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エッセイ

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ノンフィクション、実録エピソードです。生きづらさ、自己肯定感、悩みが中心。
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#コラム

人前で屁をこき続けてきた半生でした。俺はどうやら、とんでもない思い違いをしていたようだ……

人前で屁をこき続けてきた半生でした。俺はどうやら、とんでもない思い違いをしていたようだ……

私には18年間思い込んできた事実がある。それは「人間がおならをしても、その臭いがわかるのは自分だけ。他人には決して臭いがばれることはない」というものだ。

今思えば、恐ろしい話である。なぜそのように思い込みに至ったのかは定かではない。おそらく当時の私を取り囲んでいた優しい人たちが、私をおならをしても知らんぷりをしてくれていたからだろう。幸か不幸か、一人も「うわ!お前、屁こいただろ!臭えよ!」と言っ

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今まで住む場所を選べなかった人へ

今まで住む場所を選べなかった人へ

住みたい場所が選べるなんて、考えもしなかった。
今までの自らが住む場所を選んだ経験は、皆無に近い。

高校卒業まで親と暮らし、大学進学とともに上京。
新卒で就職した銀行では、女子寮に入っていた。

結婚とともに追い出されたが、夫の勤務先が近い場所に住むことになった。
夫は職業柄、職場のすぐ近くに住む必要があったからだ。

そのまま出産し、ネズミのようにポコポコと2歳差で3人が生まれた。
都内のマン

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血と涙と餃子

血と涙と餃子

 好きな店を聞かれて、いつも愕然とする。三十三年の人生で、今まで散々食べ歩いてきたくせに、どこも思い浮かばない。

 現在、住んでいる東京は『世界中の食を堪能できる街』と言われる。確かにイタリアン、フレンチ、中華、変わり種ではベトナム料理やブルガリア料理まで、何でもそろう。そんな東京での生活が十二年目を迎え、他に世界二十五か国も旅してきた。しかし、記憶に残る店がないのだ。

 これではnoteはお

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祖母のハンバーグ

祖母のハンバーグ

「家出してきた」と祖母の家に乗り込んだのは、二月の終わり。暦は春に移ろうとしていたが、高校三年生の私にはその気配がまるでなかった。

「あれ、来たのかね」
「うん。ばあちゃん、元気そうだね」
 そう。七十を過ぎ、青白い、太った女性にしては。
「ママが、こんなのよこしてきた」
 玄関で立ちすくむ祖母に、私は靴も脱がずに手紙を押し付けた。
「『大学受験、ほぼ全滅ね。残るは国立後期。同級生との再会が後ろ

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仕事についてなんて話したくねえよ

仕事についてなんて話したくねえよ

仕事についてなんて話したくねえよ。本当のところ、会社員の誰もがそう思っているんじゃないだろうか。

そもそも労働というのは、大きな嘘である。新卒から一貫して法人営業という詐欺みたいな行為で生計を立てていたから、余計にそう思う。銀行員の頃は、利益率の高い金融商品をひたすら客に売りつけていた。諸事情により詳細は書けないが、別の職場では”こんなサービス買うバカいるのかよ?”と思いながら営業をしていたこと

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