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【再掲載小説】恋愛ファンタジー小説:ユメと言う名の姫君の物語 第二十一話-ユメ-決意する

前話

「決めたわ」
 私は強い視線でタイガーを見た。タイガーはただ黙っている。私の口から出る言葉をもう知っているような気がした。
「あなたと結婚するわ。仮の夫婦であっても。私はセレスト様を癒やしたい。子供を失うのは母にとっては耐えがたい苦しみ。その穴を埋められるならなんでもするわ。たとえタイガーに愛がなくても」
 そう言ってからふいに視線を落とした。タイガーの視線を正視できなかった。結婚しないと決めている二人の片方が結婚すると言い出したんだもの。契約不履行で怒られてもしかたない。
 じっと自分の組んだ手を見つめる。
「ロッテ。いや、シャルロッテ。君はそれでいいんだね。だけど、君はユメ姫としてこの国に輿入れすることになる。ユメは嫌な人物像じゃなかったのかい?」
「『ユメ』ももう一人の私、とあのサクラは言ったわ。ユメという名前に囚われていたのは私だけ。中身は変わらないわ。シャルロッテでもユメでも私は私。あのサクラに触れるだけわかったわ」
 はぁ、とため息と着いてタイガーは額に手を当てる。
「君にサクラを見せるんじゃなかった。サクラとつながっているんだね。ユメとして。意思疎通が図れるとは思わなかったよ。これで正真正銘の『ユメ』姫と確定されたよ。君はシャルロッテの名前を捨てることになる。俺は、ロッテの方が好きだけど。そうだね、二人きりの時はロッテと呼ぶよ」
「二人きり! タイガー?」
 びっくりして顔を上げる。
「負けたよ。俺もロッテぐらいの聡明な姫でないと嫌だからね。母のことだけで嫁ぐなんて言う姫はこの世のどこにもいないよ。その強さと優しさに誓って君を幸せにするよ。俺のロッテ」
 二人の距離が近づく。だけど、タイガーは致命的なミスをした。アビーがふぎゃぁ、と叫んだ。タイガーは間違ってアビーの尻尾を踏んで、かみつかれた。
「アビー!」
 二人で抗議の声を上げるけれどアビーは一睨みすると自分のベットにしているクッションの上で丸まった。
「もう一回、最初からし直す?」
 私は苦笑いしてタイガーを見る。いや、とタイガーも苦笑いだ。
「少なくとも意思は通じた。この続きは恋人としてデートするときか婚礼の日にね。君も元気なようだし、庭園を散歩しようか。アビー、散歩するよ」
 散歩と聞いてアビーの耳がぴん、とする。
「尻尾を踏まれても散歩はしたいのね」
 また木登りでもされると困るので、リードをつける。
「リードは俺が持って入り口で待ってるよ。その室内着ではまた風邪を引く。暖かい格好をしておいで」
 そうして急に「ちゅー」と言って額に口づける。そしていきなり出て行った。私は額に手をやる。あの独特な感触が残っている。私は恋をしてるの? 不意に湧き上がった思いに思考が停止する。だけど、それを頭から追い出すと外出用の服を着替えたのだった。
 恋、なんてその間はわからないものだよ。
 テラスのサクラがそう言っている気がした。


あとがき
二千年の恋人2編集していて長さに呆然。四万字。半分に分けたいと思ってもまだ既定ページに来ていない。長い。当時は四万字はほしかったけれど、一気読みには四万字は多い。章立てしてるのでいちいち読みながら進めてとってもやりいくい。ばっとまとめて出せれば良いけれど、表紙が……。ティアラも姫君もない。素材はあるけれど。とりあえず、目の前の事から始めます。ぶっ倒れもなんとかマシになってきました。母がしんどさから不機嫌で困る。おかげで家事をさせられた。とはいいつついいよーと愛想良く申し出てのこと。うつの気があると言ってましたが、だったら病院へ行けーです。診察受けずに治るわけがない。ほんと困った母です。というところで今日の更新はここまでです。これから二人はイチャイチャするわけです。なので恋愛ファンタジー小説。決してファンタジー恋愛小説ではないのです。まぁ、お楽しみください。溺愛かどうかはわかりませんが。阪神戦見とれてしまったー。解説をよく聞くようになって。おかげでバックミュージックでなくなった。ま、とにかく作業に移ります。あ。血糖値忘れた。急ぎます!

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