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「セカイ系」の世界観が、研ぎ澄まされた演劇空間の中に炸裂。ラルビの飛び抜けた想像力・創造力で可能になった斬新な舞台表現が精神性・哲学性が高いエヴァ世界の具現化に成功…★劇評★【舞台=舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド(2023)】

 21世紀初頭に発生した彗星の一部崩壊で落下した隕石による巨大災害とされた「セカンドインパクト」によって現れた謎の敵「使徒(シト)」と、それに対抗するため人類側が立ち上げた少年少女しか操縦・戦闘できない人造兵器(巨大な汎用人型決戦兵器=エヴァンゲリオン)との闘いを描き1990年代後半の国内外で空前のヒットとなったアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の基本的な設定や世界観を借り、まったく新しい舞台作品として再構築した舞台「舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド」がついに開幕した。登場人物にも違いがあり、投げ掛けられるテーマにも踏襲感は濃くないが、大災害後の巨大プロジェクトへの違和感や、若い世代に運命を託しプレッシャーを過大にかけることへの疑問や大人へのぬぐいがたい不信感など底流に流れるものは共通しており、個人の意識と世界の命運という極端にスケールの違うものが共存し、あるいは組み合わされる「セカイ系(世界系)」の世界観が、研ぎ澄まされた演劇空間の中に炸裂。日本関連では手塚治虫作品の世界観を森山未來らとのコラボレーションで表現した「テ ヅカ TeZukA」(2012年)や、手塚作品を基に浦沢直樹がリメイクした傑作漫画を舞台化した「プルートゥ PLUTO」(2012年)を生み出してきた振付家出身の世界的演出家、シディ・ラルビ・シェルカウイの飛び抜けた想像力・創造力によって可能になった斬新な舞台表現が精神性・哲学性が高いエヴァンゲリオンの世界をものの見事に具現化し、観る者に驚きを与える、演劇としても極めて高いレベルに達していた。劇団「はえぎわ」の主宰で演出家・劇作家としても日本の現代演劇の中心にいるノゾエ征爾が舞台版構成台本を手掛けていることも興味深い。(画像は舞台「舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド」とは関係ありません。単なるイメージです)

 舞台「舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド」は、2023年5月6~28日に東京・新宿の「THEATER MIRANO-Za」(東急歌舞伎町タワー6F)で、6月3~4日に長野県松本市のまつもと市民芸術館で、6月10~19日に大阪市の森ノ宮ピロティホールで上演される。
「THEATER MIRANO-Za」は新しく新宿・歌舞伎町内に建った東急歌舞伎町タワーの6階にある新しい劇場です。エレベーターは6階では止まらず、乗り降りができません。エスカレーターを利用して6階までお上がりください。

★序文は阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも無料でお読みいただけます。舞台写真はブログでのみ公開しています。

★無料のブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含む劇評の全体像はクリエイターのための作品発表型SNS「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。窪田正孝さん、石橋静河さん、板垣瑞生さん、永田崇人さん、坂ノ上茜さん、村田寛奈さん、宮下今日子さん、田中哲司さんら俳優陣の演技に関する批評や、シディ・ラルビ・シェルカウイさんの演出や舞台表現、振付に対する評価などが掲載されています。その他、スタッフワークの評価が盛り込まれている場合もあります。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは原則として2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

★舞台「舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド」特設ページ

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