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【再掲連載小説】恋愛ファンタジー小説:ユメという名の姫君の物語 第八話-ユメ-呼ぶ声

前話

 馬に水を飲ませていれば、急にタイガーが呼んだ。ユメ、と。振り向いて見ると、若々しくて力強い角を持った牡鹿がこちらを見ていた。何かに呼ばれているような気がする。一歩、踏み出すとさっと牡鹿は逃げていった。
 意味深な牡鹿の現れになんなのかと、考え込む。唐突に、タイガーのごめん、という声が降ってきた。
「え?」
 慌てて見るとタイガーは申し訳なさそうにしていた。
「どうしたの?」
「って、怒ったんじゃないの? ユメと呼んだから」
「いつ?」
「さっき。牡鹿を見つけて君についユメと声をかけたんだ。短いから便利だと思って。それを君は怒っていると思った。違うの?」
「違うわよ」
 平気な顔で言う私にタイガーは驚きの表情を見せる。こんな顔もするのね。
「何かに呼ばれたような気がしたの。ユメなんて呼ばれたことすら覚えていないわ。あの牡鹿は何か伝えようとしていたような気がして」
 ユメの人生に突如現れた牡鹿。まるでタイガーのようだった。無意識の世界の牡鹿はタイガーなのかもしれない。本人はつゆとも思ってないけれど。なぜ、私が「無意識」という言葉を知っているかはわからなかった。だけど心から知識が湧き出る。アニマアニムス。そんな言葉も。調べてみる必要があるわね。
「……ッテ。……シャルロッテ! どうしたんだい。さっきから黙りこくって」
「不思議な事もあるのね、と思っていただけよ。何も怒っていないし、すねてもいないわ。あなたに『ユメ』と呼ばれるのは嫌いじゃないみたい。短くて簡単だし、二人きりの時はいいわよ。ただ、人前だとみんなが真似するから嫌なの。だって。私はシャルロッテ・リンダ・ザーリア、だもの。ユメはあなたとだけの間の名前よ」
「そうなのか。なんなんだろね。あの牡鹿。君の行方不明になった猫が牡鹿として生まれ変わって出てきたのかもしれないね」
「生まれ変わり、ね。どうなのかしら。タイガー、あなたは死というものをどう捉えているの?」
「なんだい。急に真面目だね」
「ただ、生まれ変わりってそんなに簡単にあるのかしら? と思ったのよ。死んで突然ぴしゃんと何もなくなってしまうかもしれないわ。動物が違う動物に生まれ変わるの?」
「どうだろうねぇ」
 タイガーも考える。二人でうーん、と頭を悩ませていると、アビーがリードを引っ張った。
「アビー? ああ。お菓子が欲しいのね。タイガー、そこに落としたお菓子あげてもいいかしら?」
「いいよ。それはこぼれ落ちたものだからここから新しいお菓子をあげるよ。ほら。アビー。お食べ」
 タイガーが新しく猫用のお菓子を出すとみゃうみゃう言って食べる。
「可愛いわね」
「さて。そろそろ戻らないとね。陽が傾いてきた」
「ほんと。さっきまであんなにお天道様は高かったのに」
 夕闇が迫ってきていた。これ以上ここにいて馬で帰るには危ない。私は再び特注のゲージにアビーを入れると馬に飛び乗った。
「さすが」
 思わずタイガー言う。
「仕事の鬼のかたわらお転婆だったの」
「そうか。俺も似たようなもんだよ。さぁ。帰ろう」
「ええ」
 私達は王宮へ帰ったのだった。
 意味深な牡鹿の存在。それはタイガーを表してる。核心めいたその答えはどこから来たのかまったくわからなかった。


あとがき
中継つけつつ書いてます。もしかして、再掲と書いてるから一度終わってると思われているのかしら。済みません。未完です。途中で出たり入ったりしたので。一度は出ないでとどまったのですが、その相手とも揉めて結局移動とか出たり、とか。忙しいnote生活です。それが101日目。二番目に長い記録です。最長は170日。最初の頃です。いろいろな人からの嫌がらせというか暴言がきっかけで出ることになったりしてます。SNSで酷い裏切りにも遭遇しましたし。そこは完全にアカウントを消しました。ま。そういう負の話はしなくてもいいですよね。今日は異様に眠いです。パソコンであとがきを書いていると一瞬寝落ちしたり。それはよくあるのですが。しばらく時間があるので、漢検しようかと。今日は執筆に身が入りません。次は43話です。あ。「風響の守護者と見習い賢者の妹」はこれからなので、まだ未執筆でした。「星彩の運命と情熱」が先に進んで終わりません。「風響の守護者と見習い賢者の妹」も打ち合わせ済みであとは書けばいいだけ。でも何故か「星彩の運命と情熱」が進んでて。でも、今日はホントに眠い。一度パワーナップしておこう。

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