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2022年5月の記事一覧

人形造形師ドーラ

限りなく人に近い
人形を作るドーラ
無限の魔力でも
それは人に為れず
世界を壊そうとした
完璧な文字数で
ビルの屋上へ閉じ込め
彼女を封印した
自分の都合を伏せても
罪は待ち続け一時眠る
生まれたての光を
もう一度浴びようと

葬送

許せない事から
目を逸らして
育った子供達は
あの日の様に
もう歌えやしない
純粋な瞳で
他人を殺し続ける
己の命が
時を止める日まで

青漆の激情

妻の調査を
依頼する男の
仕事に掛かる
フィリップマーロウ
傍から見れば
幸せな家庭の
闇を探る事で
彼は禁忌を侵す
見てはいけない
心の深淵を覗き
それでも彼は
真実を探り出す
全てを理解して
激情した男が放った
銃弾が妻の體を
貫いてその胸に
一厘の花が咲き乱れ
男が自らの頭を
笑いながら
撃ち抜いても

灰色のペンキ塗り

年中変わらず
オーバーオールを
あの人は着てた
消したブラウン管から
宇宙サルビアが
話し掛けても
壁に灰色のペンキを
あの人は塗り続ける
気違いだと誰かが
馬鹿にして笑っても
気にする事はせず
やがて全て塗り終えた時
世界は灰色を失くした
永遠の常闇の中に

無限時計のシキ

何時だって
永遠など無いと
知りながら人は
それを求め彷徨う
無駄に過ごした時が
僅かだと知り
絶望して自殺する
人達を見続けて
それでもシキは抗う
無限時計の計画に

ヒーレースプライト Mk.4

坂の多い街を
走り抜けるヒーレー
夏にはまだ早い
季節の変わり目を
縫う様に駆け抜けて
消えてしまった
伝えたい言葉を
放ち切れず
私だけ過去に取り零して

キャロット

私は私にしか
為れないと
貴方は静かに
囁いて
その横顔が
涙で濡れた
キャロット
君の優しさは
僕が分かってる
如何か嘆かないで
今日は
二人切りで
過ごそう
心が解けて
しまってもさ

篝と言う名の
殺し屋が居た
それは曖昧な過去
皆が貧しく
何かに飢えていた頃
私腹を肥やし
贅沢に溺れる者も
確かに存在した
彼は静かに息を吐き
不平等に訪れる死の
幕を下ろす
漆黒の海で
揺らめく篝火のよに

タンゴと黒猫

ロザリーのドレスで
私は着飾り
黒猫とタンゴを
踏もうとするけど
彼はそれを拒んで
さよならを告げた
貴方は純粋な儘でいてと
優しい言葉を囁いて
とても悲しく為った私は
涙を流す真似をする
安い映画の一幕を真似て

モチーフ・レプリカ

中性の雨が
降り続く街を
歩くレプリカハンター
禁製品の装備で
體を固めて
レプリカを探し壊す
それが仕事だから
限り無く人に近く
決して人に為れない
彼らは擬態しながら
その牙を研ぐ
生まれた理由を探して
人とは分かり合えず
闇の中で火花を散らす
借り物のモチーフだとしても

歯車の花束

貴方は私に
歯車の花束を渡し
さよならを告げず
去ってしまった
それは枯れる事なく
私の部屋で
燦々と咲き続け
孤独な私を癒し続ける
全て知っている様に

ストンプ・キャンディ

ポケットの中に
キャンディを隠す
ジョーカーは笑わない
哀しみは何時も
巷に溢れ零れて
誰かを今日も
狂わせてしまうから
人を止めた者を
ジョーカーは消し去る
止んでいる者は
自分だけで十分だからと

冷たい手のイリス

彼女は
凍れる異国から
この国へ来た
何処か遠くを
眺める瞳をして
貴方の冷たい手を
暖める夢を見て
臆病な僕は眠りたい
恋心が漏れないよに

楽園の向こうへ

何処かに為らず者の
楽園があると
信じて疑わない
純粋な不良少年
青いGS750で
走れば何もかも
置き去りに出来るけど
何度掴もうとしても
掌に乗るだけで
故郷の初雪みたいに
それは消えてしまった