栗山民也

こんなに日常が心に染みる芝居もない。相反するものを明滅させながら深まっていく物語に確かな手触り…★劇評★【舞台=母と暮せば(2021)】

こんなに日常が心に染みる芝居もない。相反するものを明滅させながら深まっていく物語に確かな手触り…★劇評★【舞台=母と暮せば(2021)】

 演劇空間は観客にとっては非日常の空間である。幽霊が登場するのも、科学で証明できない以上、非日常に違いない。なのに、こんなに日常が心に染みる芝居もない。こんなにも大切にこんなにも丁寧に積み重ねてきた日常を一瞬にして奪う戦争という悪魔のような所業。日常が表すその非日常の悲劇-。絶賛された2018年の初演以来、初めての再演が行われている舞台「母と暮せば」で母と息子の魂の邂逅を演じている富田靖子と松下洸平のあくまでも自然なふるまいが逆に私たちの心を震わせ、日常と非日常の空間を分かち

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【インタビュー=演劇⑥】 富田靖子(俳優)& 松下洸平(俳優) こまつ座第137回公演「母と暮せば」出演(2021)

【インタビュー=演劇⑥】 富田靖子(俳優)& 松下洸平(俳優) こまつ座第137回公演「母と暮せば」出演(2021)

 井上ひさしの構想をもとに山田洋次監督が創り上げた映画を2018年に舞台化し絶賛されたこまつ座公演「母と暮せば」が再演される。長崎への原爆投下から3年の時を経て再会した母と息子の魂の邂逅を初演で初タッグを組んだ富田靖子と松下洸平が再び舞台の上に描き出す。前回に引き続き栗山民也演出のもと、母・伸子を演じる富田と、息子の浩二を演じる松下に、再演への思いと稽古場での日々を聞いた。(聞き手=エンタメ批評家・阪清和)(写真は舞台「母と暮せば」の稽古に臨む富田靖子(左)と松下洸平=撮影・

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【Report=織物を縫い上げるように丁寧に、「稽古は役の声を見つける作業」と栗山民也、舞台「母と暮せば」再演公演稽古場リポート(2021)】

【Report=織物を縫い上げるように丁寧に、「稽古は役の声を見つける作業」と栗山民也、舞台「母と暮せば」再演公演稽古場リポート(2021)】

 井上ひさしの構想をもとに山田洋次監督が創り上げた映画を2018年に舞台化し絶賛されたこまつ座公演「母と暮せば」の再演公演が初演から3年の時を経て東京などで上演されることになり、7月3日の紀伊國屋ホール(東京・新宿)での初日に向けて連日東京都内の稽古場で綿密な稽古が続けられている。長崎に投下された原爆のために死んだと認定された医学生の息子が戦後3年経って幽霊となって姿を現し、母にかつての楽しい思い出や原爆のすさまじい悲劇を語りながらも、未来を見据えて前向きに生きる心の拠りどこ

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舞台『フェードル』熱くて人間が愛おしくなる物語でした。

舞台『フェードル』熱くて人間が愛おしくなる物語でした。

舞台『フェードル』を見ました。見た後に人間が愛おしくなるめっちゃ面白い舞台でした。ネタバレありの感想です。 私は『おっさんずラブ』で林遣都さんのファンとなったのですが、彼が『フェードル』に出演すると聞いた時「絶対に見たい」けれど私なんかが行ってもいいの?」と感じました。 なぜならこの舞台の主演は日本を代表する女優である大竹しのぶさん、演出も同じく日本を代表する栗山民也さんだからです。 ハードル高い……。しかもギリシャ悲劇……。 素人には、あまりにも縁遠い組み合わせ。 舞台の

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【スリルミー】について、私が思っていることの全て。
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【スリルミー】について、私が思っていることの全て。

こんにちは。 さあ!!皆さま。スリルミーの季節ですね!!!! わたしは先日、4月5日、成河さんと福士さんの初日を観に行きました。あとそれから観に行く予定はなかったのですが、14日、松岡さんと山崎さんの公演も観てしまいました。 いや〜、最高でしたね。まじで最高でした。 もう、本当に、最高で、最高すぎて、最高でした!!!!! それを語ります!!!(笑) まず語る前に、最初に少しだけ自分のことと、この記事を書くにあたった経緯を。 わたしが初めてスリルミーを見たのは2014年の11

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日本の顔|栗山民也

日本の顔|栗山民也

栗山民也(くりやまたみや・演出家) コロナで芸術活動が厳しいなか、舞台公演を続ける演劇人がいる。演出家の栗山民也だ。これまで多くの優れた作品を手掛け、芸術選奨文部科学大臣賞など数々の賞を受賞してきた。オペラやミュージカルなど活躍の場は幅広く、細やかな演技指導で俳優たちの自身も気づかなかった一面を引き出していく。あの森光子からも信頼が厚かった。 「観客の代表として僕が退屈なものを観たくないから(笑)。舞台はライブだから嘘もつけません」 昨年春から6つもの舞台を上演。手

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憂いと詩情を湛えたせりふの合間や背景に生演奏のピアノで奏でられるベートーヴェンの楽曲がもうひとつの格調高い物語世界を私たちの心の中に創り出していく…★劇評★【舞台=Op.110 ベートーヴェン「不滅の恋人」への手紙(2020)】

憂いと詩情を湛えたせりふの合間や背景に生演奏のピアノで奏でられるベートーヴェンの楽曲がもうひとつの格調高い物語世界を私たちの心の中に創り出していく…★劇評★【舞台=Op.110 ベートーヴェン「不滅の恋人」への手紙(2020)】

 音楽、特にクラシック音楽は、それをつくった人物、つまり作曲家がどんな想いでその曲を作ったか、当時どんな状況に置かれていたか、誰に捧げたかなど、人と曲にまつわるさまざまなエピソードをたくさん聞かされてから聴くと、何も知らずに聴くよりも何百倍も心に染みてくるものだ。舞台「Op.110 ベートーヴェン『不滅の恋人』への手紙」は、長年その存在が謎とされながら、研究者の近年の熱心な調査によって導き出されたある仮説に基づいて推測された「不滅の恋人」の本命とされる女性に焦点を当て、ベート

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ゲルニカ

ゲルニカ

9月、『ゲルニカ』という舞台を見ました。 ミュージカルではなく、久々の演劇です。 ゲルニカ。 このワードで誰もがイメージするとおり、ピカソの絵画をテーマとした作品です。 そして、そのピカソのゲルニカは何をテーマにしているか? ・・・ゲルニカ爆撃です。 1937年に起きた「史上初の無差別空爆」で このゲルニカ以外での無差別空爆は広島、長崎のみ。 この時代はまだTVも無く写真も普及していないので、当時は無かったことにされそうになったそうです。 「戦争の話か~」 そう思って

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戦争が個人にもたらす残酷な仕打ちへの怖れと人生の哀歓がこもった得難い余韻を残していく作品…★劇評★【舞台=私はだれでしょう(2020)】

戦争が個人にもたらす残酷な仕打ちへの怖れと人生の哀歓がこもった得難い余韻を残していく作品…★劇評★【舞台=私はだれでしょう(2020)】

 戦争は恐ろしい。そう言ったとしても本当に実感としてそう感じてくれているのかどうかを推し量ることはなかなか難しい。しかし、物語の中に潜ませたそうした真理は観客の心の中にひたひたと入り込み、いつのまにか絶対にはぎとることのできない感情として定着する。井上ひさしが終戦直後に急増した「たずね人」をモチーフに戦争の傷跡の実相とそこからの再生を描いた舞台「私はだれでしょう」は、市井の人々が時につつましく時にたくましく生きる生活感あふれる描写が満載で、挟み込まれる劇中歌も底辺にあっても前

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ひたひたと迫る地獄のような戦争の地響きの中で咲く「生」という花々の意味合いがより明確に浮かび上がる仕上がり…★劇評★【舞台/音楽劇=きらめく星座(2020)】

ひたひたと迫る地獄のような戦争の地響きの中で咲く「生」という花々の意味合いがより明確に浮かび上がる仕上がり…★劇評★【舞台/音楽劇=きらめく星座(2020)】

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