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【接客】お客さまを「神様」扱いすると、「モンスター」が増える

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
お客さまは神様です――。
 
BtoCビジネス、特に接客に携わっている人なら一度は聞いたことがあるフレーズではないでしょうか。国民的歌手として知られる三波春夫さんの有名なフレーズで、これが接客の王道とされてきたようです。
 
ただこの考えが過剰にエスカレートし、顧客側の人間は神様のようにサービスが受けられると解釈し、サービス提供側は、顧客の理不尽な要望に応えることを最高のサービスといった、もはや「自己犠牲を美徳としてとらえている」意識が広がっているようです。
 
それに対して、疑問を呈しているのが、自身で複数のジム経営をしながら、スモールビジネス専門集客コンサルタントとしても人気を博している日野原大輔さんです。

日野原さんは著書『神・リピート集客術』の中で、お客さまを「神様」扱いすると、「モンスター」が増えると主張しています。いったい具体的にどういうことなのか? 今回は、同書の中から該当箇所を全文公開します。

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「お客さまの言いなりになれ」ではない

 あらためて言うまでもなく、お店は、顧客満足度を上げてリピート顧客を増やし、継続的な売上をつくることで存続していきます。
 そのためには、
 
 ◎商品のメリット、デメリットを体験して理解し、お客さまに伝える。
 ◎お客さまのニーズ(何に困っているのか、本当に欲しいものは何か、どう接してほしいのか)を理解する。
 ◎この2つを踏まえ、お客さまへの最適な提案をする。
 
 という3つの取り組みがとても大切です。
 つまり、お客さまを主役として、お店の商品、サービスを通して悩みを解消していただき、笑顔と幸せをお届けすることが販売者の使命です。
 ただし、お客さまは神様ではありません。たとえ小さなお店でもルールがあり、それを無視して「お客さまの言いなりになれ」ということではないのです。
「お客さまは神様です」というフレーズを日本全国に浸透させた歌手・三波春夫さんも、「この言葉は自分の意図とは違う意味で解釈されている」と言っており、ホームページで次のように書いています。
「歌うときに私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな、澄み切った心にならなければ完璧な芸をお見せすることはできないと思っております。ですから、お客さまを神様とみて、歌を唄うのです」
 ところが、このフレーズが真意と離れ、たとえば買い物客が「お金を払うのはこっちなんだから、もっとていねいにしなさいよ。お客様は神様でしょ?」といった具合に、クレーマーの格好の言い訳になっているというのです。(出典:三波春夫オフィシャルサイト「お客様は神様です」について https://www.minamiharuo.jp/pro­le/index2.html)。

ルールを破る人は、お客さまではない

 これを読んだあなたは、「そんなことは知っているよ」と思うかもしれません。
 ところが、「お客さまは神様」の言葉に縛られ、苦しんでいるお店があるのも事実です。
 私のスポーツジムでも、以前こんなことがありました。
 ヨガの体験レッスンで来店された方が当店を気に入り、「月謝会員になって毎週決まった枠に来たい」と言われました。しかし、そのためには当店のルールでクレジットカード情報が必要になります。ところが、「カード情報は教えたくない」とおっしゃる。「でしたら、すみません、1回1回、予約を取ってのご利用をお願いします」と伝えたところ、突然、「この店はどうなってるんだ! 客に向かってなんて態度だよ、今すぐオーナーを出せ!」と大声で暴言を吐き始めたのです。
 その豹変ぶりに、スタッフはおろおろするばかり。まわりにいたお客さまもびっくりして眉をひそめています。私はたまたま不在にしており、「あとで必ずオーナーからご連絡させます」と言ってその場は引き取ってもらったということでした。
 その話を聞いて、初めはどうしたものかと悩みました。大手企業とは違い、スモールビジネスは地域に根付いて商売をしています。たった1人のネガティブなSNSの発信、誹謗中傷がお店の命取りになりかねません。私の対応によっては、最悪の事態に陥るのではないかという恐れがありました。
 しかし、お客さまだからといって好き勝手をしていい理由はありませんし、ルールを守れない方は、お店にとってはお客さまでもありません。何より、大事なスタッフを傷つけ、これまで通い続けてくださったリピート顧客に不快感を与えるわけにはいきません。
 私は、「先ほどはご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」と電話口でまずは謝り、相手が感情的にならないよう言葉を選びながらも、個別のルール変更には対応しかねることをていねいに、時間をかけて話しました。すると、しばらくして相手のほうから「もういいよ」と。幸いにも、そのクレームが長期化することはありませんでした。

スタッフと大切なお客さまを守るために

 もちろん、お店をもっと良くするためにお客さまからいただくご意見はしっかり聞き、改善できるところは改善しなくてはいけませんが、意見とクレームはまったく異なります。
 クレーマーはどんなお店にも来るものですが、オーナー自身の判断でお客さまとして受け入れてしまい、結果的に営業を妨害されたり、従業員が精神的に追い詰められたりしたら、それこそ経営者として失格です。
 そもそもお店というのは、こちらがお客さまと真摯に向き合い、お客さまもまた、店と真摯に向き合ってこそ、共存していけるものです。
 売上も大事ですが、そうしたお客さまのことを思い、理不尽な要求をする人が来店した際は、毅然とした態度で断ることが大切です。また、断るためのルール整備も必要です。
 たとえば、「無断キャンセルは全額お支払い」など、予め提示しておくことで、論理的に反論することが可能になります。
 それが必ず、お店を愛して通ってくださるお客さまを守ることにつながるはずです。

【著者プロフィール】
日野原大輔(ひのはら・だいすけ)
ジム経営者。スモールビジネス専門集客コンサルタント。
1976年、福井県出身。サラリーマンの養父、専業主婦の養母に育てられる。活発な幼少期を過ごし、小学生時代は生徒会役員、サッカー部の副キャプテンを務める。中学、高校時代、野球部の活動に励む。千葉商科大学に進学し、演劇部の活動に励む。卒業後も演劇を続け、映画(藤原竜也の映画)に出演。当時先輩に「役者で大成したかったら肉体を鍛えろ」と言われ、スポーツクラブでアルバイトを始める。すると、売れっ子のパーソナルトレーナーとなり、個人売上は平均月80万円以上、営業成績は120店舗中で全国3位内を8年キープ、店舗売上No.1を8年キープした。26歳のとき、役者よりもトレーナーとして一流になる道を選択する。2009年、独立し「加圧スタジオLib」を開設。「お客さまを喜ばせる日本一のスペシャリストになりたい」という理由で、20種の資格を取得。2019年、東京都台東区にヨガスタジオMAKOTOを開設。2021年、同区に「ピラティススタジオFeel Body」を開設。また、ジム運営をする中で編み出した「ボンディング接客術」を軸に、パーソナルトレーナーやフィトネスインストラクターそしてスモールビジネスオーナーに向けた経営セミナーを実施している。人生のミッション「Life is beautiful 出会った人々の人生を少しでも美しくする」を基に「お客さまと一緒に感動する人材」を一人でも多くすることを目標に活動をしている。

いかがでしたか?
 
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