マガジンのカバー画像

好きな詩 とか(2022年)

75
運営しているクリエイター

#詩

方解と花

核には雨が降っている
聖なるものの及ばない底で
これは会心の雨になるだろうからと
きみは目を瞑った
——星が燃えている

春、淡々と孵化してゆく光子が
みずうみの上で踊っている
透明なものは存在しない
その器官を指でひろげると
卑猥な音がするから——星が燃えている
雨粒がたがいに反感する頃
手の皺にひそむ祈りは呪いになって

見るものすべてがさらさらになるように
こころを削っている
鍵盤はころころ

もっとみる
ぽつりぽつりと

ぽつりぽつりと

ぽつりぽつりとしか進まない
すっ飛ばすことなんてしない

だけど
ちゃんと

ぽつり ぽつり と 進んでる

こんなにしあわせでいいのかな

こんなにしあわせでいいのかな

あなたの

しあわせを願う時

世界はまぁるくなって

やさしくなるね

こんなに

しあわせでいいのかなって

思うほどに
 

どんなに小さなコミュニケーションも、その目的は、目の前の人をしあわせにすることなんだな。

そう感じた時。

またひとつ、わたしの中で張り詰めついた力が、ふぅと息を吐き、消えていきました。

こうして、「わたしが、わたしが。」という苦しみが少しずつ癒えていくのですね。

もっとみる

しばらくの布帛

川底を手繰ってブロードは
うみだされている
わからない指はほどけなければならない
しぶきをあげた星のひとつを拾いあげ
線が失せてゆく
線が失せてゆく

とろとろの残酷が内ぶたを回し
歯ぐきの薄桃色はときめいている
春が黄身をわってまわる頃に
暈を纏わってなめらかになりたい
印象をくゆる累々は花びらをふるい
その円錐をかすかに均すために
ふいごからは気色のない谺が届けられる
およそ同じ顔をした牛たち

もっとみる
気付かれない

気付かれない

鮮やかな輝きを纏い
気ままな美しさと共に
この世の果てでさえも
いとも容易く飛び越えそうな

そんな姿

気付かれないなら
その存在は
果たして意義を持つのか
自己満足の権化として

何一つ

三次元世界に対する
証明を持たず
パスポートを投棄し
孤独に朽ちるのか

よしんば

気付かれたとしても
どれだけの者が
それを当たり前に
ありのまま祝福できようか

願わくば

私は気付いていたい
私はそ

もっとみる
こんな眼で世界を見ているから嫌な気持ちを感じてしまう

こんな眼で世界を見ているから嫌な気持ちを感じてしまう

 こんな眼で 見ているから

 こんな眼を しているから

 受ける感情は 受けるもの

 すべて すべて すべてが

 嫌な気持ちを感じてしまう

 こんな眼を していたら

 こんな眼を していたら

 見えるもの すべて が

 嫌な感情を与えてしまう

 落ちこんだ 眼をして

 落ちこんだ 眼で見て

 世界は すべて 暗い

 世界は すべて 嫌な

 感情を 受けてしまう

 落ちて

もっとみる
望郷

望郷

森の景色は
ここにはない

森から街に下った
小さな私は
楽しい気持ちで
歩いてる

光る電気信号
たくさんの自動車
流れる人と
高い建物の群れ
時間は早く流れる

森にはない景色
街は楽しい
いろんな魅力に
あふれてる

いろんな夢に
あふれてる
人はここで夢を叶える
私も夢を叶えたい

夢を描いて
ふと歩いている道
踏みしめた
一枚の落ち葉

ふと我に戻った
気がして
足元を見つめれば
豊かな

もっとみる

自惚れガールになりたいわ

ダイエットの神様にそっぽむかれてわたし、死にそうな顔してミルクティーを飲む。女の子はあざとさの鬼ごっこをする。並べられた可哀想という言葉、蔑んだ目線、おしまいのない見定め合い。わたしは仕方なく愛しさの亡骸を抱く。
夜になるといらっしゃいませの温度がだだ下がりして、こすった目で視界は滲む。対峙したエクセルのセルは地獄に見えて、意思に反する時計は悪魔と化す。店の隅で数時間もあの子は、スマホとにらめっこ

もっとみる
詩の生命

詩の生命

詩に宿る生命とは
現世を超える永遠か
否単なる流行りか
我儘な時代の要請か
残された想いの形見が
引き継がれるとしても
それは形を変えるだろう
そうして生きていく程に
新たな息吹が吹き込まれ
褪せることのない
響きを纏うのだ

たとえば現代の栄光を
徒花と揶揄すべきか
過去と未来を繋ぐべきか
つまるところ
俺には正しさなんて分からない
故に凡ゆる想いは人任せ
俺が拾い上げた詩を愛する
そんな奴もい

もっとみる

ここに惜しみない沈黙を捧げよ

ぼくは予感した——みんな光に由来していること
まじりけのない薄暮
揉まれた氷 償いようのなさで
かたちを失った 森はあかるくそしてまた、くらい

新芽は甦るもの 雨のいちずさ
ふるえる手は赤土をわかちあい
見るもののない 神々しい麦のつやつやに
したたる稲妻 礼讃の
体言、そのあまりにつよい静止……

無垢へ ふくらみつつある耳朶
野の顔、——どうやって弔おう——そちらから邂逅する
濡れた野木瓜の

もっとみる
【詩】あるとき言葉は

【詩】あるとき言葉は

あるとき言葉は
とても無力でたよりなく
表現したいものに追いつかない

あるとき言葉は
誤謬を生み
いさかいの種となっていく

けれども
あるとき言葉は
あなたを深く癒し
こころに寄り添うものとなる

あるとき言葉は
あなたを励まし
明日を歩む活力となる

言葉は道具だから
その使い方によって
力を持つこともあれば
無力になることもある

言葉は人を
生かしも殺しもする

わたしは今日
言葉にどん

もっとみる
飽き性

飽き性

好奇心は旺盛です
誰とも比べていないけど
そういう事にしておこう

旅を愛するボヘミアン
最小限の生活圏
そこを無限としておこう

爪弾く私の天性に
光の粒子を垣間見て
至福の至りで読み解こう

結論私は飽き性です
ポポイと吐息で吹き消して
止まらぬ理由としておこう

「1カウント」【詩】

もし
ここから
今すぐに
消えてしまえたなら

名前も
国籍も
血、肉、骨
においさえ

この世に存在したという
あらゆる
痕跡を
すべて消し去り

スマホ操作のごとく
ワンクリックで
簡単に
なかったことに
してしまえたら

宇宙にも行ける
この時代
それぐらいのこと
できてしまうんじゃないか?

ふとそんな幻想を
抱いてみるけど

曲がりなりに生きてきた
経験が
不可能であることを
私にわから

もっとみる
夢の中

夢の中

夢の中
ここはどこ?

あの日の誓いをかき分けて
躍り出た現在地

しみったれていた訳ではない
折り合いの中で苦悶していたのではない

ドラムスのブレイクが
すべてを変える前に

準備をしてきたか
希望を持続させてきたか

折れたままの心は
その形態に誇りを抱く

純粋主義者はわめく
理想の裾を引っ張って

しかしここはどこだろう
相変わらず似たような問題が
首根っこに襲いかかる

いやそうじゃな

もっとみる