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【再掲連載小説】恋愛ファンタジー小説:ユメという名の姫君の物語 第九話 雷鳴と獣医

前話

 馬をぽかぽか歩かせながら帰っていると遠くから雷鳴の音が聞こえてきた。
「急ごう。嵐になるかもしれない」
 タイガーが馬を早駆けに変える。
「アビー、もう少しでお家だからね」
 そう言って私も馬の胴を蹴って早駆けにさせる。だけど、嵐のやってくるスピードの方が早かった。強い雨に雷が光る。アビーがおびえないようにしっかりと抱きしめながら城へ戻る。戻ると途端に、お母様達がやってきた。特注のゲージーは布製だからびしょびしょだった。中のアビーはみゃうみゃう言っている。震えているようにも感じられた。
「アビー! 大丈夫? 今すぐ、暖めてあげるわ」
 私は手の中の小さな命がまた消えてしまうのではと明らかにうろたえていた。何度も撫でて抱える。
「見せて」
「タイガー?」
「俺が診るから」
「お医者様なの?」
「動物専門のね」
 少し影のある笑みを浮かべてタイガーは手を差し出した。私はアビーを乗せる。
「ああ。お母様。アビーに何かあったら」
「大丈夫ですよ。あなたの方こそ風邪を引きますよ。着替えましょう」
 お風呂に入って簡単な私服に着替える。そこへタイガーがアビーをつれてきた。なにかの入れものに入ったミルクを口にくわえて飲んでいる。
「普段はもう離乳食で大丈夫だけど、この方が栄養を取りやすいんだ。中に必要な栄養を混ぜてある。アビーはもう大丈夫だ。震えてもいないし、こんなに元気だよ。ほら。この、哺乳瓶を持って飲ませてごらん」
 アビーを哺乳瓶ごと渡されておっかなびっくりしながら、飲ませる。すごい勢いで飲んでいく。これが命の力。生きようとする自然の力なのね。さっき、生まれ変わりの話で死のことを軽く扱った自分が嫌だった。
「このアビーと君の話は別々だよ」
「え?」
「自分を責めている表情をしている。アビーはアビーでちゃんと生きていくよ。君はなにも悪くはない。それよりも気にかけていたじゃないか。優しい心の持ち主だよ」
「ありがとう。タイガー。あなたがいなかったら途方に暮れていたわ。子猫の飼い方を一から教えて」
「一からって、昔、飼っていたんじゃないの?」
「昔過ぎるわ。ちゃんとした育て方を学ばないと」
「君はいい母御になりそうだね」
 アビーと母と何が一緒なんだろう。そんな思いでタイガーを見るとタイガーは笑い出した。
「君は無意識にこの子の母であろうとしていたんだね。十分飼い主の資格を持っているよ。ちゃんと育てたいと思うその心がある限り。そしてアビーはきっと君に信じられないほど甘やかされるんだね。うらやましいよ。こんな素敵な女の子に育てられるだなんて」
「あら。アレクシス、この母では不十分ですか?」
 そこにはアレクシスのお母様、セレスト王妃が立っていた。
「は、母上。今の話をどこから」
「全部ですよ。タイガーと呼ぶほどに仲が進展したのね。これなら婚礼の準備を始められるわね」
「こ、婚礼?」
 この縁談、どこまで進んでるのー!!
 タイガーはばつの悪い表情をして許しを請う目線を送ってきたのだった。


あとがき

こっちでしたね。読まれている方は。ながーい休眠時間がありすぎたので、メインと最近読まれたものを、とあげたのですが再掲だけで見分けていて間違えました。朝活も自分では続けるけれど、記事にするのはどうかと思い始めてます。朝活、一人でするにはいいけれど仲間作ったらまたトラブル起きないかとか思って。今日読んだ本の方があまりにも共感できたのですが。これもHSPの仕業と思うと恐れ多い事をしたと思います。ただ、書かれているルーティンは私はしないことばかりでした。それなのにフォローするなんて、と縮こまってます。やっぱりエッセイの勉強として日々の記事を書こうと思います。ここまで読んで下さってありがとうございました。

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