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福祉の仕事

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2024年2月の記事一覧

変わらない日常と複雑な思い

変わらない日常と複雑な思い

リーダーが退職を発表し、リーダーと話した後
表面的には何も変わらない日常が続いている。

 
リーダーは相変わらず毎朝一番に来て黙々と仕事しているし
私達も毎朝同じような時間に来て、仕事をしている。

 
誰ももう退職について表立っては話題にしなかった。
みんなの心の内は分からない。
割り切ったのか吹っ切ったのか諦めたのか分からない。

ただ、みんなは大人だった。

 
前の職場では誰かが退職を発

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北風小僧の寒太郎

北風小僧の寒太郎

その日は朝から晴れていたが、風が強く、冷たかった。

 
「風で飛ばされちゃうよ。」

利用者がギュッと私に抱きつく。
私はかわいいなぁと思いながら「飛ばされなくてよかった。」と抱きしめ返す。

 
「真咲さん、今日は風やばいぜ。」

別の利用者が窓を見ながら言う。

 
「こりゃ北風小僧の寒太郎の仕業だね。」

私がそう言うと

「寒太郎か。フフフフーン♪」

と、鼻歌で利用者が歌い出した。

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選択に迷う

選択に迷う

先日、新施設長から3月に県外日帰り旅行に行くと発表があった。
なんと無料で旅行に招待されたという。
 
 
飲食代やお土産代は自費だが
バス代も行楽地の代金も無料だという。

 
旅行日を聞いて私は驚いた。

その日は私が去年から決めていたとある場所に母親と行こうとしていた日だからだ。もう日付指定チケットを買ってしまった。

 
何故、よりによってその日なのだ。

創立記念パーティーや土日の販売、

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「やりたいことはなんですか?」

「やりたいことはなんですか?」

「書類は一週間以内にあげてください。」

先日、上から言われたが
それがなかなかに難しい。

 
なんせ、それを言われた日がリーダーの退職を言い渡された日でもあるのだ。

上には話していないが
あの日から私は食欲が下がり、熟睡もできず、泣かない日はないくらいに心身ズタボロだ。
毎日定時まで仕事をしたらもう帰りたい。

 
更に、だ。
私の職場は残業しないで帰るようやんわり言われる職場だ。サービス残

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てるてる坊主に願いをかけて

てるてる坊主に願いをかけて

2月に入り、20度前後の春のようなあたたかい日が続き
このまま春になるかと思いきや
気温が下がり、梅雨のような雨の日が続いている。

 
ポスティング作業をやる我が施設にとって
雨は死活問題である。

私「明日、明後日は雨予報なんですよね。来週は月曜日が雨ですが、火曜日、水曜日が大丈夫そうです。」

 
ポスティング作業は大抵が、三日以内に配るよう依頼されている。
月~水曜日以内に配り、別のチラシ

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2024年の健康診断

2024年の健康診断

前の職場は毎年決まった月に健診車が来て、利用者と同じ日に職員も受けたが
今の職場は毎年どこかの月に健康診断があり、職員は自家用車で各自指定病院に行き、終わり次第出勤となる。職員は全員別日に受ける。

 
利用者は嘱託医が来た時に一斉に健康診断を受けられるが
ほとんどの方が受けない。
採血も尿検査も受けられないからだ。

大抵の方が通院先で採血や尿検査をしているし
採血も尿検査もない健康診断はあまり

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私の夢ってなんだろう

私の夢ってなんだろう

私の夢ってなんだろう。

リーダーの退職が分かった日、私はそんな思いに駆られた。
私の夢ってなんだろう。

 
かつて私は27か28歳の頃に三年付き合った彼氏と結婚して子どもを産んで、跡を継ぎたかった。
あれは夢というより、使命に近かった。

27歳になる手前に三年以上付き合った彼氏と別れ
私はもう二度と、子どもの頃からの夢が叶うことはないのだと
未来を失って絶望した。

 
仕事が好きだった。

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あなたの名前をあと何度呼べるだろう

あなたの名前をあと何度呼べるだろう

リーダーの退職を知った土曜日。

土日と何をしても涙が止まらず、月曜日に仕事に行くのが怖かった。
リーダーに会うのが怖かった。
休みの日は別れの歌ばかり聴いて過ごした。
ご飯はろくに食べられない。夜は眠れない。

もう知らなかった頃には戻れない。

あんなにリーダーが好きで、会うのが楽しみだったのに、今一番会いたくない人になってしまった。

 
仕事に行く途中も涙が出た。
朝、既に仕事をしていたリ

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リーダーの夢が叶う頃

リーダーの夢が叶う頃

それは、三週連続の行事を終えた次の日だった。

その日は週6勤務の最終日で
会議の日だった。
職員みんなが集まる日だ。

朝から晴れているが、冬らしい寒さの日だった。

 
会議では最後に来年度からの予定の話になり
上が理想的な話をして
そんな風に事が運べばそりゃ理想だよなぁと思い
話す気が失せ
多分他の人もそうだったのか
みんな下を向き、余計なことは何も言わなかった。
 
 
上が決めたことは絶

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利用者の夢を叶えた日 その②

利用者の夢を叶えた日 その②

職場の創立記念パーティー当日。
晴れ間があるものの曇りで、気温は朝から低い。

 
当日は緊張でろくに眠れず
朝も軽くしか食べられなかった。

 
朝、出勤途中で前施設長からLINEが届いた。

「おはようございます。
連日準備いろいろありがとうございました。
今日はぶっつけ本番のことが多く、皆さん不安も多いかと思いますが、職員の皆さんも1日楽しんでいただければと思います。
みんなのドレスやタキシ

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利用者の夢を叶えた日 その①

利用者の夢を叶えた日 その①

職場の創立記念日は冬である。

創立記念日、例年は施設にゲストを呼び、ショーをしたり
レクレーションをするらしいが
今年は節目の年に当たるということもあり
特別なことをやる予定だった。

 
利用者の一人の夢が「痩せてきれいになってドレスを着ること」なのだが
今年の創立記念式典のメインイベントがファッションショーであり、私が司会と発表された時には目を見開いた。

確かに前の職場でも、福祉のイベント

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バレンタインデー次の日

バレンタインデー次の日

リーダーはご家族が体調不良の関係で
周りに移さないように事務室で書類仕事や一人で外で行う仕事をする日々が続いていた。

更にバレンタインデーとその前の日は子どもの面倒を見るためと休みをとった。
バレンタインデー当日にリーダーに会えないのは寂しい。

 
2月15日、私が出勤すると
翌日の金曜日、ボランティアの音楽の先生が来られず
音楽教室の予定が中止になったと上から言われた。

 
それはたびたび

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今年のバレンタインデー

今年のバレンタインデー

かつて私はバレンタインデーに燃えていた。

毎年お菓子を手作りしたし
手作りお菓子か市販を友達や好きな人や同僚に渡したり
逆チョコやら友チョコやらももらった。
父親が職場でもらってきたチョコを母親と山分けしたりした。

 
今年は何を作ろうかなぁと悩み
ラッピングはどうしようかなぁと悩んだものだ。

 
かつて好きな人にチョコを渡すのがバレンタインデーだったが
時代と共に
友チョコや逆チョコの文化

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家族仲がいい利用者

家族仲がいい利用者

毎朝母親と歩いて登所している利用者がいる。
雨の日も風の日も歩いて登所している。

 
ある日、遠方に住むご家族が体調不良とのことで、母親はそちらに行かねばならず、利用者が送迎車を数日利用したいと話があった。
私はその利用者を迎えに行くことになった。

その利用者の家は細道で対向車が来たらバックするしかない。
送迎の前日、仕事終わりに練習でその道を通ったが
やはり改めて通っても狭かった。

 

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