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フィンランド・ヴァーサ周辺の旅--フィンランドのスウェーデン語と日本庭園

2023年8月上旬にフィンランドを旅行してきた。 翌朝8時、ウメオ到着。そして12:00、船に乗ってフィンランドへ! 4時間の船旅のあと、着いたのはフィンランドのヴァーサ(Vaasa)。 1)フィンランドのスウェーデン語の発音 ヴァーサ周辺はフィンランドでスウェーデン語話者の多い地域。 実は同様の別の地域に行ったことがあり、その時は「それほどスウェーデン語は通じないな」と思ったので、ヴァーサもそうかと思いきや。 通じます、通じます! 若い人でも普通にスウェーデン語を話

    • 北欧発の脳科学本が続々と

      ここ数年、スウェーデンでは脳科学が大流行しています。なぜかというと(私見ですが)、まず第一にストレスで燃え尽き、うつなどの精神的不健康が激増していること。特にデジタル系はその弊害がやっと部分的に分かってきた状態で、よく知りたいと思うのは当然の心理でしょう。 「科学」がこれだけ注目を集めるもう1つの理由は、コロナ禍にもあると思います。感情的な意見や噂が飛び交うなか、公衆衛生局の主席疫学官(当時)アンデシュ・テグネルが、どれほど国内外から批判を浴びても科学的根拠に基づいた姿勢を

      • ソフィ・フォン・フェルセンと彼女の過ごしたロフスタッド城

         皆さんはフランス王妃マリー・アントワネットの愛人と言われる、アクセル・フォン・フェルセンに妹がいたのはご存じでしょうか? 彼女の名前はソフィ・フォン・フェルセン。アクセルがマリー・アントワネットの他に心から愛した女性がいたとすれば、このソフィでしょう。私はこの夏、スウェーデンのノルチェーピングにあるロフスタッド城を訪れました。ロフスタッド城はソフィ・フォン・フェルセンが晩年を過ごした城なのです。  今回のNoteでは、ソフィ・フォン・フェルセンをご紹介したいと思います。ソ

        • フィンランドの旗日は平日にもあります~国旗掲揚の日いろいろ~

          この記事公開を公開日する8月9日は、日本では長崎の原爆忌(長崎原爆の日)です。平和への祈りと、戦争が無くなることを願う日の一つ。その8月9日、フィンランドでは、『トーヴェ・ヤンソンの日 フィンランド芸術(アート)の日』と定められ国旗掲揚が推奨されています。この日が「トーヴェ・ヤンソンの日」と言われるようになったのは、8月9日がヤンソンの誕生日だったため。トーヴェ・ヤンソンの誕生日を記念日にするにあたり、絵・イラストだけでなく文学作品も手がけ広く芸術分野で活躍したヤンソンにちな

        フィンランド・ヴァーサ周辺の旅--フィンランドのスウェーデン語と日本庭園

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        • 未邦訳書で描く北欧社会~ダイバーシティ(多様性)
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        • 北欧文学サロン
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          訳書刊行イベントはやるべき?――翻訳者の悩み

          皆プレゼンが怖い  先週の土曜日(2023年7月8日)に、銀座ナルニア国さんで『デジタルおしゃぶりを外せない子どもたち』の講演会を開いていただきました。   参加者には子どものデジタル中毒に危機感を持っている方、強い関心をお持ちの方が多く、そういう方々と直接対話をし、ご意見をうかがえて本当によかったです。参加してくださった皆様、また銀座ナルニア国様にお礼申し上げます。  講演会のお話をいただいたのは、私が立ち上げた出版社子ども時代の代表(1人出版社ですので)として、銀座

          訳書刊行イベントはやるべき?――翻訳者の悩み

          2022年 フィンランドの図書館貸し出しランキング(カテゴリ別)

          さてフィンランドは6月のはじめに学校が夏休みに入りました。そして夏至の頃から多くの大人も夏休みに入り、サマーコテージに行く人も増え、町中は閑散としているところも…。 夏と言えば、フィンランドの書店ではミステリなど肩肘張らずに読めるものが多く売り出される季節で、ゆったり休み期間中に気楽に読書を楽しむ人が多いようです。 新刊書店、または古書店で買う手もありますが、なにせフィンランドやデンマークは国民一人当たり図書貸出し数でトップを入れ替わり争う国。   という訳で、今回は昨年

          2022年 フィンランドの図書館貸し出しランキング(カテゴリ別)

          EUフィルムデーズの季節到来!

           さて、今年もEUフィルムデーズの季節がやってきました。開催20周年を迎え、会場も4箇所に増えており、毎年楽しみにしているフィルムデーズファンとしては喜ばしい限りです。  北欧諸国からは、以前にnoteで取り上げたことのあるスウェーデンの作品『タイガーズ サンシーロの陰で(原題:Tigrar)』のほか、フィンランド『ブラインドマン』、デンマーク『MISS OSAKA / ミス・オオサカ』が上映されます。  東京会場の開催2日目に『タイガーズ』を鑑賞してきましたが、前評判に

          EUフィルムデーズの季節到来!

          アイスランドの地獄のひとつ

           アイスランドの「地獄」と言われれば、何を思い浮かべるだろうか。ヘクラ(Hekla)という火山に地獄への入口があるのだと、17世紀のとあるイタリアの修道士のように大真面目に話す人がいたら、きっと観光ガイドか何かだろう。  アイスランドに地獄の入り口があると信じている人は、おそらく現代には(ほとんど)いないだろうが、いつからか「地獄」と呼ばれる場所は、アイスランドに複数存在する。ヴィーティ(Víti)という地名の付いているところなのだが、単に「ヴィーティ」という名前の場所が2

          アイスランドの地獄のひとつ

          『よるくまシュッカ』ぬり絵コンテスト開催中

           こんにちは。私は翻訳者の中村冬美と申します。 私は2021年から『よるくまシュッカ』というねんね絵本のシリーズを翻訳しています。 シュッカという名前のくまが、子どもたちを抱っこして星の森へ連れていくという内容のお話です。  2021年にはシリーズの最初の4作を翻訳させていただきました。百万年書房という版元さんから出版されています。 『よるくまシュッカ』 『よるくまシュッカ ミニ』 『よるくまシュッカ と ゆきのおふとん』 『よるくまシュッカ と ゆきのおふとん ミニ』

          『よるくまシュッカ』ぬり絵コンテスト開催中

          うちの北欧関係の本を掘り出してきました 

          家にある北欧関係の本を出してみたら、積読も含めてたくさんありました。翻訳書が多いですが、これはすごいことです。北欧語から直接翻訳できる翻訳者の方たちが出てきたのはここ20年ほどのことではないでしょうか。それまでは英語からの重訳が多く、二重の訳によるずれもあり、またミステリーは英訳されるときにかなり削られる傾向にありました。原語から直接訳されたものを読めるようになったことはとても嬉しいことです。北欧語書籍翻訳者の会と関係ある本を中心にながめてみます。 フィンランド 北欧は国

          うちの北欧関係の本を掘り出してきました 

          スニッパ裁判――スラングがわからないからと国語辞典に当たった裁判官たち

           2023年2月23日にスウェーデンの高等裁判所が出した判決が波紋を呼んだ。10歳の少女をレイプしたとして一審で有罪判決を受けた男性が、二審で無罪になったのだ。その理由は、被害者である少女が使った言葉「スニッパ」だった。少女は、男性が「下着の中に手を入れ、さらにスニッパの中に指を入れた」と証言している。しかし高裁の裁判官たちは「スニッパの意味がわからない」と言い、国語辞典(SO)に当たった。そこには「女性器の“外側”を意味する俗語」と書かれており、したがって「容疑者である男性

          スニッパ裁判――スラングがわからないからと国語辞典に当たった裁判官たち

          タイタニック号に乗っていたスウェーデン人たち

          前回のブログで藤野さんがタイタニック号の話を取り上げていらっしゃいました。タイタニック号に乗船していたスウェーデン人の話はわたしも興味があるので、勝手にバトンを受け取ってみます。 当時は多くのスウェーデン人がアメリカに移住し、わたしも知り合いから祖先がアメリカに移住したという話、あるいはアメリカに移住したけれど結局スウェーデンに戻ってきたという話を聞いたことがあります。 昨今の難民問題でも、難民を多く受け入れすぎだという意見に対して、”かつてスウェーデン人がどれだけ他国に

          タイタニック号に乗っていたスウェーデン人たち

          25年ぶりに映画館でタイタニックを観た話

          先日、公開25周年で『タイタニック』の3Dリマスター版が上映されていたので鑑賞してきました。 映画『タイタニック』とは 映画史に残る大ヒット作なので改めて説明するまでもないかもしれませんが、念のため概要をおさらいしておきましょう。 映画『タイタニック』は、1912年に実際に起きた豪華客船タイタニック号沈没事故をベースに、画家志望の青年ジャック(レオナルド・ディカプリオ)と上流階級の令嬢ローズ(ケイト・ウィンスレット)の身分違いのラブストーリーを描いた物語です。 公開当

          25年ぶりに映画館でタイタニックを観た話

          作家ミカエル・ヴィアンデル氏へのインタビュー

           今年の1月25日、私は東京にいらしたスウェーデンで大人気の児童文学作家、ミカエル・ヴィアンデル(Michael Wiander)さんにお会いしました。   ヴィアンデルさんは、『デクステル・オルソンの冒険』というスウェーデンで小学生に大人気のシリーズを書いてらっしゃいます。  この本は、主人公の小学生デスクテルが発明家のお祖父さんと一緒にコストロフという敵を相手に戦い、世界中を旅する冒険物語です。日本では残念ながらまだ出版されていません。  ヴィアンデルさんは、今人気の

          作家ミカエル・ヴィアンデル氏へのインタビュー

          日本語で綴るアイスランド語の音声

           アイスランド語と言ったとき、中世北欧の諸々に興味があれば、きっとエッダやサガが書き残された中世アイスランド語――古アイスランド語とも呼ばれる――を真っ先に思い浮かべるだろう。もし特別の関心を寄せていないのであれば、アイスランド語を学ぼうという意気込みは、きっと19世紀にほぼ現在のかたちに整えられて出来たアイスランド語――現代アイスランド語と呼ぶことにする――に向くにちがいない。  ある言語の歴史について仔細に話そうとすれば、いつまでも話題は尽きることない。そもそも何をもっ

          日本語で綴るアイスランド語の音声

          北欧発、自然をテーマにした本

           北欧語翻訳者の枇谷玲子です。私は翻訳者として活動しはじめた当初、特に絵本の翻訳の仕事をいただくことが多かったのですが、活動する中で、編集者さんからよく聞かれた質問は、「北欧の本(絵本)の特徴は何ですか?」というものでした。  その質問に対して、私は主に以下のように答えてきました。 ●子どもを未熟者扱いしない ●タブーが少ない ●アンチ・オーソリティ(反権威)のマインドを感じさせる作品が多い etc.  また、以下のような指摘もよく受けます。 ●自然が出てくる作品、自然

          北欧発、自然をテーマにした本