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Tove’s Perspective トーベ・ヤンソンの視点

東京都現代美術館

昨年11月に東京都現代美術館で開かれたTOKYO ART BOOK FAIR(TABF)。前回の投稿でよこのさんが詳しくレポートしてくれたとおり、北欧がゲストカントリーでした。私も会場でスウェーデン児童文学プロモーションのプログラムに参加し、各出版社の絵本の原書をたくさん拝見させていただきました。

大学で絵本制作を指導するヨンス・メルグレンさんによるプレゼン。
娘が幼かった頃、彼の絵本が大好きでした。

会場では「Tove’s Perspective トーベ・ヤンソンの視点」という特別展示も行われており、今日はそのレポートをしたいと思います。

特別展示「Tove’s Perspective トーベ・ヤンソンの視点」
 ムーミンの生みの親として、日本でもよく知られるトーベ・ヤンソン。1914年にリベラルな芸術家の両親のもとに生まれ、創作がつねに身近にある環境で育ったトーベは、7歳で「トーベ出版」を立ち上げ、以降数多くの絵本や小説を出版しました。TABFでは、フィンランド、ヘルシンキ在住のトーベ・ヤンソンの研究者、翻訳家である森下圭子をキュレーターに迎え、これまで刊行された絵本や資料とともに、トーベを「本を作るアーティスト」として紹介します。

https://www.rekibun.or.jp/wp-content/uploads/2023/11/20231101_mot_TABFvol2_press.pdf

訳書『メッセージ トーベ・ヤンソン自選短篇集』を担当してくださった、フィルムアート社の臼田さんと一緒にお邪魔しました。

トーベの自画像と
トーベ・ヤンソンの歴史

トーベ・ヤンソンに関する邦訳本がたくさん展示されていました。

私が訳した本もいちばん奥に!(感謝)

双子のような存在の2冊。
今回のキュレーター森下さんと畑中麻紀さんが訳された『トーベ・ヤンソン 人生、芸術、言葉』そして私が訳した『メッセージ トーベ・ヤンソン自選短篇集』。どちらもフィルムアート社。

どちらも展示していただいていました。

トーベが愛したペッリンゲの群島を舞台にした森下圭子さんのエッセイ、そこに写真家ホンマタカシさんのキノコ写真が織り込まれた本も。
私も拝読させていただいたのですが、自然と素朴な人々を主題にしたエッセイは透明でみずみずしく、トーベが現代に甦ったかのような感覚になりました。

森下さんのファンの方々が大勢いらしてました。

詳細・ご購入はこちらから↓

この贅沢な展示、私があれこれ書くよりも、キュレーターの森下さん自身が紹介する動画がありますので、ぜひご覧ください。

また会場ではトーベに関するトークショーや映画上映もありました。

「日本とフィンランド、そしてトーベ・ヤンソンを巡る対話」

登壇者:森下圭子(トーベ・ヤンソン研究者、翻訳家) x AYA IWAYA(グラフィックデザイナー)
ヘルシンキを拠点とする森下圭子とフィンランドでキャリアをスタートし、現在は東京で活動するグ ラフィックデザイナーであるAYA IWAYAによるトークイベント。日本とフィンランドの文化や生 活、そしてアート、デザインの相違点、「Tove’s Perspective」や映画『トーベ・ヤンソンの世界旅 行』について語り合いながらトーベの魅力について掘り下げます。

若くしてフィンランドに渡り、「フィンランドに住む日本人」という属性としてではなく、フィンランド人と肩を並べて活躍されているAYAさんに感動。

ドキュメンタリー映画『トーベ・ヤンソンの世界旅行』上映

Travels with Tove / 1993年/フィンランド/ 58分/デジタル上映監督:カネルヴァ・セーデルストロム日本のテレビ局から招待されたトーベ・ヤンソンは、往復の航空券を片道2枚に変更してもらい、パートナーの トゥーリッキ・ピエティラと共に来日した。旅先で手に入れたコニカの8ミリカメラを手に日本各地を巡り、その後ア メリカ、メキシコへと渡った8ヶ月の旅を記録し続けた。本作には、仲良く楽しそうに当時の思い出を振り返る二人 の対話が収録されている。

こちらで予告編をご覧いただけます。

ずっと観たいと思っていたので、貴重な機会に感謝。
実は先ほど紹介した訳書には、この映画に出てくる旅先を舞台にした短篇がありました。文章では何度も何度も読んだシーンが目の前に映像として現れるというのは不思議な感覚でした。

最後に最新の訳書の紹介を……

12月に刊行になりました『サルと哲学者』。

『変身』のグレーゴル・ザムザは虫になっても本人のままなのか。『罪と罰』のラスコーリニコフはなぜ老婆を殺して罪悪感を覚えたのか。自己同一性や道徳の起源など人類永遠のテーマについて著名な哲学者や思想家が答えを出してきた。それは現代自然科学からみたときどれくらい正しいのか。スウェーデンの新鋭が読み解く。

新潮社公式HPより

スウェーデンの微生物学者で若手オピニオンリーダーである著者。私も新聞に載る彼のコラムを楽しみにしています。幅広い見識により人とは違った視点で鋭く社会を斬るのが彼のスタイル。この混とんとした時代にどう生きていくべきか、本書はそのヒントになります。

上のリンクから、目次や冒頭の試し読み、そして生命科学研究者の仲野徹さんの書評をお読みいただけます。
あとがきもがんばって書いたので、本屋で見かけたらぜひ読んでみてください。本当は作品を読んでからあとがきを読むと「なるほど~」と納得する仕組みになっているのですが。

そして1月に刊行になりました『メンタル脳』。『スマホ脳』のアンデシュ・ハンセン先生の最新作です。

私にとっても人ごとではない内容。あとがきを読んでもらえればわかりますが、この分野の翻訳は仕事という範疇を超えてライフワークになりつつあります。

では2024年も引き続き北欧発の書籍にご注目ください!

文責:久山葉子
1975年生。神戸女学院大学文学部英文学科卒。2010年よりスウェーデン在住。著書に『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』(東京創元社)。訳書に『影のない四十日間』(オリヴィエ・トリュック)、『こどもサピエンス史』(ベングト=エリック・エングホルム著、NHK出版)、『メッセージ トーベ・ヤンソン自選短篇集』(フィルムアート社)、『許されざる者』(レイフ・GW・ペーション著、創元推理文庫)、『スマホ脳』『最強脳』『ストレス脳』『メンタル脳』(アンデシュ・ハンセン著、新潮新書)、『北欧式インテリア・スタイリングの法則』(共訳、フリーダ・ラムステッド著、フィルムアート社)など。

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