星の海を漂流する、古の巨大な遺跡船。熟練の冒険者らしき老紳士の魂が、夢渡りで甲板に降り立つと。そこには雄大な山河と草原が広がっていた。 「シャルロッテ。私はここに街を作るから、その時は世話を頼むよ」 「わたちが町長でちゅ」 祖父の腕に抱かれながら、幼きシャルロッテは微笑んだ。
「パラディオンだ!」 古き伝承の、都市の守護神像。カラカラの住人たちはシャルロッテを女神の如く仰ぎ見る。 「お前がみんなと紡いだ絆が、街を守った」 クワンダも誇らしげに、相棒を見る。生意気なドヤ顔はいつも通り。後に、この街は「シャルロッテンブルク」の名で呼ばれるようになる。
「落ち着け! みんなシャルロッテを応援するんだ」 クワンダが住民に呼びかける。祈りを捧げる人々。 「オーロラヴェールでち!」 シャルロッテの身体から、ゆらめく極光が広がる。光は次第に大きくなり、やがて街全体を覆い尽くし、全ての砲弾を防いだ。 「何だよ、あの光は!?」
【告知】 #おてんば商人の大後悔時代 、もし楽しみにしていらっしゃる方がいましたらありがとうございます。 #ドラクエ3 HD-2D版の発売日も発表されましたし、11/14までに頑張ってお話を完結させることを目指します。 遊び始めたら、執筆が止まるので(笑)
砂漠の商人に扮し、隊商に加わった一行はバステトの街を目指す。 「あんたら、若いのに大変だね」 「彼らは孤児で、俺が面倒を見てる」 最年長のクワンダは、一行のパパ。遠くを見るのはシャルロッテ。 マリカとアッシュは、一緒のラクダに乗って。 「救世教徒に気をつけな。ヤバい連中さ」
ロバニエミに戻ると、二つのポータルは消えていた。 「危なかったわ。あいつら誰?」 「後で話す。それより一休みして、エルフの里へ行くのが先だ」 クワンダの提案に、頷くソルフィン。 気になるが、夜明けも近いのでマリカの魂もカラカラへ。 眠れぬシャルロッテには、おばばが付き添った。
「ぐすん、アッシュしゃん…」 「俺も、お前の爺さんも皆、通った道だ」 泣いているシャルロッテと、見守るクワンダ。 そこへ、ドアをノックする音。 「おい、お客さんだぞ」 雨の中、ゲニンが誰か連れてきた。 「オレはソルフィン・ソルザルソン。スカンジアの北、ロバニエミから来た」
「貢ぎ物に紛れ、ローマの英雄と逢瀬を果たした女王の故事ですね」 バステト城、謁見の間。 シャルロッテの奇抜な趣向に、当代の女王は微笑んだ。 「なるほど、あなた方は十字軍と違いますね」 「魔王軍やムウ国王の野望に対し、団結できれば」 オーブが守れれば十分と、アッシュは告げた。
数日後、オスマンの船がカラカラに入港した。 「おばば、敵襲か?」 「よく見るんだよ」 船上で、獅子王がシャルロッテにお土産の袋を渡している。 アッシュを勇者と認め、支援を申し出てくれたのだ。 「なんでちか、これ?」 「我が王宮で育てている花の球根だ。エウロパでも流行るぞ」
「おじいちゃんの一族は、勇者の素質がある人を代々助けてきまちた」 誰が呼んだか、勇者の酒保商人。 シャルロッテは養子だが、3代目だとか。 「荒事は、しもべのクワンダしゃんに任せるでちよ」 「誰が下僕だ」 傭兵クワンダは、シャルロッテの祖父に大きな借りがあるらしい。