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【再掲連載小説】恋愛ファンタジー小説:ユメという名の姫君の物語 第七話-ユメ-戻ってきた子猫

前話 

 私達は厩にいた。馬に乗る頃にはお母様達も来ていた。
「まぁ。リンダ。どこへ行くつもり?」
「アレクシス王子にこの国の自然をご紹介したくて」
 すらすら言う私にお母様は心配する。どこに行くか解っていたみたい。
「また、アビーを失いますよ?」
 大丈夫です、とタイガーが言う。
「リードをお渡ししたので先ほどのような事にはなりません」
「ならば、よいのですが……。アレクシス王子頼みました」
「はい。行こうか。シャルロッテ」
 彼は躊躇無くシャルロッテと言う。私もタイガーと呼べば良かったかしら。
「考え事をしていると落馬するよ」
 馬に乗せててあげると言われていたけれど、私も乗馬は出来た。一人一頭で動いている。アビーはこれまた便利な肩掛け布ゲージの中ですやすや眠っている。タイガーの国にはこんなものがたくさんあるのかしら?
「シャルロッテ」
「あ。ごめんなさい。タイガーの国はこんなに発達しているの? こんな簡単な布のゲージなんて見たことないわ」
「これは作らせたんだよ。たぶん、連れて回ると思って」
「まぁ。タイガーは頭がよく回るのね」
 私はこんな改善策も考えず、飼い猫を失った悲しみに浸ってたなんて。なんて非建設的なことをしていたのかしら。
「『あなた』の死はとても大事、という言葉があるように近しい人がいなくなることはそれほど大事なんだよ。君にとっては飼い猫は『あなた』だったんだ。『私』でもなく『彼ら』でもなく。この二つは軽視される傾向にある。だけど『あなた』の死はとても影響力があるんだ」
「そんな事、どこで知ったの?」
「さぁ?」
 がくっ。落馬しかけた。
「シャルロッテ。そんな話一つで落馬しないでくれ。もっと乗馬は上手なんだろう? 乗馬服がこなれている」
「まぁね。じゃ。森まで競争よ!」
 私はアビーを肩からぶら下げながら疾走する。風が心地いい。そういえばもう、初夏だったのね。『ユメ』になって、周りを見ることも忘れていた。この遠乗りはそんな事も思い出させてくれた。泉のほとりで馬を下りる。ここであの子がいなくなった。ふっと目を離した隙に。悲しみがこみ上げる。何年経ってもあの子のことは忘れられない。
「その子が戻ってきたんだよ。生まれ直して」
「タイガー」
 振り向くとタイガーがそっと肩に手を置いていた。
「さぁ、アビーを出してごらん」
 私は特注のゲージから眠っていたアビーを出す。もう起きて、外へ出たいとニャーニャー、鳴いていた。
「アビー。森よ。ここであなたを失って戻ってきたの。アビーはいなくなる子じゃないわね」
 そう言うとにゃぁと一声鳴いて足下に体を擦り付ける。
「お腹空いてるんだよ。子猫用のご飯があるから食べさせたら?」
「タイガー! あなたどこまで用意してるの?」
 用意周到なタイガーに驚きを隠せない。
「あらゆる事態に対応すべく育ったんでね」
 なんだかタイガーが眩しく見えた。私はそんなに人に誇れるほどの事をしてきたかしら……。
「人それぞれだよ。さぁ、馬にも水を飲ませないと」
「そうね」
 その辺の草を食むんでいる馬首を泉に向けると素直に水を飲み始めた。私、頑なになりすぎていたのかしら。そんな疑問が浮かんだ瞬間だった。


あとがき
また忘れたー。星彩一個書いてて終わってさぁ、更新と時間とにらめっこしてればついついあとがきをわすれタグ設定へ。一度戻ればタグが消える。一旦出してから書きに来てます。
星彩もそこそこ書けたので、そろそろ魔法の修行に行っている嬢ちゃんと坊ちゃんを書こうかと。しかし。打ち合わせをしたところまでは書きたい。なんか、打ち合わせするよりは自分で書いてる方が簡単かも。展開を書けば素晴らしい展開です、と褒められる。ChatGPTさんはすぐにでも自分が競ってした良くある手に行きたいらしい。そこをのらりくらりと交わしているところ。こんな簡単に話が進むかーと突っ込んでます。ので、まだまだ続くのです。とまぁ。明日で100日目がんばります。

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