2022年1月の記事一覧
毎日読書メモ(233)『マイ・ファースト・リチ』上野リチのデザイン
関西在住の友達が、京都国立近代美術館に上野リチ展を見に行っていて、初めて名前を知った、デザイナー、上野リチ・リックス。1893年にウィーンで生まれ、32歳の時にウィーンに留学していた建築家上野伊三郎と結婚し、京都に移住、1967年に74歳で亡くなるまで京都に住んでいたとのこと。全然知らんかった!
最近は美術展の図録は、美術館で刊行するのでなく、出版社から一般書として刊行されることが多く、本屋やネッ
毎日読書メモ(232)『ぬいぐるみさんとの暮らし方』(グレン・ネイプ、新井素子、土屋裕)
天下の奇書、グレン・ネイプ『ぬいぐるみさんとの暮らし方』(新井素子・土屋裕共訳、新潮社)を久しぶりに出してきて読んでみた。訳者が偶然手に入れた原書"The Care and Feeding of Stuffed Animals"は、版権を得て翻訳作業に取り掛かった時点で既に入手不可能となっていて、訳者も出版社もボロボロになった本のコピーを取って、それで作業していたという。作中で言及のある、STUF
もっとみる毎日読書メモ(231)『たゆたえども沈まず』(原田マハ)
父の本棚に、原田マハの本が沢山あったので、未読のものをぼちぼち読もうかな、と思っている。まずは『たゆたえども沈まず』(幻冬舎、現在は幻冬舎文庫)を読んでみた。フィンセント・ファン・ゴッホ、弟のテオドルス・ファン・ゴッホ、日本人美術商林忠正、林の仕事を手伝う加納重吉(シゲ・カノウ)、4人の物語。そして嗚呼、『リーチ先生』(集英社文庫)の亀乃介同様、加納重吉もまた、架空の人物なんだけれど、物語の中心に
もっとみる毎日読書メモ(230)『東大の教室で『赤毛のアン』を読む―英文学を遊ぶ9章』(山本史郎)
少女小説関連の読書記録を掘り起こす。
村岡花子訳『赤毛のアン』で育ってきた身には、村岡が意識的に削って訳した「マリラの告白」の内容をこの本で知って、本当に衝撃的でした。
山本史郎『東大の教室で『赤毛のアン』を読む―英文学を遊ぶ9章』はその後新版が出ていて、現在は『東大の教室で『赤毛のアン』を読む 増補版: 英文学を遊ぶ9章+授業のあとのオマケつき』(東京大学出版会)で読めるようです。
タイトルか
毎日読書メモ(217)タータンチェック
読書記録を遡っていて、奥田実紀『タータンチェックの文化史』(白水社)の短い感想文が出ていたので、それを紹介すると同時に、もう1冊タータンの本読んだな、という備忘として。
代官山蔦屋書店の文化史コーナーで見かけてすごく気になって、でも帰って図書館で借りてしまった(汗)。作者の、タータンチェックへの愛が強すぎて、専門書色は薄れてしまうが、色々な側面からタータンチェックのなりたちを追い、読み手がみんな
毎日読書メモ(228)『パンダ銭湯』(tupera tupera)
ちょっと探している絵本があって、児童書の品揃えの充実した本屋に行った。探していた本はシュリンクパックされていて、中身を見ることが出来なくてちょっと残念。また別の本屋も当たってみよう、と思い、所期の目的は果たせなかったが、平積みされていたtupera tuperaの『パンダ銭湯』(絵本館)に心を鷲掴みされる。2013年に刊行された本らしいが、普段あんまり絵本の売り場とか行かないので、全然知らなかった
もっとみる毎日読書メモ(227)煽情小説! ルイザ・メイ・オルコット『仮面の陰に あるいは女の力』
ルイザ・メイ・オルコットといえば、少女小説『若草物語』の著者として有名なアメリカの女性作家である。約1か月前に読んだ、斎藤美奈子『挑発する少女小説』(河出新書)(感想ここ)の中でも取り上げられていて、1868年に発表された『若草物語』こそが少女小説・家庭小説の嚆矢であり、南北戦争で疲弊したアメリカ社会をいやす平和な家庭の情景を描く物語でありながら、男の子になりたかった次女ジョーが主役の、ちょっと不
もっとみる毎日読書メモ(226)『漫画サピエンス全史 人類の誕生編』
ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』(上下、柴田裕之訳、河出書房新社)は読んでいないのだが、たまたま、『漫画 サピエンス全史 人類の誕生編』(ユヴァル・ノア・ハラリ著、 ダヴィッド・ヴァンデルムーレン著、 ダニエル・カザナヴ著、安原和見訳、河出書房新社)を手に取る機会があったので一気読み。A4サイズ246ページの大著だが、当然、テキストとは扱える情報量が違い、『サピエンス全史』上巻に収められた
もっとみる毎日読書メモ(224)『舟を編む』(三浦しをん)
三浦しをんの職業小説が好きだ。職業、と呼ぶにはちょっと微妙な『仏果を得ず』とか『神去なあなあ日常』とか、会社員小説の極みのような『星間商事株式会社社史編纂室』とか、『愛なき世界』も職業を極めている物語だ。
その中でも、本屋大賞をとった『舟を編む』(光文社、のち光文社文庫)は特に、プロフェッショナルの何たるかを教えてくれる。最後は勿論大泣き。
本屋大賞受賞直前に図書館に予約を入れ、それからでも随分