見出し画像

【再掲載小説】恋愛ファンタジー小説:ユメと言う名の姫君の物語 第十四話-ユメ-使者の到来

前話

 通話機で話した数日後、タイガーの国の使者がやって来た。親書をお父様に手渡す。内容を読んでさらににっこりと笑う。こういうときの笑顔は危ないわ。
「ユメ。旅に出てみぬか? タイガー王子がサクラという花を姫に見せたいと所望しておる。この際、国の外交を知るのにもいい機会だ。行って見るか?」
 みるか、じゃなくて行け、でしょ。文句を言いたいけれど、サクラは見てみたい。見頃を迎えているのだろう。あの薄紅色の花は妙に郷愁を引く物があった。私はあの国で生まれたことがあるのかしら。
「ユメ・・・。どうだ?」
 お父様の声ではっと我に返る。
「そうですね。リハビリついでに行ってきます。嫁ぎ先を先に見ておくのも必要でしょう」
 昔は顔も知らない相手に嫁ぐ事もあった、と歴史書にあった。そんな時代の姫に比べれば優しい世界よ。事前に対策が取れるんだから。
「では、しばしお時間を頂けますか? タイガー王子に言われて旅の準備はできています。荷物を取ってきますので、少々お待ちを」
 すっ、と文句も言わず行こうとするとお父様の慌てた声が追ってきた。やれやれ、娘が可愛いお父様としてはさっさと行かせたくないのね。かといって行ってはいかぬとはいえないようで……。ちぐはぐな立場のお父様に少し同情する。するとお母様がやって来た。
「タイガー王子の使者様が来られたとか。ユメ。今日は労をねぎらって出立は明日になさい」
「そ、そうだ。来た途端帰るのはお疲れだろう。ひと晩、お休み頂いてはどうだ?」
 振り向いてにっこり笑う。
「わかりましたわ。私としたことが、使者様のお疲れを忘れていただなんて。出立は明日以降にします。どうかお休みください。夕食は国の料理長が贅をこらしてくれることでしょう。さぁ、お母様、準備に行きましょう。向こうの王妃様へのお土産を選ぶのを手伝ってくださいな」
「はいはい」
 お母様はこのちぐはぐな親子劇場に笑いをこらえている。私ももう少しで吹き出しそうになっていた。国王謁見の間をさっさと出る。
 出た途端、お母様と私は小さく声を出して笑う。
「お父様、可哀想なお立場ね」
「ほんとに。あの人ったら、見栄ははりたい。でも、行かせたくはない。婚礼も何かにつけて先延ばしするんじゃないかしら」
「それは喜ばしい知らせね。タイガー王子ともいつもそう話しているのよ。このおかしな婚礼を先延ばしして楽しもうって言ってるの」
「タイガー王子もあなたもどっちもどっちね。お似合いよ」
 お母様がにっこり笑って手を取る。お母様も私が嫁ぐ事は少々寂しいらしい。
「お母様、寂しく思ってる場合ではなくてよ。もう一度、お母様の目で荷物を確かめて。私一人で準備したけれど、少々、これでいいのかしら、と思うところもあるの」
「いいですよ。さぁ。乙女の宮に戻りましょう。お父様も使者様を部屋に押し込んでさっさと来ますよ」
「たぶん、お母様の読みは当たってるわ。ほら。もう声がやって来た」
 二人でくすり、と笑うと後ろを振り返る。お父様がゆさゆさ体を揺らして走ってきていた。
「お父様もお土産を考えて。仮にも国王陛下でしょ?」
「ああ。まさかせなさい。父が見事な土産を用意しよう」
 どんと、胸を叩いてむせる喜劇役者のような父に少し愛着が沸いた日の事だった。


あとがき
訳あり、まとめてあるヤツ載せようかと考えて最後のストックに置いておくことにしました。最後の更新もめちゃくちゃ遠いし。記憶に残ってないかも。風響も星彩も50話書いてました。風響は寄り道の一話を書いたところです。次の一手をどうするか考えていて一応ワンシーンはあるんですが、神殿の設定がまだで。トラップやら考えないと。ユレーネの心の事もあるし。氷の声って何だろうなあ、と考えている所です。星彩はもう到達していて次の一手に移るところでした。蒼の記憶の封印を解いてもらうところまで来ています。次話がそれになるのかしら。しかし、セレスがばたばた動く。ドラゴンに振り回されている書き手です。ドラゴン食が先かも。ドラゴンって何食べるんでしょ。ヘビは凍ったハムスターです。悲しい事に。恐ろしくて見たくもない。でもトカゲは可愛かった。母が悲鳴上げましたが。そう言うと。たぶん、コオロギ。小動物コーナーは魅力的です。ですが、管理がきちんとできないので諦めています。ウサギ欲しいけれど。臭いからダメ! と言われています。もうそう言う父はいませんが、母が禁止令を出すでしょう。魚だけであれだけ言われるから。ハムちゃんは不憫になるのでもう飼いません。こんないい加減な飼い主のところには来ない方がいい。つくづく思います。今なら、お世話もやりかた熟知してますが。二歳になるととたんに毎日注射しないといけないのでムリなんです。加齢からくる脱水であっという間になくなる。毎日通ってました。一時。今は車もないので専門の病院にも通えません。ので、余計飼えません。亡くなっても花壇に埋められないし。当時は知らず埋めていましたが、外来生物なのでしてはいけないそうです。魚も然り。処理という方法になります。動物霊園にも行けないし。ウサギなら行きますが。それもタクシー使って。なんぼかかるかわかりません。と、なぜか小動物の話になったあとがきでした。当分、ストック作ります。オリジナルは。いや、再掲載もオリジナルだけど。新作オリジナル、ですね。まんべんなくローテション組んで書いてます。煌星も始めます。執筆。手帳には星、風、緑、煌と書いて己を急かしています。あ。陽だまりの提出もしないと行けなかったんだ。小さな旅人シリーズの作者は私でした。名前が似通ってるからバレると思いますが。オラクルカードの物語です。それではここまで読んで下さってありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?