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部下の成長

以前、地域の会社を3社兼務していた時に、自分が住み暮らしていた地域の会社の業績だけがどうしても回復しませんでした。

その時に上司から一冊の本が贈られてきました。

タイトルは、「最高のリーダーは何もしない」。

手紙も何も添付がなく、ただ本だけが送られてきましたので、本の内容から上司の意図を読み取るしかありませんでした。

実際にはタイトルどおりに「何もしない」というわけではありませんが、一番しないといけないことは企業理念や方針を伝え続けていくこと。

そして、それを受け止めてくれた部下を始めとした現場に任せていくこと。

思い返せば、業績の良かった担当していた遠方の2社については、物理的にも関わる頻度が少なく、結果部下たちが自ら判断して行動していることが多かったです。

「あれしろ」「これしろ」といった指示を多く出すことよりも、「ああしたいのですが」「こうしたいのですが」といった部下や現場の主体性の発揮に対して可否判断を下してその責任を持つ。

これが、当時の私に上司が伝えたかったことなのだろうと、今更ながらに思い当たるのでした。

故事にはなりますが、有能な部下を全面的に信頼してその才を遺憾なく発揮させるという点では、中国は前漢の初代皇帝になった劉邦とその部下の張良の関係が最も有名な逸話です。

そういった意味では、あの頃の私は部下たちを信頼していなかったのだな、だからこその状況でありその結果であったのだなと思います。

そして、先日読んだ中日の元監督を取り上げた「嫌われた監督」の中の落合監督も、指示を出さずに選手たち自らに考えさせて結果につなげていました。

唯一違うのは、主体性を発揮した選手たちに尊敬されていた落合監督は、球団という会社組織において上層部に嫌われてしまった、また嫌われるような対応を取ってきてしまったという点。

前述した本の方では、

  • 好かれなくてもいい

  • だが、嫌われてはいけない

  • 敵をつくらない人が、結局いつも成し遂げる

とありました。

勝ち続けられるチームであったのに、その最中に監督交代を申し付けられたというのは、部下のためにより良い環境を作り上げてきたにもかかわらず、その体制を継続させるための全方向の努力を怠っていた、そのために結局は部下たちのためにならない状況を引き寄せてしまったという厳しい見方もできます。

好きでも嫌いでもなくてもいいけれども、その真意については全方向に理解を求めるような考え方が意識的にできていれば、また違った結果になっていたのかもしれません。

でも、そうしたら落合監督の持つ魅力というかクセの強さも軽減してしまうような気もしますけど。

ともあれ、リーダーは人や組織にビジョンを浸透させることに集中することが、想いを一緒にしてくれる部下たちが自ら成長し、それぞれが頼れる仲間として活躍してくれるチームや環境の実現への近道なのだと信じています。

もっと平たく言ってしまうと、リーダーが何もしない人だと、少なくとも想いの伝わった部下たちが本当に一生懸命働いてくれるのですよね。

本当にありがたいことです。

前述した劉邦は後に自身が天下を勝ち取り、項羽が敗れた理由について部下たちにこう述懐しています。

「お前達はわかっておらぬな。

俺は張良のように策を帷幕の中に巡らし、勝ちを千里の外に決する事は出来ないし、蕭何のように民を慰撫して補給を途絶えさせず、民を安心させる事は出来ないし、韓信のように軍を率いて戦いに勝つ事は出来ない。

だが俺はこの張良・蕭何・韓信という3人の英傑を見事に使いこなす事が出来た。

反対に項羽は范増1人すら使いこなす事が出来なかった。

これが俺が天下を勝ち取った理由だ。」

と答え、その答えに群臣は敬服した。

Wikipedia「劉邦」より


「使いこなす」という表現は適切ではありませんが、部下が主体性を発揮できるかどうかは上司の能力の優劣というよりは、すべてが関係性にかかっているのだと思います。

今日も読んでくださいまして、ありがとうございます。


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