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高井宏章 雑文帳

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徒然なるままに。案外、ええ事書いてます
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#推薦図書

そして「輪」が閉じた 『おカネの教室』新潮文庫に入ります

そして「輪」が閉じた 『おカネの教室』新潮文庫に入ります

『おカネの教室』の新潮文庫版が3月28日に出ます。
予約が今日2月15日から始まりました。
まずは恥も外聞もなく。

今すぐ、ご予約を!

「コレ、Kindleで読んだなー」という推計5万人のアナタ。
文庫版、税込み693円です。単行本より1000円以上安い。
1冊、手元に置いておいて、損はありません。
さりげなくその辺に放置すればお子さんが読むかもしれません。

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迷っている方

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あなたの「旅」に会える 田所敦嗣『スローシャッター』

あなたの「旅」に会える 田所敦嗣『スローシャッター』

旅行記は「当たり」が多いジャンルだ。
それはそうだろう。
長い旅の時間から、著者が書くに値すると感じたエッセンスだけを綴ってくれるのだから。
日常と違う光、風、音、匂いを感じて、異国の風俗や料理、水平線のはるか向こうに暮らす人々との邂逅に立ち会う。
読者は、面倒な旅の準備もなしに、ひととき旅の同伴者になれる。

田所敦嗣のデビュー作『スローシャッター』は、そんな旅行記の系譜に連なる一冊だ。
書籍版

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魅惑の「大判本」10選+α

魅惑の「大判本」10選+α

我が家のリビングのテレビの下の棚には「大判本」がそこそこ並んでいる。

ここでは大判本を「普通の本棚には収まらない大きめの本」としておく。置き場所に窮して集めてあるという事情はあるが、このスペースには普通のサイズの本も並んでいる。
ここにあるのは「ちょっと変わったお付き合い」をする本たちなのだ。

ギアチェンジのひととき

「ちょっと変わったお付き合い」とは、拾い読みだ。
ご紹介する10冊プラスア

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「投資や経済の『それ先に言ってよ!』を全部書きました」高井宏章インタビュー by 高井浩章

「投資や経済の『それ先に言ってよ!』を全部書きました」高井宏章インタビュー by 高井浩章

以前インタビューしてくれた新聞記者の高井宏章さんが本を出した。

どう見ても『おカネの教室』のパクリだ。
けしからんので呼び出したのだが、話してみたら案外エエこと言うので、剽窃は不問に付してインタビュー記事にしてあげることにした。こちらのnoteのお返しだ。

「お仕事」のはずが本気に--よくもこんな露骨なパクりのタイトルつけたね
高井宏章さん(以下、宏章)「いや、タイトル決めたのは編集者なんです

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稀有な書き手による、生涯に一冊だけ書ける本 『ウナギが故郷に帰るとき』

稀有な書き手による、生涯に一冊だけ書ける本 『ウナギが故郷に帰るとき』

どんな人でも、ある程度の年齢になれば、一冊は本が書ける。自伝だ。
退屈な自分語りに終わるか、興味深い本になるかは、その人の歩みによるだろう。
『ウナギが故郷に帰るとき』は後者のなかでも、極めてユニークな傑作だ。

謎に満ちたウナギという生物を追う人類の歴史と、著者の子ども時代のウナギ釣りの思い出が交互に差しはさまれる構成に、読者は最初戸惑うだろう。

地理としては大西洋から欧州大陸全域、時間軸はア

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地球儀から考える新冷戦 『13歳からの地政学』

地球儀から考える新冷戦 『13歳からの地政学』

最後に地球儀をじっくり見たのがいつだったか、覚えているだろうか。

私はといえば、リビングに転がる「ほぼ日のアースボール」のビーチボール版で遊ぶことはあっても、「じっくり見る」ということあまりなかった。

先日、少し空気が抜け気味だった地球儀に息を吹き込み、久しぶりに時間をかけて眺めまわした。
きっかけはロシアによるウクライナ侵攻と、田中孝幸さんのデビュー作『13歳からの地政学』を読んだことだった

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「神様」が描き切った受難と救済 手塚治虫『きりひと讃歌』

「神様」が描き切った受難と救済 手塚治虫『きりひと讃歌』

「一番のお気に入りの手塚作品はどれか」

マンガ好きならこんな話題で盛り上がったことがあるだろう。

『ブラック・ジャック』『火の鳥』『ブッダ』『どろろ』『奇子』『三つ目がとおる』『シュマリ』『ばるぼら』『アドルフに告ぐ』――。

今、本棚に並んでいる作品をざっと挙げただけでも、どれを選ぶか迷う。短編集や『人間ども集まれ!』といった異色作も捨てがたい。少し上の世代なら、『鉄腕アトム』や『ジャングル

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戦友と「神様」と2つの青春 藤子不二雄Ⓐ『まんが道』

戦友と「神様」と2つの青春 藤子不二雄Ⓐ『まんが道』

2018年夏に当コラムを始めたとき、「いつか必ず書こう」と決めた作品がいくつかあった。

その筆頭格が、藤子不二雄Ⓐの『まんが道』だ。

漫画家のバイブル私の手元にあるのは2012~13年にかけて刊行された全10巻の「決定版」だ。

小畑健、ハロルド作石、江口寿史、あらゐけいいち、島本和彦、秋本治、荒木飛呂彦……。
帯や文末の寄稿文に並ぶ漫画家の名前を見るだけで、この作品の偉大さが分かる。どの言葉

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奇妙な夢にいざなう異世界への扉 『DOORS 世界のドアをめぐる旅』

奇妙な夢にいざなう異世界への扉 『DOORS 世界のドアをめぐる旅』

我が家にはリビングの本棚に、眠気がなかなか訪れない夜なんかに、パラパラとめくるための本が十数冊、備えてある。図表が多めの歴史関連の大判本や写真集が中心で、ほとんどが1〜2ページ、長くても数ページで一区切りつくようなタイプの本だ。

最近入手したこの奇妙な写真集は、疲れがたまっているときや、ちょっと気を静めたい夜に、すっと手が伸びる不思議な魅力がある。

『DOORS 世界のドアをめぐる旅』グラフィ

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ナメクジに考えさせられる 『考えるナメクジ』

ナメクジに考えさせられる 『考えるナメクジ』

ナメクジほど、「考える」という動詞と縁遠いイメージの生物はなかなかいないだろう。
これしかない、というタイトルで、しかも看板に偽りなしの好著だ。

『考えるナメクジ』さくら舎 松尾亮太/著

苦い薬品とセットで与えると美味しいジュースを避けるようになる。
同じように薬品で条件付けすると、大好きな暗い隠れ家も「苦い思い出の場所」と記憶して、隠れるのを逡巡する。

そんな意外な学習能力・論理的思考力に

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「死ねない者」の苦悩と願望 高橋留美子『人魚の森』

「死ねない者」の苦悩と願望 高橋留美子『人魚の森』

再生医療などの発達でヒトの寿命が将来、150歳程度まで延びる可能性がささやかれる。一方でニュージーランドでは最近、国民投票で安楽死が合法化される方向となった。新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、「死」について考える機会が増えた人も多いのではないだろうか。

今回はそんな文脈のなかで、高橋留美子の傑作『人魚の森』を取りあげたい。

テーマは不老不死私ははじめ、この連作短編を『るーみっくわーるど

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「情報のたこつぼ」は作られている 大統領選の混乱と『マインドハッキング』

「情報のたこつぼ」は作られている 大統領選の混乱と『マインドハッキング』

本稿は光文社のサイト「本が好き。」に寄稿したレビューを改稿したものです。元記事「大統領選直前、必読の書」はこちら。

7日に主要メディアがバイデン氏に当確を打ち、2020年の米大統領選は一区切りついた格好だ。
「不正選挙だ」と主張し続けているトランプ氏が敗北宣言をするとは思えず、混乱はまだ続くだろう。
とはいえ、トランプ氏の訴えは根拠が弱く、州レベルですでに蹴られている。新たな証拠を示さないと法廷

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これで書けなきゃ、お手上げ 『書くのがしんどい』

これで書けなきゃ、お手上げ 『書くのがしんどい』

書名だけみると、ベストセラー『読みたいことを、書けばいい。』の著者、田中泰延さんがこぼす愚痴のようだ。田中さんはあちこちで「書くのは苦しい」と発言している。

本書はそうした泣き言ではなく、「そんなあなたが書けちゃうんです!」という帯の文句を含めてメッセージが完結する、「これから書く人」に向けたガイドブックだ。

『書くのがしんどい』PHP研究所 竹村俊助/著

文章術を説く本は何冊か目を通してい

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「語りえないもの」を描いた天才ジョージ秋山 『捨てがたき人々』

「語りえないもの」を描いた天才ジョージ秋山 『捨てがたき人々』

今回は何度か紹介しようと試みては断念してきた作品、『捨てがたき人々』(小学館、幻冬舎)を取りあげる。

ジョージ秋山『捨てがたき人々』 幻冬舎文庫

6月に入り、作者・ジョージ秋山氏が先月亡くなっていたことが明らかになった。この機会に書くしかないだろうと腹を固めた。以下、敬称略で書き進める。

書くのを諦めてきたのは、この作家の作品に正面から向き合うと、「すごい」の先につなぐ言葉が浮かんでこないか

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