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がんじがらめの状態が本質的なものを引き出し、究極の会話劇として堂々と演劇の中央舞台に乗り込んでみせた…★劇評★【舞台=アルキメデスの大戦(2022)】

 日清・日露と連戦連勝、第一次大戦は無関係で、よほど自信があったのかもしれないが、エネルギーも食料も自給自足は出来ない日本が、ましてや世界一の工業生産国である米国と戦争をするなんて。今の人でなくてもだれが考えてもそれが「無謀」だということが分かるはず。あまりにも愚かすぎる。しかし、いや、だからこそ、精神論だけで乗り切れるはずがないことを分かっていた人は戦前の日本にだっていたに違いない。しかも実際に自分たちが戦う立場の軍部の中には絶対に主戦論だけでない考えの人がいた可能性が強いのだ。戦闘機の時代が来ることは分かっているのに、それらを搭載・発着させる空母のような航空主兵の船ではなく、見栄とも思える巨大な大砲だけに頼った戦艦を作ることに妄走する軍上層部の狙いを阻止するため、いわばプロジェクトリーダーとして軍の外部から招き入れられた天才数学者が計算や設計のサイドから巨大な敵に戦いを挑んだ舞台「アルキメデスの大戦」の主人公の存在は、架空の物語の中でのフィクションではあるものの、彼もまたそんなひとりと言っていいかもしれず、軍の中の「戦争反対論者」の存在を感じさせる象徴的作品と言える。漫画から映画と発展を遂げたこの物語は、大スベクタクルとなる映像や表情の超クローズアップも使えない演劇というかたちに昇華することで、むしろそのがんじがらめの状態が本質的なものを引き出す効果を上げている。舞台「アルキメデスの大戦」は究極の会話劇として、堂々と演劇の中央舞台に乗り込んでみせたのである。(写真は舞台「アルキメデスの大戦」とは関係ありません。単なるイメージです)
 
 舞台「アルキメデスの大戦」は10月25日に静岡市の静岡市清水文化会館マリナート 大ホールで、10月27~28日に名古屋市の日本特殊陶業市民会館ビレッジホールで、10月30日に高松市のレグザムホール(香川県県民ホール)大ホールで、11月3日に広島県呉市の呉信用金庫ホール(呉市文化ホール)で上演される。これに先立って10月1~17日に東京・日比谷のシアタークリエで上演された東京公演と10月21~23日に大阪市の梅田芸術劇場シアタードラマシティで上演された大阪公演はすべて終了している。
 
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★舞台「アルキメデスの大戦」公演情報

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