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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:ユメという名の姫君の物語 第一話-ユメ-目覚め

「姫様! 姫様! もうお昼近くですよ。いい加減起きてくださいませ」
「ん? ひめ・・・? 私が?」
 起きるとそこは豪華絢爛な部屋だった。
「あのう・・・」
 非常に申し訳ないけれど、遅まきながら言う。
「私、誰ですか?」
「姫様ー!!」
 どうやらへんてこりんな所にいるらしい。お付きの人が絶叫していた。
「お前は本当に名前も誰かもわからぬのか?」
 目の前の国王様らしき人が確認する。本当に、にアクセントをつけて。
「はい。自分の名前も、どこの誰かもさっぱり・・・」
 自分が解らないことほど不安なものはない。さっさと名前を教えてほしいもんだわ。
 国王様はそこでにっこり、と笑った。嫌な予感がする。
「それでよいのだ。そなたは今日からユメと名乗るがよい。我が王家の王女として。さっそく向こうに連絡しよう」
「向こう?」
「そなたはまだ知らないで良いのだ。ユメ、か。そうか。ユメか・・・」
 国王様はにっこりと喜びの笑顔を浮かべて去って行く。まだ、ここは姫の住まいらしい。上の姉君は全員、嫁に行き、残った乙女の宮を自由に使えるようになっている、とさっきの絶叫したオバさんが言っていた。
 オバさん、じゃ、悪いわよね。名前ぐらい聞こう。
「すみませーん。オバ・・・じゃなかった。お世話してくれている方ー」
「はいはい。今日からユメ様ですね。私はデリア・シュナーベルと申します。長年姫様のお世話をしてきた者です。ですが、今日から姫様はユメ姫さまとなられました。おめでとうございます」
「おめでとう、って? えーっと」
「デリア、です。姫様」
「そう。そのデリアさん。私、起きる前の記憶が全くないんだけど」
「それがユメ様となられた証拠です。この地で生活したことをすべて忘れた姫がユメ様となり、アレクシア・タイガー・ランカスター様の婚約者とおなりになったのです」
「こ・・・こん・・・約者?」
「はい」
 デリアはにこにこだ。何がそんなに嬉しいんだろうか。それより婚約者って??
「私、結婚するのー!?」
 今度は私の絶叫が乙女の宮を通り過ぎていった。
「ちょっと、まって。私、さっきから記憶喪失なのに、結婚って?」
 デリアの肩をぶんぶん揺さぶる。
「姫様は『それ』と伝えられる姫様なのです。記憶が消え、新しい生が始まると姫様は『ユメ様』とおなりとなり、同じく、記憶を失って『ウルガー』様におなりになった方、アレクシア様との縁談が進むのでございます。これは長い間この両王家に伝わってきた伝説。現と夢を行き来する物語師の血筋が再び回復するのでございます」
「何? 物語師って」
 その言葉に胸の奥がざわざわしていた。ウルガー、その名前にときめきすら覚える。まるで自分が自分でないように感じられて私は怖くて不安になった。
「ご気分が優れませんか? 何時もの気持ちを落ち着けるハーブティーをお持ちします」
 デリアがいなくなった部屋を見回しても何もわからなかった。そこへ中年のご婦人が入ってこられた。
「シャルロッテ・・・いえ、ユメ。目覚めたのね」
 そう言ってその方は私を抱きしめる。懐かしい記憶が浮かびそうで消えていく。
「大丈夫。ユメとなっても母は母ですよ。安心なさい」
 暖かな言葉に緊張の糸が切れる。涙がぽろぽろ流れる。私は不安な心を洗い流すかのように泣いた。


あとがき
これも出してきました。45話まであるのですが、その後の話を覚えていません。かれこれ一ヶ月以上書いてませんからね。いや、もっとか。半年ぐらい空いていたような。
ユメも「降下現象」を使ってます。「訳あり姫君になっていました」のユメという名前をつけられた話から派生した物語で、「訳あり」の後続作品でしたが、フライングスタートしてて、本人もどこに行き着くかわからない代物です。ただ、ユングの用語も出てきます。
シンボルとか。アニマアニムスを地でいってるような。続きどうしたら、という所です。Kindleで心理学のエッセイを読みあさるしかない。学術本では閃かない場合が多く、河合隼雄先生のエッセイが大変役に立ちます。もう亡くなられていて一度で良いから夢分析をしたかった。ま。私にはフォーカシングがあるけれど。

これはめでたく結婚しそうです。でも政治の転換期だったり、設定が込み入ってます。嫁入りして向こうの国でなにするの? と言う点も不明瞭ですし。サクラ守というのはあるんですが。今は載せながらストーリーを追いかけるしかありません。これも大量に流していたのですが、今回は一話ずつです。合間にお読み下さい。

ここまで読んで下さってありがとうございました。

日付が変わるまでに寝ます。

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