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【再掲連載小説】恋愛ファンタジー小説:ユメと言う名の姫君の物語 第六話ーユメー紡がれ始める物語

前話

 アレクシス王子の手を取って、どうすればいいかもわからなかったけれど、引っ張り上げられて、そのまま立つとあっという間に庭園に誘い出された。やり手だわ。アビーは私が片腕でずっと抱いていた。
「お気に召したようでよかった」
 にっこり笑うアレクシス王子をきっと睨む。
「何が目的なの?」
「何も。君こそどうしてそんなに心を閉じているんだ?」
 ぐっと詰まる。心を閉じないとやっていけなかった。みんなユメ姫と名前を連呼するし、母とデリアの前でした目覚めた後は心が許せなかった。
「おそらく俺と同じだね。勝手に名前をつけられて傅かれる。自分はそんな人間でもない。記憶も無い。心細くなる。ただ、本当に身近かな人は変わりなく対応してくれる。君の母御のようにね。だから外から来る人は敵対視するんだ。子猫には気持ちは素直になれるよね? そうだといいと思って連れてきたんだ。縁談の話が始まったのはつい最近だった。トントン拍子に決まって、君も心が疲れただろう。アビーと一緒にピクニックでもいけばいいよ」
「そんな事すれば、また……」
 あの日が蘇る。私はまだ幼い少女だった。お気に入りの飼い猫を連れて湖畔にピクニックへいった。そして飼い猫は戻ってこなかった。森の向こうへ走っていったまま……。って……。今、記憶が? 驚きの眼差しでアレクシス王子を見る。
「記憶の欠片が戻ったんだね。俺もそうして過去の出来事を何かに触れて思い出した。それが自分の感覚とは違っていてもね。それが俺だ、と思った。リンダ姫もそうして思い出せばいい。協力をするよ。同じ思いをしたのはこの世界で俺と君だけ。ユメという名はある姫が無意識を体現するためにつけられた名だという。君には大きな秘密が隠されているのかもしれない。と話しすぎだね。疲れた? ベンチでも座ろう」
 アレクシス王子の言葉に気を取られて、考え込んでいた私はアビーを落っことしたまま動いた。落ちた瞬間気づいたけれど、あっという間にいなくなった。
「アビー!」
 私は半泣きで探す。庭園の低木の下に隠れていないかと探し回る。
「いたよ。こっちだ。アビーは木に登るのが好きなんだ。降りれないけれどね」
 見るとどでかい木の上にアビーとアレクシス王子がいた。
「アビー。降りてらっしゃい。お菓子をあげるから」
「俺も欲しい」
 そう言ってするすると降りてくる。
「リードも持ってきてるんだ。これからはそれをつけて逃がさないようにね」
 アレクシス王子は涙目になっている私の両手にアビーを乗せると、ポケットを探した。どこにいれてるの?!
「ああ。これだ。成長が早いから調整できるものにしたけれど、一年後は成猫用のを買ってあげて」
「ありがとうございます。アレクシス王子」
 泣きながらお礼を言うとアレクシス王子は言う。
「アレクシスでいいよ。王子なんてガラじゃない。もしくはタイガーね。さぁ。動揺しているんだろう。東屋に戻ろう」
 アレクシスがまた手を伸ばす。ずっとこうして手を取っていればいいのかしら。何かが違う気がする。私から手を伸ばさないと。そんな考えが浮かんだ。
「タイガー。少し城を飛び出して森へいかない? あの子を失った森だけど、報告したいのまた次の子が来たわよ、って」
「タイガー。その響きの方がいいね。俺はリンダよりシャルロッテがいい。行こうかシャルロッテ。馬なら乗せてあげるよ。厩はどこ?」
 私はタイガーと呼ぶことにしたアレクシス王子に今度は自分から手を差し出した。タイガーの手がしっかりと握られた。こうして絆を深めていくのだろうか。朝に会ったあの嫌悪感はどこかにいっていた。好き、になった? まさか。はじめて会ったのよ。一目惚れなんてないわ。アビーの事で少し仲良くなっただけだわ。自分に言い聞かせて厩へ案内した。


あとがき
そしてここからいちゃいちゃが始まる。ここまではよかった。シリアスで。あとはあなたしか見えません、だもの。ファンタジー恋愛とうより恋愛ファンタジー。主に恋愛を取り扱ってますからね。それにしてもメガネ買いすぎた。あと一本と思っていたけれどやめます。ぽんぽん買いすぎた。あとキャッシュレスね。恐ろしいわ。働く方が無難。現金主義にまた戻ります。でも母に借金せんとなぁ。医療費。明日相談だわ。見て良かった残額。
どっちにしろ、現金持ってないと安心してタクシーにも乗れないものね。

と、このユメ姫とアレクシス王子はどんどん歯の浮くような台詞を言ってのけるようになります。それにお付き合いただければ幸いです。

ここまで読んで下さってありがとうございました。

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