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2024年1月の記事一覧

人形

おさないわたしは
人形だった
そうとはしらずに
とじこめられた
自我のなかで
わたしは
ひとり
自由だった
うちがわの
宇宙に
与えられた
色彩があって
それだけが
すべてだった
なにも
見えなかったのか
見なかったのか
なぜ叱られるのか
それは
わたしが
人形だからで
わたしが
わたしだからだと
かんちがいして
それで
わたしは
ことあるごとに
みずから
心を閉ざしてしまう
宇宙がちいさくなって

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あなたを想う星

あなたを想う星
夜空を流れて
静かに涙した

どうして心は
あなたに伝わるの
どうしてぬくもりは
わたしをあたためるの
どうして夜空は広いのに
同じ星を見ているの

あなたが想う星
夜の隅で光って
優しく笑った

2017.12.20

希望

望みは
いらなかった

望むことこそ
絶望だったから
わたしはやめたのだった

望むことは
傲慢なことだと
知っていたのに

望むとき
わたしは
わたしを
手放しているのだ

望むものを掴むとき
わたしは
わたしを
忘れているのだ

もういい
望まなくていい
そう思うと
わたしが
なにものだったか

思い出せる
そんな気がするのだ

2024.01.27

残り火

なにをはなしたかしら
思い出しながら
電車は
わたしを運ぶ
あかりの消えた
人のいない部屋へ

雪が降るなか
暖色のひかりの下
六人は
中原中也を追いかけた
周りでは
カフェの客たちが
好きなように
喋り
笑い
そんな声に
負けじと
時に声を張り

ひとりだと
別の銀河ほど
遠かった彼の言葉は
みんなの熱をくぐると
一歩近づいたような気がした

視覚的言語なのに
言葉から映像が浮かばなかった
彼の

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中学生のころ
誰と話しても
面白くなくて
休み時間に
十円玉たくさん持って
公衆電話から
でたらめにかけてたって

社会人になって
旅先で出会った女の人と
日本に帰って食事をしたとき
宇宙の話を熱く語って
つまらないって
言われたって

ああ
わたし、そのとき
そこにいたら
あなたを好きになってた

窓から飛ぶことばかり
鏡に沈むことばかり
考えていたわたしは
大人になっても
なんにでもなれると

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symphony

見える以上のものが
聞こえる以上のものが
この宇宙にはある
それが見えたら
聞こえたら
あなたは
あなたの宇宙の
旋律となる

とおく
とおくまで
山を越えて
雲の向こうまで
その旋律は
力強く
澱みなく

重なり合う音が
聴こえる

あなたにだけ見える空は
あなたにしか見えないまま
あなたにだけ聞こえる音は
あなたにしか聞こえないまま

でもどこかとおくで
誰かが、じっと
目を凝らしている
耳を

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笑えるなら

傷つけるつもりもなく
傷つけてしまうことが
あってもいいのではないか
大切なのは
誠意や思いやりで
その行いに捉われることではない
責めるよりも
許すこと
誠意や思いやりのない人は
許す必要はないけれど

価値観が違うから
生きてきた背景が違うから
人は人を傷つけてしまうけれど
ごめんねと言えるなら
一緒に笑えるなら
互いに生きる喜びを
分かち合えるなら
わたしたちは
この世界で
生きていける

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未熟

この人、未熟だな
と感じたとき
その未熟さを
否定したくなるのは
なんでだろう
未熟な人は
他人を否定したり
責めたりして
自分が正しいと
思い込んでいて
むしろ、他人を責めることで
己の正しさを証明しようとして
その未熟さを
否定することは
相手と同じことを
していることになるのに
未熟な人は
ただそれだけで
その人生を歩いていく
それを正したいと思うのは
わたしのエゴじゃないか
わたしが正しい

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足跡

不幸を他人のせいにする人ほど
他人を不幸にしたがる
自力で不幸を抜け出す人は
己の不幸を誰かのせいにはしない

どんな逆風の中にあっても
誰のせいにもせずに
ただひとり黙々と
努力を積み上げる
その姿を
見つめる人でありたい
目に映らなくとも

誰もが生きていて
競い合っている
認められたい
知ってほしいと
その争いにのらないで
あなたはひとり歩をすすめる

ひとりのあなたを
大勢に属する誰かが疑

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神を黙殺する国で

自分が正しいと信じる者は
他人を傷つける
神を黙殺する国で
生きる
生きているのか

わからないのか

神はあなたにとって
都合よくはない
あなたにとって
都合のいいものは
たくさんあって
あなたは飛びつき
埋もれている

そして、
窒息しそうなのに気づかないで
涙すら忘れている

あなたを生かすものはあなたではない
神を感じないなら
信じるな

息をしたいなら
生きろ

2024.01.15

失われたものは

ここにはないのだから
それがないせかいを
目に映すしかない
スカイツリーの佇む空を
見て思った

このせかいにないものを
このせかいの中から
見つけ出すことが
若いかれらに
できるだろうか

タイムカプセルを
埋めることしかできない
わたしたちは
かつて埋めたカプセルに
なにを入れたか
忘れてしまった

遠く引っ越していく友達との
なにか大切なものだったような気がする

いつか、届け
未来は分かれ

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生きたい
美しくなく
上手くもなく
痛くても
苦しくても
この世界を
捉えることが
わたしの一歩だ

パズルは
片方を合わせれば
片方が食い違う
何かに合わせれば
わたしが欠け落ちる
わたしの目で
足で頭で
捉えた世界に
踏み入れること

言葉は
文字に頼れば
記憶から溢れ
話すことに頼れば
哀しさが打ち寄せ
頭に閉じ込めれば
足りないピースで完成する

わたしとは何か
揺らぐわたしの奥で
揺らぐ

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愛してくれる人を探している、ずっと
わたしを理解できる人がもしいるなら
わたしはその人を理解する
わたしを愛せる人がもしいるなら
わたしはその人を愛する
理解とは何かと聞かれたら
生かすことだと答える
道を与えることだと答える
愛とは何かと聞かれたら
諦めないことだと答える
信じ抜くことだと答える
理解していると言われても
愛していると言われても
決して信じないけれど
そういうものだと思う
巡り合

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正義

ものの見方なんて
角度を変えれば
180度ちがうわけで
かつての優れた名作も
現代ならば
ゴシップ記事になりうるわけで

多数が正義だと思っている
そんな世の中では
わたしたちは
正義に怯えながら
生きなければならない
わたしたちは
正義に媚びながら
生きなければならない

正義とは
わたしのなかに
あなたのなかに
たったひとつ
輝くものではないのか
声高に
叫べば叫ぶほど
聞こえなくなっていくけ

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