「へうげもの」に学べ!

独選「大人の必読マンガ」案内(6)
山田芳裕『へうげもの』畢生の大作という言葉がある。「代表作」ではまだ足りない、生涯に一度しか書けない、渾身の一作という言葉だ。
まだ50歳とはいえ、山田芳裕にとって、『へうげもの』(講談社、読みは「ひょうげもの」)はまさに畢生の大作だろう。

主人公は美濃の戦国武将、古田佐介(のち古田織部正重然=おりべのかみしげなり、織部助重然)。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康と

もっとみる
「よつばと!」で英語を学ぼう!

「よつばと!」で英語を学ぼう!

独選「大人の必読マンガ」案内(14)
あずまきよひこ『よつばと!』『YOTSUBA&!』私は現地の書店をのぞくことを海外旅行の楽しみの1つにしている。
欧州各国では、少し大きな書店には、たいてい日本の漫画コーナーがあった。他のコミックとは別枠で"MANGA"と表記されているケースが多い。何人か、MANGAを「原書」で読むために日本語を勉強してるという若者に会ったこともある。
今回は、この「原書」に

もっとみる
服用注意の劇薬 『イスラム教の論理』

服用注意の劇薬 『イスラム教の論理』

本稿は光文社のサイト「本がすき。」に6月18日に寄稿したレビューです。編集部のご厚意でnoteにも転載しています。

イスラム教について関心を持つ人なら、読んでおいて損はない本だ。聖典コーランとイスラム法という「土台」から導き出せるイスラム教のロジックについて、精緻な論を展開している。
特に、近代的な国民国家や西欧的価値観と「イスラム教の論理」が本質的には相いれないものだという認識を持っておくのは

もっとみる
ドロップアウトと「子どもの貧困」のリアル

ドロップアウトと「子どもの貧困」のリアル

独選「大人の必読マンガ」案内(13)
古谷実『僕といっしょ』
ネットに教育コンテンツがあふれる時代に、子どもを学校に行かせる必要があるのか。小学生YouTuberの不登校を巡って議論が巻き起こっている。
画一的で旧態依然とした日本の教育への失望もあり、賛否は割れているようだ。
一方で、日本の子どもの6~7人に1人が相対的貧困状態にあり、経済格差が教育格差につながる根深い問題への関心も高まっている。

もっとみる
天皇家という家族の実像 『天皇陛下の私生活』

天皇家という家族の実像 『天皇陛下の私生活』

本稿は光文社のサイト「本がすき。」に4月3日に寄稿したレビューです。編集部のご厚意でnoteにも転載しています。もう元号が変わったので、最後だけ少しリライトしています。

半藤一利の「日本のいちばん長い日」など、終戦の年である昭和20年(1945年)の昭和天皇と周辺の言行を記録した読み物はおびただしくある。
本書のユニークさは、その激動の1年を「観察期間」としながら、あえて天皇家という特殊なファミ

もっとみる
出版に問われる普遍テーマ「利潤と文化」 土田世紀『編集王』

出版に問われる普遍テーマ「利潤と文化」 土田世紀『編集王』

本記事は10月3日に新潮社のニュースサイト「Foresight(フォーサイト)」に掲載したコラム、独選「大人の必読マンガ」からの転載です。編集部のご厚意で、一定期間後にこちらにもアップしています。
今回は、大幅に加筆した別バージョンもあります。こちらは記録として残すため、原稿はフォーサイト掲載時のままですが、見出しや画像など一部を追加・加筆しています。

『まんが道』や『バクマン。』など、マンガ家

もっとみる
理想の上司 vs 悪魔的起業家 「パトレイバー」の魅力

理想の上司 vs 悪魔的起業家 「パトレイバー」の魅力

独選「大人の必読マンガ」案内(5)
ゆうきまさみ『機動警察パトレイバー』「理想の上司像は?」という質問に、私は定番の答えをもっている。
「パトレイバーの後藤さん」というのがそれだ。

ゆうきまさみの『機動警察パトレイバー』(小学館)は、東京を舞台とする近未来SFマンガの傑作だ。多足歩行式ロボット「レイバー」が広く普及し、急増するレイバー犯罪に対処するため、警視庁が本庁警備部内に設置した「パトロール

もっとみる
離れ業の人間賛歌「自虐の詩」

離れ業の人間賛歌「自虐の詩」

独選「大人の必読マンガ」案内(9)
業田良家『自虐の詩』お気に入りの小説やマンガが映画化されると聞くと、「やめておけばいいのに……」と思うことは少なくない。原作に対する愛着が深いほど、「汚される」という懸念が強まるからだ。

これまで、「映画化なんてムチャはよせ」と思った筆頭格は、小説ではアゴタ・クリストフの『悪童日記』、マンガでは業田良家(ごうだよしいえ)の『自虐の詩』だ。
前者は劇場に足を運ん

もっとみる
愛と自由とフロンティア

愛と自由とフロンティア

独選「大人の必読マンガ」案内(12)
幸村誠『プラネテス』史上初のブラックホールの撮影成功やJAXA(宇宙航空研究開発機構)の無人探査機「はやぶさ2」の活躍など、宇宙を巡って夢のあるエキサイティングな話題が相次いでいる。
一方、中国が月の裏側へ探査機を送りこみ、ドナルド・トランプ米大統領が宇宙軍創設や月面への有人探査を表明するといった、大国間の宇宙を巡る覇権争いにも拍車がかかりそうな気配だ。

もっとみる
Brexit迷走の謎を知る最良の教材

Brexit迷走の謎を知る最良の教材

独選「大人の必読マンガ」案内(11)
浦沢直樹 ・勝鹿北星・長崎尚志『MASTERキートン』英国・アイルランドでは、頭文字を大文字で表記する「The Troubles」という特別な言い回しがある。
日本語として定着している「トラブル」という一般名詞のイメージとは違い、この言葉には血生臭い歴史が染みついている。テロや弾圧で3000人以上の死者を出した北アイルランド問題を指す婉曲表現だからだ。

当初

もっとみる
私の一部は新潮文庫でできている

私の一部は新潮文庫でできている

縁あって、この夏から新潮社のウェブ媒体「フォーサイト」で大人向けのマンガ紹介を連載している。
硬派な媒体のなかの息抜きのようなコラムだし、単行本や雑誌を含め、新潮社にかかわる書き手のなかで、自分が末席中の末席だという自覚はある。
それでも、一連の「新潮45」の騒動のなかで、一部の作家などの同社媒体への執筆停止宣言や書店の出版物撤去のニュースに接して、「お前はどうするんだ」と自問しないわけにはいかな

もっとみる