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変わらない日常と複雑な思い

リーダーが退職を発表し、リーダーと話した後
表面的には何も変わらない日常が続いている。

 
リーダーは相変わらず毎朝一番に来て黙々と仕事しているし
私達も毎朝同じような時間に来て、仕事をしている。

 
誰ももう退職について表立っては話題にしなかった。
みんなの心の内は分からない。
割り切ったのか吹っ切ったのか諦めたのか分からない。

ただ、みんなは大人だった。

 
前の職場では誰かが退職を発表したら
動揺したり、振り回されたり、止めたり、どうしたらいいんだろうと頭を悩ませたが
今の職場のみんなは極めて大人だった。

 
あの退職発表の日に立ち会ってさえいなければ
退職はまるで作り話のような夢のような気にさえなってくる。

それほどに、表面的にはリーダーも周りも変わらないのだ。

 
それが悲しかった。
リーダーはもう本当に未練はなく、次を向いていて
割り切って責任持って仕事をこなしているのが伝わるようで。

仕事はまだ一緒にしているけど
心はここにないかのようで悲しかった。
心が読めなくて寂しかった。

 
ただ、 表面的には変わらない日常のおかげで
私も職場では泣かなくなったし
夜眠れなかったり、食欲が落ちることはあったが
悪化はしていない。

ただ相変わらず、明るい歌は聴けなくて
鬼束ちひろさんやCoccoの曲ばかりを繰り返し聴いては密かに泣いた。

 
あの日が夢か嘘ならどれだけ楽だっただろうか。
何もなかったことにはできない。

  
リーダーは相変わらず優しくて
重い荷物をサッと運んでくれたり
仕事の相談をすると力になってくれたり
そんなことが毎日何回も何回もあった。

嬉しくて、でも切ない。

この優しさは同僚だからだ。
同僚ではなくなったら消えてなくなってしまうほどの儚さだ。

今は隣にいるけど
もうすぐ二度と会えなくなる。

 
私達を繋ぐのは仕事だけだから。

 
リーダーは来年度の仕事の計画も進めたり
新商品の試作品を作ったりもしていた。

まるで来年度も普通にいるかのように。

 
他の同僚と私も新商品の話に燃えた。
来年度からの話にも燃えた。
新商品試作は今いくつも作ったり、考えている。

未来の話をするのは楽しい。
同僚とするのは楽しい。

だって同僚は春になってもいなくならないから。

 
 
例えば何らかの奇跡が起きてリーダーが留まることになっても
もう前と同じ気持ちではいられない。

リーダーが退職後、何らかで再会しても
きっともう前と同じ気持ちではいられない。

 
在籍と退職とはそれくらい大きな差がある。

 
元同僚とは、元彼のようなものだ。

嫌いになったわけではないし、むしろ好きなままだし
特別なことは確かだけど
前と同じ気持ちには決して戻れない。
退職理由が定年退職や病気等ならともかく、自発的に他に移る場合は
前と同じ気持ちではいられない。

私やここを捨てたんだ、と思えてしまう。
冷めてしまう。

 
悲しいな。寂しい。
真っ直ぐにリーダーが好きだったのに
今は薄らと冷めたものも混ざってしまって悲しい。

この方が別れは楽だろうけど
ひたむきに好きでいられないのは寂しい。

 
  
きっと、利用者や保護者や関係者が退職を知った時はみんなが動揺するだろう。
今はまだ利用者らが知らないから保たれている仮初めの平和なだけだ。

あと数日間は表面的には変わらないままの日常が送れるはずだ。
あと数日間は。

 
きっと本当に辛いのは最後の出勤日の後だろう。
今はまだ会えているから実感が分からないだけだ。

リーダーの最後の出勤日の後
私はどうなってしまうだろう。
  
それとも案外割り切っているのだろうか。


 







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