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対立と融和の米国史にあふれる同時代性。石丸幹二・井上芳雄・安蘭けいが綴る一大絵巻…劇評★【ミュージカル=ラグタイム(2023)】


 まだジャズが成立する前に、黒人たちが模索していた音楽がある。それは「ラグタイム」。さまざまな方法で裏拍を強調することである種のずれを生み、独特の浮遊感を聴く者に感じさせる手法で、その後のジャズの成立、隆盛にも大きな影響を与えた。まるでこの手法を使ったような方法で、白人、黒人、移民と米国を構成する3つの要素が絡み合いながら現代へと変遷してきた歴史を綴った一大叙事詩のミュージカル「ラグタイム」がカナダでの世界初演から実に27年にしてようやく、日本人キャストによる日本初演として上演されている。移民の苦闘や、黒人の闘争史として描かれることも多いこれらの歴史をはじめからどの視点も漏らすことなく、大きなうねりとして描いたこの作品は圧倒的な説得力を持つだけでなく、日本のミュージカルをそれぞれの立場でけん引してトップに立ってきた石丸幹二と井上芳雄の演技の魂が初めての共演によってより磨き上げられ、米国の抱えてきた苦悩を鮮やかに表現。2人をよく知る安蘭けいとの屹立した関係性によって、物語の舞台となった時代や、初演時、いずれの時代にも負けない同時代性をたたえることに成功したのである。(写真はミュージカル「ラグタイム」とは関係ありません。単なるイメージです)
 
 ミュージカル「ラグタイム」は、10月5~8日に大阪市の梅田芸術劇場メインホールで、10月14~15日に名古屋市の愛知県芸術劇場大ホールで上演される。それに先立って9月9~30日に東京・日比谷の日生劇場で上演された東京公演はすべて終了しています。
 
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★無料のブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含む劇評の全体像はクリエイターのための作品発表型SNS「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。石丸幹二さん、井上芳雄さん、安蘭けいさん、遥海さん、川口竜也さん。東啓介さん、土井ケイトさん、綺咲愛里さんら俳優陣の演技に関する批評や、藤田俊太郎さんの演出や舞台表現に対する評価などが掲載されています。場合によっては、スタッフワークについて言及することもあります。
 
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★ミュージカル「ラグタイム」公式サイト

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