上演時間

ギャグや物語の展開にも批評精神やアイロニーが満載。逸脱しても物語を成立させる大野拓朗の演技が秀逸…★劇評★【ミュージカル=プロデューサーズ(大野拓朗出演回)(2020)】

 ショウビジネスの世界は厳しい。日本ではまだまだそんなことはないが、米国では出資者を募るところからスタートし、キャストやスタッフを決めて脚本や譜面が出来上がってもゴールではない。稽古を続けながらも出資者の厳しいチェックが入るし、詳細な情報も求められる。時には脚本に手を入れたり、出演者を差し替えたりすることも。主演俳優が交替することだって珍しいことではない。プレビュー公演は日本のように本公演の直前に

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エンターテインメントの闇と愉悦にどっぷりと浸かった幸せな3時間。表情がくるくる変わる吉沢亮の豊かな表現力が大入りの会場を沸かせている…★劇評★【ミュージカル=プロデューサーズ(吉沢亮出演回)(2020)】

 ショウビジネスの世界は厳しい。日本ではまだまだそんなことはないが、米国では出資者を募るところからスタートし、キャストやスタッフを決めて脚本や譜面が出来上がってもゴールではない。稽古を続けながらも出資者の厳しいチェックが入るし、詳細な情報も求められる。時には脚本に手を入れたり、出演者を差し替えたりすることも。主演俳優が交替することだって珍しいことではない。プレビュー公演は日本のように本公演の直前に

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水樹奈々のポップな感性あふれる歌唱の数々は一音一音を大切にしてきた彼女らしいレベルの高い出来上がりになっていた…★劇評★【ミュージカル=ビューティフル(水樹奈々出演回)(2020)】

 作詞家の夫と共に職業作曲家として数多くのヒットナンバーを生み出した半生の前半分と、独り立ちした後にシンガー・ソングライターとして自らの心情を歌いつづった半生の後ろ半分。そのどちらもがキャロル・キングという存在を作っているのだが彼女の歌はとにかく他のアーティストにカバーされることで知られている。それは曲の上質さや歌いやすさもあるだろうが、なにより彼女の歌う届かぬ思いや幸せへの疑い、心が引きちぎられ

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初演より深くなった情緒感で多彩な感情がより観客に伝わりやすくなった…★劇評★【ミュージカル=ビューティフル(平原綾香出演回)(2020)】

 キャロル・キングの歌は切ない。アーティストに歌わせるために作った曲も、シンガー・ソングライターとして歌う曲も、届かぬ思いや幸せへの疑い、心が引きちぎられるような痛み、無償の愛など様々な感情が音楽に散りばめられており、私たちの心を複雑な色合いに染めていく。彼女自身の人生もまた、華やかな成功の陰で家族関係では大きな挫折も体験し、ずっと朗らかでいたわけじゃなかった。もちろん楽曲を生み出す過程では喜びと

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せりふひとつひとつを観客の心の底に着実に沈めていくような静かな力強さと不安な現代社会ならではの浮遊感がないまぜに…★劇評★【舞台=The last night recipe(2020)】

 幸せや愛情などのようにあいまいな形をしているものは、見る角度によってまったく見え方が違ってしまう。そして見る人の数だけ視点が違うわけなので、より複雑なものになる。ある女性の死によって浮かび上がった幸せのパズルの微妙なずれをたどりながら、新型コロナウイルスという言いようのない不安の中で繰り広げられるそれぞれの心の旅路を描いた演劇ユニット「iaku」の最新舞台「The last night reci

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時代が変わっていく地響きのような音にあおられながら、悲哀に満ちた人間関係が描かれる…★劇評★【舞台=リチャード二世(2020)】

 たとえシェイクスピアでも「史劇」は面白くないと思っていた。政権を倒す話はわくわくするが、王様には絶対服従の時代。人生も家柄の上下や貧富の度合いによってほとんど決定してしまう時代の人間関係や権力争いには面白みがないのではないか、と思っていたからだ。しかしそんな愚かな考えは、2009年から今年まで数年おきに断続的に上演された新国立劇場の「シェイクスピアの歴史劇シリーズ」で根底から覆った。9時間にもわ

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それぞれの感情がより鮮明になり、物語自体の新しい奥行きも獲得したように見える…★劇評★【ミュージカル=生きる(鹿賀丈史・小西遼生・唯月ふうか<とよ役>・May’n<一枝役>出演回)(2020)】

 黒澤明監督の不朽の名作映画『生きる』が世界で初めてミュージカル化されて2年。今年再演公演を迎えたミュージカル「生きる」は、人生にまたがる「生と死」という重厚なテーマをさまざまな感情で表現された楽曲が彩っていくミュージカルというかたちを得たことで、それぞれの感情がより鮮明になり、物語自体の新しい奥行きも獲得したように見える。鹿賀丈史、市村正親という日本のミュージカル界の頂点に立つベテラン2人の演技

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真実の愛へと昇華するダイナミズムと映画へのリスペクトを込めた舞台表現を散りばめて、きらきらと光る宝物のようなミュージカルとして結実している…★劇評★【ミュージカル=ローマの休日(朝夏まなと・平方元基・藤森慎吾出演回)(2020)】

 ローマという街には魔法がかけられている、とイタリアの隣国生まれの友人から聞いたことがある。もともと開放的な国民性があふれる土地柄もあるのだろうが、この街に来ると誰もが自分を解放したくなり、誰もが自分のタガを外してみたくなるのだという。神々もついつい人間の運命にいたずらを仕掛けてみたくなるのだろうか。王室の人間でがんじがらめのスケジュールに縛られている人ならなおさら解放への欲求が強まることもあるだ

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チェーホフの世界観の中で普遍的な家族の物語と現代的な問題意識が100年の時を隔てて共鳴する圧巻の物語…★劇評★【舞台=ワーニャ、ソーニャ、マーシャ、と、スパイク(2020)】

 チェーホフが活躍したのは1900年前後。19世紀末から20世紀の初頭にかけてだ。そんな劇作家の作品が21世紀前半のいま、世界中で頻繁に上演されている。それはチェーホフの時代がまさしく「現代の始まり」と言っていい時代であり、人々が抱える悩みが根源的なところでつながっているからだ。そんなチェーホフの「かもめ」「三人姉妹」「桜の園」「ワーニャ伯父さん」などの戯曲から設定やテーマ、イメージを少しずつ借り

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人間としての確かな温もりと幸福感がこの劇場の中にはあふれている…★劇評★【舞台=ベイジルタウンの女神(2020)】

 東京公演中にイベント収容人数制限が緩和され、劇場の収容人数の50%から80%まで観客を増やすことができたケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の新作舞台「ベイジルタウンの女神」。徐々にではあるが舞台に日常が戻りつつある中、それでも観客たちはさまざまな不安やストレスと闘っている。それらをこの作品は癒し、不安の種をひとつひとつ取り除いてくれる。貧富の差や人間の尊厳、時間と記憶といった重厚なテーマが

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