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すずの柔らかなたくましさを丁寧に表現する昆夏美の繊細さ、シーごとの心情を的確に示す海宝直人の歌の表現力、アンジェラ・アキの語り掛けるような音楽の口調がミュージカルにも映える…★劇評★【ミュージカル=この世界の片隅に(昆夏美・海宝直人・桜井玲香・小野塚勇人出演回)(2024)】

 誰かと出会うということは奇蹟に違いないのだが、その過程でどちらかがどちらかを「見つけている」。それこそが奇蹟なのだ。こうの史代の漫画「この世界の片隅に」に流れるこの奇蹟への賛歌は、ミュージカル化されたことでより高らかに謳い上げられ、私たちの胸を打つ。戦争という無限の地獄にも思える世界の中でも人は生を生き、それぞれの輝きをきらめかせる。この広い広い世界の中でだれかが私を見つけてくれる。そしてそこがわたしの居場所になる、そのひそやかで、謎めいていて、そしてどこまでも深遠で確かな奇蹟。クリエイターたちの誠実な創作への取り組みと、キャストたちのどこまでも丁寧な表現によって、こうのの世界は、そして奇蹟の尊さは守られた。大原櫻子と昆夏美による主人公すずへの取り組みは素晴らしく、2人ともそれぞれのキャラクターを活かしながらすずの強さと弱さを繊細に表現。昆は持ち前の人懐っこさと芯の強さで、すずの柔らかなたくましさを丁寧に表現。このミュージカル「この世界の片隅で」でミュージカル作家として日本での活動を再始動させたアンジェラ・アキの音楽もまたすずの切なさの混じったたおやかさをよく表現していた。(写真は現代の呉の風景ではありますが、ミュージカル「この世界の片隅に」とは関係ありません)。
 
 ミュージカル「この世界の片隅に」は2024年6月6~9日に札幌市の札幌文化劇場hitaruで、6月15~16日に岩手県盛岡市の岩手県民会館で、6月22~23日に新潟市の新潟県民会館大ホールで、6月28へ30日に名古屋市の御園座で、7月6~7日に長野県松本市のまつもと市民芸術館で、7月13~14日に茨城県水戸市の水戸市民会館グロービズホールで、7月18~21日に大阪市のSkyシアターMBSで、7月27~28日に広島県呉市の呉信用金庫ホールで上演される。これらに先立って2024年5月9日~30日に東京・日比谷の日生劇場で上演された東京公演はすべて終了しています。
 
★序文はエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも無料でお読みいただけます。舞台写真はブログにのみ掲載します。

★無料のブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含めた劇評の全体像は通常はクリエイターのための作品発表型SNS「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。昆夏美さん、海宝直人さん、桜井玲香さん、小野塚勇人さん、小向なるさん、音月桂さん俳優陣の演技あるいは身体表現についての批評、上田一豪さんの演出・舞台表現およびアンジェラ・アキさんの音楽に対する評価などが掲載されています。場合によっては、特定のスタッフワークについて言及することもあります。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは原則として2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

 なお、ミュージカル「この世界の片隅に」はプリンシパルキャストのうち4つの役がWキャストであるため、さまざまな組み合わせが組まれていますが、劇評を掲載するのは【ミュージカル=この世界の片隅に(大原櫻子・村井良大・平野綾・小林唯出演回)(2024)】と【ミュージカル=この世界の片隅に(昆夏美・海宝直人・桜井玲香・小野塚勇人出演回)(2024)】の2通りのみとさせていただきます。すべての組み合わせをご紹介したいところですが、人気公演ゆえ、取材機会に限りがございます。また別の機会にご紹介させていただければ幸いです。ご容赦ください。

 もう一つの組み合わせ【ミュージカル=この世界の片隅に(大原櫻子・村井良大・平野綾・小林唯出演回)(2024)】の劇評へは下記のリンクから飛んでください。一部に内容が重複している部分があることをあらかじめご承知おきください。

 ★ミュージカル「この世界の片隅に」公式サイト

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