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小瀧望と木下晴香という若き逸材を得て人間の美しさと愚かさを痛切なまでに描き出す力強い作品となった。…★劇評★【ミュージカル=ザ・ビューティフル・ゲーム(2023)】

 わずか30年ほどの間に37000件の襲撃事件や16000件の爆破事件(未遂含む)、2200件の放火事件(未遂含む)が起きた北アイルランド紛争。3500人余り(諸説あります。1500人説もあり)が犠牲になったこの西ヨーロッパの片隅の1地域の争いは、発生から数時間もたたないうちに、日本の小学生だった私の目にも、テレビのニュース速報のテロップというかたちで入ってきた。楽しいアニメやバラエティー番組を見て浮き立っている子どもの気持ちさえ暴力的に引き裂いていく「10人死亡」の文字。小学生のくせに新聞好きだった私は、その対立の構図は分かっていたが、なぜこんなに長く対立が続いているかが理解できなかった。憎しみはそんなに長く続くのか。人間同士がこんなに憎みあえるのか。しかし実際、対立はそれから25年も続くのだ。プロテスタントとカトリックの対立を軸に、英国との距離感をめぐる対立から、同じ意思を持っているのに穏健派と強硬派でも対立が生まれた。憎しみは複雑に絡まりあい、誰もほどけなくなっていたのだ。そんな中で子どもたちはどうしていたのだろう、若者たちは? そして彼らの青春は? 対立が人生そのものになってしまう年齢になる直前の人々はどんな思いでいたのだろう。私が大学生のころから抱き続けてきた疑問に、ある一面ではあるもののひとつの答えを与えてくれたのは、それからはるか21世紀になって観たミュージカル「ザ・ビューティフル・ゲーム」だった。2006年の櫻井翔主演による日本初演、2014年の俊英、藤田俊太郎による演出による上演を経て、三たぴ日本に現れたこの問題作は、小瀧望と木下晴香という若き逸材を得て、人間というものの美しさと愚かさを痛切なまでに鮮やかに描き出し、観客たちの胸を強く打つ力強い作品となった。演出は瀬戸山美咲。(写真はミュージカル「ザ・ビューティフル・ゲーム」とは関係ありません。単なるイメージです)
 
 ミュージカル「ザ・ビューティフル・ゲーム」の公演はすべて終了しています。2023年1月7~26日に東京・日比谷の日生劇場で、2月4~13日に大阪市の梅田芸術劇場 メインホールで上演された。
 
★序文は阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも無料でお読みいただけます。舞台写真は今回はブログにも掲載していません

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★ミュージカル「ザ・ビューティフル・ゲーム」公演情報=東京公演はすべて終了しています

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