sakai_creativejourney

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記事一覧

すべての現代アートは『ソーシャリー』なのかもしれない

横浜で開催中の第8回横浜トリエンナーレを鑑賞。日本における都市型芸術祭の先駆的な存在であり主会場となって来た横浜美術館の3年ぶりのリニューアルオープン記念でもあ…

企業ブランディング再考①

「企業ブランディング」について、改めて考えさせられています。 きっかけは昨年来、某IT企業のCI(Corporate Identity)プロジェクトに関わらせていただいたことでした。CI…

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円空は「元祖プレイフル人」?-「円空-旅して、彫って、祈って」展

大阪あべのハルカス美術館で開催中の「円空-旅して、彫って、祈って」を鑑賞した。 円空は江戸時代はじめ美濃国(現在の岐阜県)に生まれ、修行僧として旅をしながら、そ…

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君は、見たいようにしか世界を見ていない-「中平卓馬 火-氾濫」を鑑賞して

竹橋での打ち合わせが思いのほか早く終わり、時間の余裕ができたので国立近代美術館に足を運び、開催中の「中平卓馬 火-氾濫」を鑑賞した。 中平は「日本の戦後写真におけ…

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“実験”の先に“必然”は生まれる-「マティス 自由なフォルム」を鑑賞して

国立新美術館で開催中の「マティス 自由なフォルム」展を鑑賞した。昨年も東京都美術館でマティスの軌跡をたどる展覧会が開催されたが、今回はニース市(フランス)のマテ…

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もはや美術館というよりテーマパーク。「熱海MOA」を知っていますか?

先日、湯河原の梅林鑑賞のついでに立ち寄ったMOA(エムオーエー)美術館。正直なところ、さして期待もしていなかったのだが(色々な意味で)驚いた。 https://www.moaart.or

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「人新世」の時代。アーティストは動いている。私たちは、どうだ?

森美術館で開催中の「私たちのエコロジー 地球という惑星を生きるために」を鑑賞した。 開催趣旨(ステートメント)にはこう述べられている。 産業革命以降、特に20世紀…

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私たちの中に「音楽」は在る-「坂本龍一トリビュート展」を鑑賞して-

「坂本龍一トリビュート展」を鑑賞した。会場となったNTTインターコミュニケーションセンター(ICC)はメディア、テクノロジーとアートの融合を牽引して来たパイオニア的な…

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本阿弥光悦は江戸時代のアナーキスト?

東京国立博物館で開催中の「本阿弥光悦の大宇宙」を鑑賞した。 本阿弥光悦は、江戸時代初期の「数奇者(すきしゃ。芸道に執心な人物)」として紹介されている(Wikipediaよ…

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それでも文化は生きていく-富山の美術館を訪れて

昨年末、夫婦で富山に滞在した。年が明けた日、大きな災害がほんの数日前に訪れた土地を襲った。連日、被災地の状況が報道される中、旅のブログをアップすることに迷いはあ…

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映画とは、不条理への抵抗と連帯だ。-私の東京国際映画祭(TIFF)2023体験-

私たち夫婦は、どうやら「TIFFの沼」にはまってしまったようだ。一昨年、何の予備知識もなく鑑賞したいくつかの作品を通じて、決して触れることの無いであろう文化に出逢う…

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世界が妻籠宿のようだったら

過日、NHK「72時間」にも取り上げられた中山道の宿場道を2日間に渡って歩いた。 初日の朝。JR中津川駅から馬籠行のバスに乗る。車中のほとんどが外国人観光客だ。停留所を…

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みちのくアートの旅-美術館は土地の文化度を知るバロメーターとなる

3年前から、毎年夏にワーケーションで地方に短期滞在している。今年は、青森の白神山地を拠点にして、青森のいくつかの美術館を訪ねた。意外に、と言っては失礼だがいずれ…

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「抽象」について考えてみた-アーティゾン美術館「ABSTRACTION」展と宮崎駿作品を通じて

アーティゾン美術館で開催中の「ABSTRACTION-抽象絵画の覚醒と展開」を鑑賞した。同美術館に収蔵されている海外と日本の抽象絵画の豊富なコレクションを目にする良い機会と…

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「ショック・ドクトリン」「地域主権主義(ミュニシパリズム)」から学ぶ当たり前のこと

好きなTV番組のひとつ「100分de名著」が6月に扱ったのは「ショック・ドクトリン」だった。以前から何となく興味を持っていた本だが、上下巻で700頁に及ぶため尻込みをして…

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ふたつの人生を生きた人

去る6月3日、母のささやかな七回忌追善興行が浅草見番で行われた。母は、芸名を「志賀山葵(しがやまあおい)」と名乗り、日本舞踊最古の流派と言われる志賀山流の継承に…

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すべての現代アートは『ソーシャリー』なのかもしれない

すべての現代アートは『ソーシャリー』なのかもしれない

横浜で開催中の第8回横浜トリエンナーレを鑑賞。日本における都市型芸術祭の先駆的な存在であり主会場となって来た横浜美術館の3年ぶりのリニューアルオープン記念でもある。それにふさわしい気合とプライドを感じる内容となっていた。

テーマは「野草:いま、ここで生きてる」。これは、中国の小説家 魯迅が1924年から1926年にかけて執筆した詩集に由来している。辛亥革命後の激動期にあって社会が根本的には変わら

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企業ブランディング再考①

企業ブランディング再考①

「企業ブランディング」について、改めて考えさせられています。

きっかけは昨年来、某IT企業のCI(Corporate Identity)プロジェクトに関わらせていただいたことでした。CIとは「企業文化を構築し特性や独自性を統一されたイメージやデザインあるいはわかりやすいメッセージで発信し社会と共有することで存在価値を高めていく企業戦略の一つ」と定義されます(Wikipediaより)。

私は前職

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円空は「元祖プレイフル人」?-「円空-旅して、彫って、祈って」展

円空は「元祖プレイフル人」?-「円空-旅して、彫って、祈って」展

大阪あべのハルカス美術館で開催中の「円空-旅して、彫って、祈って」を鑑賞した。

円空は江戸時代はじめ美濃国(現在の岐阜県)に生まれ、修行僧として旅をしながら、その生涯で10万体!もの神仏を彫ったと伝えられている。その数もさることながら「円空仏」と呼ばれる独特の作風で日本人に愛されている。展覧会は、その円空の生涯をたどる5つの章で構成されている。

円空は修行の後、寛文11年(1671)40歳の時

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君は、見たいようにしか世界を見ていない-「中平卓馬 火-氾濫」を鑑賞して

君は、見たいようにしか世界を見ていない-「中平卓馬 火-氾濫」を鑑賞して

竹橋での打ち合わせが思いのほか早く終わり、時間の余裕ができたので国立近代美術館に足を運び、開催中の「中平卓馬 火-氾濫」を鑑賞した。

中平は「日本の戦後写真における転換期となった1960 年代末から70 年代半ばにかけて、実作と理論の両面において大きな足跡を記した写真家」(展覧会ステートメントより)。
失礼ながら、私はこの人の存在を知らなかった。知らないからこそ、新鮮な目でその作品群に接すること

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“実験”の先に“必然”は生まれる-「マティス 自由なフォルム」を鑑賞して

“実験”の先に“必然”は生まれる-「マティス 自由なフォルム」を鑑賞して

国立新美術館で開催中の「マティス 自由なフォルム」展を鑑賞した。昨年も東京都美術館でマティスの軌跡をたどる展覧会が開催されたが、今回はニース市(フランス)のマティス美術館の所蔵作品を中心に、晩年に到達した切り紙絵に焦点を当てた内容となっている。

私は、本展覧会の開催を心から楽しみにしていた。なぜ、「切り紙絵」という意外な手法に至ったのかの秘密を知りたかったからだ。

結論から言えば、切り紙絵はマ

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もはや美術館というよりテーマパーク。「熱海MOA」を知っていますか?

もはや美術館というよりテーマパーク。「熱海MOA」を知っていますか?

先日、湯河原の梅林鑑賞のついでに立ち寄ったMOA(エムオーエー)美術館。正直なところ、さして期待もしていなかったのだが(色々な意味で)驚いた。

https://www.moaart.or.jp/

実は、駐車場の空きの関係から本来の経路を逆にたどる形で鑑賞した。しかし、ここでは正規?の道筋に沿って鑑賞体験を綴ってみたい。

入館すると、いきなり長―いエスカレーター(全長200メートル)が出迎え、

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「人新世」の時代。アーティストは動いている。私たちは、どうだ?

「人新世」の時代。アーティストは動いている。私たちは、どうだ?

森美術館で開催中の「私たちのエコロジー 地球という惑星を生きるために」を鑑賞した。

開催趣旨(ステートメント)にはこう述べられている。

産業革命以降、特に20世紀後半に人類が地球に与えた影響は、それ以前の数万年単位の地質学的変化に匹敵すると言われています。この地球規模の環境危機は、諸工業先進国それぞれに特有かつ無数の事象や状況に端を発しているのではないか。本展はその問いから構想されました

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私たちの中に「音楽」は在る-「坂本龍一トリビュート展」を鑑賞して-

私たちの中に「音楽」は在る-「坂本龍一トリビュート展」を鑑賞して-

「坂本龍一トリビュート展」を鑑賞した。会場となったNTTインターコミュニケーションセンター(ICC)はメディア、テクノロジーとアートの融合を牽引して来たパイオニア的な存在。90年代のインターネット黎明期より作品へのメディア・テクノロジーの導入やメディア・アーティストとのコラボレーションを積極的に行って来た坂本の活動を回顧するにふさわしい場と言える。

本展覧会では、メディア・アートのトップランナー

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本阿弥光悦は江戸時代のアナーキスト?

本阿弥光悦は江戸時代のアナーキスト?

東京国立博物館で開催中の「本阿弥光悦の大宇宙」を鑑賞した。

本阿弥光悦は、江戸時代初期の「数奇者(すきしゃ。芸道に執心な人物)」として紹介されている(Wikipediaより)。代々続く刀剣鑑定・研磨の家業の家に生まれたが、むしろ陶芸や能楽(謡い)などに通じ、とりわけ書の分野では「寛永の3筆」と呼ばれたほどの名人だとされている。現代風に言えば「マルチ・クリエイター」ということになるだろうか。

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それでも文化は生きていく-富山の美術館を訪れて

それでも文化は生きていく-富山の美術館を訪れて

昨年末、夫婦で富山に滞在した。年が明けた日、大きな災害がほんの数日前に訪れた土地を襲った。連日、被災地の状況が報道される中、旅のブログをアップすることに迷いはあったが、そこで感じた土地に息づく「文化」という名の生命力を伝えることにも何らかの意味があるかもしれない。そのような想いでこの文を綴った。

旅の主な目的のひとつは土地の美術館巡りだった。

富山市では、富山市ガラス美術館と富山県美術館を訪ね

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映画とは、不条理への抵抗と連帯だ。-私の東京国際映画祭(TIFF)2023体験-

映画とは、不条理への抵抗と連帯だ。-私の東京国際映画祭(TIFF)2023体験-

私たち夫婦は、どうやら「TIFFの沼」にはまってしまったようだ。一昨年、何の予備知識もなく鑑賞したいくつかの作品を通じて、決して触れることの無いであろう文化に出逢う刺激に魅せられ、年々鑑賞作品は増え、今年は遂に夫婦で述べ11作品となった。

今年、私が鑑賞したのは8作品だった。(カッコ内は製作国)
「タタミ(ジョージア/アメリカ)」「マリア(イラン)」「相撲ディーディー(インド)」「異人たち(イギ

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世界が妻籠宿のようだったら

世界が妻籠宿のようだったら

過日、NHK「72時間」にも取り上げられた中山道の宿場道を2日間に渡って歩いた。
初日の朝。JR中津川駅から馬籠行のバスに乗る。車中のほとんどが外国人観光客だ。停留所を降り石畳の急坂を登ると、宿場町の面影を残しながらも整備された町並みが姿を現した。

その中心には、この地で生まれた文豪、島崎藤村の記念館もある。彼の代表作「夜明け前」の冒頭文はあまりにも有名だ。

木曽路はすべて山の中である

宿場

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みちのくアートの旅-美術館は土地の文化度を知るバロメーターとなる

みちのくアートの旅-美術館は土地の文化度を知るバロメーターとなる

3年前から、毎年夏にワーケーションで地方に短期滞在している。今年は、青森の白神山地を拠点にして、青森のいくつかの美術館を訪ねた。意外に、と言っては失礼だがいずれも大変充実した展示を観ることができた。

最初に訪れたのは十和田市現代美術館。存じ上げているアーティストのtsu-tsuさんが同美術館のサテライト会場で展示を行っていることもあって訪ねることにした。

館内に入ってまず驚かされるのが「スタン

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「抽象」について考えてみた-アーティゾン美術館「ABSTRACTION」展と宮崎駿作品を通じて

「抽象」について考えてみた-アーティゾン美術館「ABSTRACTION」展と宮崎駿作品を通じて

アーティゾン美術館で開催中の「ABSTRACTION-抽象絵画の覚醒と展開」を鑑賞した。同美術館に収蔵されている海外と日本の抽象絵画の豊富なコレクションを目にする良い機会ということに加え、ようやく公開された宮崎駿監督の最新作に抱いた印象を確かめたくなったことも同展覧会に足を運んだ理由だった。

映画「君たちはどう生きるか」が大きな論議を巻き起こしている。映画ポータルサイト「Yahoo!映画」では、

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「ショック・ドクトリン」「地域主権主義(ミュニシパリズム)」から学ぶ当たり前のこと

「ショック・ドクトリン」「地域主権主義(ミュニシパリズム)」から学ぶ当たり前のこと

好きなTV番組のひとつ「100分de名著」が6月に扱ったのは「ショック・ドクトリン」だった。以前から何となく興味を持っていた本だが、上下巻で700頁に及ぶため尻込みをしていたが、番組と並行して読むことで理解も進む良い機会と考え購入した。

これが抜群に面白かった!著者はカナダ出身のジャーナリストであり政治活動家のナオミ・クライン。「ショック・ドクトリン」とは、1970年代に経済学者ミルトン・フリー

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ふたつの人生を生きた人

ふたつの人生を生きた人

去る6月3日、母のささやかな七回忌追善興行が浅草見番で行われた。母は、芸名を「志賀山葵(しがやまあおい)」と名乗り、日本舞踊最古の流派と言われる志賀山流の継承に尽力して来た。2016年に90歳でこの世を去ったが、お弟子様達が今回の企画をしてくださり、コロナなどの影響もあったことから1年遅れでの開催となった。

当日は、おそらく50名ほどの方々が、流派の代表曲の披露、母を偲ぶ対談、そして母のライフワ

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